【農業革命】
12,000年前ごろから、自生する植物や動物を狩猟する生活から、植物と動物の生産(栽培化、家畜化)への変化が始まる。
- 11,500年前 トルコ南部、イラン西部、レヴァント地方の丘陵地帯で始まる
- 中東、中国、中央アメリカ(概ね赤道のやや北側)でほぼ同時期に発祥後、世界各地に伝来
- ほとんどの植物や動物は栽培化・家畜化が困難なため限られた地域で発祥
- 11,000年前 小麦が栽培化、ヤギが家畜化
- 10,500年前 人類が定住を始めた痕跡(中東エリコ)
- 10,000年前 えんどう豆、レンズ豆が栽培化
- 7,000年前 オリーブの木が栽培化
- 6,000年前 馬が家畜化
- 5,500年前 ぶどうが栽培化(この辺で新種の栽培化・家畜化がピークアウト)
- 3,000年前 中国で淡水魚が養殖化
- 2,000年前〜現代 新種の栽培化・家畜化が始まった形跡が無い
- 海洋生物の養殖化は近代以降(日本では明治43年頃からマダイ)
【小麦による世界征服】
- 小麦は簡単に育たない非常に手が掛かる草である
- 岩や石があると育たない → 畑を作らなければならない
- 養分や水を他の草と共有できない → 草刈りが必要
- 非常に病弱 → 農薬などが必要
- 他の生き物に無抵抗で食べられる → 虫よけ、動物よけが必要
- 大量の水が必要 → 川などから水を運んだり水道施設が必要
- 大量の養分が必要 → 肥料(動物のうんこ等)が必要
- ミネラルとビタミンが乏しく消化しにくい → そればかり食べてると病気になる
- 雨が降らなかったり虫が大量発生すると不作 → 飢饉になる
- 栽培には多大な時間が掛かる → 定住が必要になる → 定住により人類同士で土地の奪い合い → 成体のホモ・サピエンス同士での殺し合いが増加(農業革命以降、成人の暴力による死亡率が急上昇)
- 単位面積あたりの食物量が増える → 人口が増加(定住化もその一因)
- 多大な労力を要する → 組織が拡大 → ヒエラルキーが高度化 → ごく少数の貴族が多くの奴隷を使役する統治体制になる
「農業革命により人類は豊かになった」と錯覚している歴史学者が多いが、狩猟採集民の時代より平均的なQOLが著しく低下している。結果的に農業革命は罠(禁断の果実というか穀物)だった訳だが、気づいた頃には数世代経過して後戻りができなくなった。
現代のホモ・サピエンス全員が明日から狩猟採集民に戻ったとしても大半がすぐに餓死するのと同じことがネイティブ農耕民族にも言える。
10,000年前の時点で全ての人類が農耕民になった訳ではなく、狩猟採集民であることを選んだ人類も居たが、科学革命以前の戦争では総量が多い民族が必ず勝つので、科学革命までの間にその殆どが滅んだ。
状況を俯瞰的に見ると、「ホモ・サピエンスが小麦を栽培化した」というより、農業革命により ホモ・サピエンスが小麦の家畜になった という理解が正しい。
有機生命体の勝利条件(KPI)は「DNA総量」だと考えられ、人類は農業革命により人口(=DNA総量)が増加したが、我々の領主である小麦様は人類を酷使することでより多くのDNAを獲得することに成功した。
2020年の全世界の小麦のDNA総量は少なく見積もっておよそ1,100百万トン(※消費量+在庫量の合算なので未収穫を除く)で、一方ホモ・サピエンスのDNA総量はおよそ481百万トン(77.53億人x平均62kg)。有機生命体としては小麦が人類にダブルスコア以上の大差で完全勝利している。
余談だが「小麦ばかり食べていると病気になる」という点からアレルギーを連想した。厚生労働省の記事によると50年前まで日本人にはアレルギーはほぼ無かったが、最近では33%の日本人が何らかのアレルギーを持つという。牛乳、鶏卵、小麦、米、大豆が5大アレルゲンとして知られている。牛乳は論外(そもそも牛乳はホモ・サピエンスではなく仔牛専用の飲み物なのでホモ・サピエンスの体に合わなくて当然)だが、穀物アレルギーが出てきている点については、ホモ・サピエンスの免疫系が小麦の支配から抵抗しているのかもしれない。1946年より以前の日本ではパンはほぼ食べられていなかったが、(米国の事情+日本の食料不足で)小麦と防腐加工をした牛乳(脱脂粉乳)などを大量輸入したことで、パンと牛乳が日本の食文化として定着を始めたが、それぐらいの時期からアレルギーが発生し始めている点が中々興味深い。(厚生労働省曰く「工業化・文明化とアレルギーは密接に関係があるようです」とのこと)
DNA総量で見ると、家畜化された牛(およそ10億頭) もホモ・サピエンスに次ぐ勝者と言える。有機生命体として勝ち残っている状態が必ずしも「個々の生き物にとっての幸福」を意味しない。生まれた瞬間から死刑囚として生死を管理される家畜より、絶滅寸前の野生のサイの方が恐らく幸福だと思われる。
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