2022年9月30日金曜日

ストリーミングゲームはどうすれば上手くいくのか

Stadiaがサービス終了するようですね。

https://blog.google/products/stadia/message-on-stadia-streaming-strategy/

私は3年前のローンチ前からこの日を予期していました。

https://suzukiplan.blogspot.com/2019/03/blog-post_20.html

思っていたよりも長く続いたなというのが率直な印象です。Googleの中の人は頑張ったんだろうなと思います。お疲れ様でした。

Stadiaはどうすればどうすれば上手くいったのだろうか?

上記の記事では要約すると「価格の問題ではないか」と指摘してます。つまり、StadiaをYouTubeプレミアムと抱合せ販売するか、CMを再生すれば無料でプレイできるとかにすれば良いのではないかと。

しかし、そういった試みをすることなくサービスクローズするということは、仮にそういったことをしても十分な売上が確保できないといった判断がなされたのかもしれません。(これから来る冬の時代に備えた不採算部門の切り離し...という経営戦略的な匂いもしないこともないですが)

YouTubeでゲーム実況動画を視聴して、面白そうだと思ってPlayボタンを押せば5秒と掛からずゲームがプレイできるという体験は一見筋が良さそうに見えますが、実はそれがそもそもミスリードだったのかもしれません。

プロ野球の試合を観戦していると野球で遊びたくなってウズウズしてしまい、バットを持って河川敷へ遊びに行くタイプの人は恐らくマイノリティで、大半の人はビール片手に観戦だけしたいと考えているものと思われます。だから、プロ野球のドームの近所に草野球が出来る手頃な河川敷(Stadia)が無くても問題無いと考えられます。

また、私は購入したゲームを骨の髄までしゃぶり尽くす(何なら逆アセンブルして実装方法まで調べる)タイプですが、それも実は少数派なのかもしれません。知人のゲームオタクの中に一定数「積みゲー」をする人が居ます。ゲーム自体好きで買うものの、プレイを後回しにして只管タンスの肥やしを増やしていくタイプです。実はそういうタイプの人の方が多いかもしれません。全く遊ばずに積むのはアラブの富豪だけかもしれませんが、少し遊んでクリアもせずに遊ばなくなる人は実際結構多いと思います。私は律儀に全部クリアするのは当然として何なら完全攻略も目指す場合もあるので、未だにスーパーファミコンから抜け出せないのですが、そんな人ばかりではゲーム業界は商売あがったりな筈。

要するに、大半の人はゲームを「何となく遊びたいけどプレイするのが面倒くさい」と思っているのではないかなと推察しています。この推察は最近思いついたものではなく、以前個人でスマホ用のゲームを開発していた頃、「放置系」というジャンルのゲームが流行っている様子を見て考察したものです。

「如何にプレイさせずに没頭させるか」

その軸でゲームデザインを考えた時、私の思考はショートしてしまいました。

私は昔からスポーツは観戦よりもプレイする方が好きで、ゲームもプレイする方が好きだったので、そういうモノを考えることは無理だと悟りました。(東方VGSは意図せずその軸に乗っているかもしれませんが)

ストリーミングゲームの仕組み自体は面白いと思いますが、ビジネス的に筋が良い(マジョリティに刺さる)やり方は全く思いつきません。

ただし、友人に「おーい磯野!野球しようぜ!」と誘われた時、スケジュールさえ問題無ければ付き合う人が大半(マジョリティ)だと思われるので、ゲームプレイを誘うコラボレーター的な仕掛けがあればStadiaは上手くいったのかもしれません...具体的なフラッシュ・アイディアは思いつきませんが、少なくともそのシーンでは「ストリーミング再生できるデバイスしか持っていなくてもゲームプレイできる」という要素の重要性が高まります。

2022年9月28日水曜日

AIによる再現可能性を断ち切る方法

前々から現在普及しているAI(ディープラーニング)について色々調べていたのですが、音楽方面では恐らく、

  • 耳コピによる楽曲の完全再現
  • それっぽい音楽の自動作曲
あたりなら普通にできる日が来る筈だと思っています。

耳コピAIについては以前記事で書いてます。

そして、自動作曲AIについては既にサービスが存在するようです:

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000070769.html

絵画方面ではAIがキーワードから自動的にそれっぽい絵を生成するサービスが注目されています。

最近では、米コロラド州で開催されたアートコンテストでAIが描いた絵が優勝したりとか。

https://artnewsjapan.com/news_criticism/article/412

絵画や作曲のスキルは、プロなりのトレース(特徴抽出)をしながらスキルを盗み、それを各々少しづつ自己流にアレンジしていくことで、独自の画風や曲風なりにしていくアプローチで身につけていくのが一般的だと思われます。

一見するとそれは、ディープラーニングの学習アプローチと近いと思われるかもしれませんが、「少しづつ自己流にアレンジ」という部分が多分ディープラーニングでは再現不可能なので、それにより作られたコンテンツは(少なくとも世に出るまでの間は)AIに真似されることは無いと思われます。

世に出てウケたら速攻で学習される訳ですが、順序が「人→AI」にしかならない(できない)点はとても重要です。

アート自体の良し悪しも評価構成要素として重要なのかもしれませんが、結局のところ「誰が創ったか」が重要です。例えば、ゴッホが描いた絵は高く売れるけど、全くの別人が描いたゴッホっぽい絵が何億円といった価格で取引されることは無いと思います。

Wikipedia によると、カメラで最初に写真が撮影されたのは1826年〜1827年ごろとのことです。印象派が流行りだしたのはちょうどその後ぐらいからですね。写真の登場により、見たモノをそのまま描く写実画のスキル価値が大幅に低下したため、印象派が発展したとする説もあるようです。

AIの登場は、カメラが登場した1800年代当時の状況と割と似ている気がしています。

1800年代のゲームチェンジの時は「こうすればカメラでは再現できない筈」というアプローチで印象派が誕生したものと想像していますが、AIによるゲームチェンジも「こうすればAIでは再現できない筈」というアプローチが正解かなと。

既存絵画や音楽の単純な「特徴抽出」だけではAIにより再現可能なので、「少しづつ自己流にアレンジ」を深化させることが、AIによる再現可能性を断ち切る方法だろう...というのが今の所の私見ですが、もっと別のやり方もあるかもしれません。

「AIによる再現可能性を断ち切る方法」というのは単なるタイトル詐欺で、確立した方法はまだ分かりません。ただ、ゲームチェンジを悲観するのは無意味で、それを受け入れつつ無効化する何かを考えながら創作活動を続けていくことが、クリエイターに求められる素養なのではないか?という単なる精神論です。

2022年9月23日金曜日

業績分析: サイバーエージェント

ゲーム業界ではないかもしれませんが、実質ゲームの売上がずば抜けていることで有名なサイバーエージェントの業績分析をしてみます。

【P/L】

売上と利益の偏差値をグラフ化したものを示します。

主要ヒットタイトルとAbemaTV(ABEMA)の先行投資期間を分かりやすくしてみました。

スマホ対応(2013.05)以前もガラケーのソーシャルゲームとブログで荒稼ぎしているイメージがありましたが、2007年〜2012年あたりも利益率の高い成長をして順調に成長していたことが窺えます。

スマホ対応した当初の決算(2013.09)では営業損失を計上していますが、高い経常利益を出して当期純利益は黒字をキープしています。(恐らく、株を売るなどしてとりあえず赤字を回避したようです)

その後、2016年あたりまでは順調に利益率が高い成長をしていましたが、2017年あたりから利益率の偏差値が大幅に悪化しています。

ですが、2021年2月にリリースしたウマ娘により約半期(7ヶ月分)しか計上していないにも関わらず利益偏差値80オーバーの急激な回復をしています。

【メディア事業P/L】

2015.09以降の決算では、AbemaTVの先行投資でガンガン資本投入しています。

以下、メディア事業単体の売上と営業利益です。

メディア事業(AbemaTV)への投資を継続した結果、売上全体に占めるメディア事業の売上高構成比率が2015年の7.42%から2021年の12.43%まで順調に伸びています。

丸6年やって構成比率12.5%(+7%)ということは、単純な線形予測で12年後に19.5%、24年後に33.5%で、構成比率が少ない時ほど少ないコストで構成比率を上げることができる点を勘案すると、投資対リターンのパフォーマンスが随分低い印象です。

売上は2020.09以降から本格的に伸び始めているので「まだこれから」なのかもしれませんが。また、他事業(広告・ゲーム)へのシナジー効果等もあるかもしれないので、単純な単体業績では測れないところもあるかもしれません。

【メディア除外P/L】

2015年以降のメディア事業の売上高と利益(損失)を無かった状態にして、売上と当期純利益の偏差値グラフを作成してみました。

すると、売上と利益がかなり相関するようになったことが分かります。

ただ、2017.09 〜 2020.09 の 4期 の偏差値ギャップ(当期純利益率の悪化)がやや目立ちます。(2020.09は巣ごもり需要もあって若干回復してますが)

この利益率が悪かった期間はシャドーバース、バンドリ、プリンセスコネクトReあたりの収穫期と重なると思います。それらのゲームは客観的に見て結構ヒットしていたように見えたのですが、利益貢献という意味ではイマイチ旨味が無かったように見えます。

ソーシャルゲームの場合、売り切りのゲームソフトと違って古いタイトルでも安定的に収益を出せる資産性のようなものがありますが、運営にもコストが掛かるのでそれが徐々に利益を圧迫しているのかもしれません。(黒字だから切るに切れない→維持にHRが割かれる→パフォーマンス低下→利益率悪化...かな?)

ウマ娘が一気にそれらを帳消しにしているようですが。

ゲームで経営成績を安定させるのは難しいから次の柱としてメディア事業(主にAbemaTV)を育てていく事業戦略なので、今後メディア事業が成長できるかどうかが投資判断のポイントかと思われます。

【AbemaTVの可能性】

ざっくり、テレビ、YouTube、Netflix、TikTokあたりと同じ動画コンテンツを配信するプラットフォームですが、基本的にやっていることはテレビと同じです。(スマホ版テレビ?)

AbemaTVのビスネススケールできる収益モデルは基本テレビと同じ企業広告だと思われます。また、過去動画をオンデマンド視聴できる有料会員サブスクリプションもあるので、テレビよりも収益性は若干良いかもしれません。

  • 収益モデル
    • Ads
      • YouTube
      • テレビ
      • AbemaTV
      • TikTok?
      • ニコニコ動画(※おまけレベル?)
    • Subscription
      • Netflix
      • YouTube(※おまけレベル?)
      • AbemaTV(※おまけレベル?)
      • ニコニコ動画

また、YouTubeやTikTokは一般ユーザーも配信できるUGC(User Generated Contents)という違いもあります。テレビ、AbemaTV、Netflixとの違いは、コンテンツ(動画)の作成コストを運営が負わなくても、ユーザーが勝手にコンテンツを配信してくれることです。

  • コンテンツ制作モデル
    • UGC
      • YouTube
      • TikTok
      • ニコニコ動画
    • プロがコンテンツ制作
      • テレビ
      • AbemaTV
      • Netflix

あとは、大きいのは商売している地域ですね。AbemaTVはテレビと同じなので日本ドメスティックです。日本語の動画コンテンツを海外でヒットさせるのは基本無理だと思います。例外的にヒットするレアケースも無くは無いかもしれませんが、言語の壁は大きいです。

  • 地域
    • ドメスティック
      • テレビ
      • AbemaTV
      • ニコニコ動画
    • グローバル
      • YouTube
      • TikTok
      • Netflix

ビジネスインパクトの大きさは、収益モデル < コンテンツ制作モデル < 地域 だと思います。

収益モデルはその時の状況に応じて変更することができるので、ビジネスインパクトはそれほど大きく無いと見ています。

コンテンツ制作モデルも、プラットフォームが成熟するとUGCとプロ制作コンテンツの差は実質無くなる傾向があります。サービス運用初期のコンテンツ確保や慢性的にコンテンツを制作し続けるランニングコスト(止まれば死ぬ)という点でUGCがやや有利かもしれません。テレビやAbemaTVのようにライブストリーミングでコンテンツを垂れ流し続ける必要があるタイプは運営コストが無駄に高いのでやや不利と見ています。

実際、収益モデルとコンテンツ制作モデルが異なるYouTubeとNetflixの直近の売上高は概ね同じぐらいらしいです。(YouTube: 288億米ドル、Netflix: 297億米ドル)

問題は地域ですね。

【結論】

バンナムの記事でも書いてますが、コンテンツ産業全般の経営戦略として「海外事業の強化」は必須で、ドメスティックでしか戦えないコンテンツ企業は遅かれ確実に淘汰されると思っています。

という訳で、サイバーエージェントの事業戦略は、私が考える事業戦略の方向性と合致していないので、私の投資判断は「投資不適格」となります。(Netflixのようにグローバル展開をする予定があるのかは定かではないですが、国内投資だけで息切れするのではないかと予測)

ゲーム制作会社としては優秀だと思いますが、そのゲームも日本向けのマーケットインに注力しているようなので、グローバルでは厳しいと想定しています。ウマ娘の中国語版とかも出そうている(既に出している?)らしいですが、日本の競走馬のことを1ミリも知らない外国人にはそこまでウケないんじゃないかなと予測してます。

ただし、投資CFについては、事業の成長に合わせて適切に成長できているので、成長可能性のある優良企業(経営自体は優秀)だと思います。

長期視点での成長率の傾向として、Yon10Y(10年前比)の売上高成長率は4.89倍〜5.57倍、Yon5Y(5年前比の成長率)は1.54倍〜2.29倍と順調に成長しています。

ただし、スマホゲーム参入の2013年との比較が始まる2018年以降のYon5Yは鈍化の傾向を示しているため、スマホゲーム依存では成長鈍化する兆候が見られます。(上図では省略してますがYon3Yでも2013年との比較が始まる2016年以降からの成長鈍化の兆候が見られます)

課題は、

  • AbemaTV黒字化(投資やHRのプライオリティを下げる)
  • 新たな事業の柱の模索
  • 社長の後継者育成(社長の藤田さんはまだ49歳と若いですが、社外取締役を除く取締役が、創業メンバーの日高さんとプロ経営者っぽい中山さんの3名体制で、次世代の人が入っていない雰囲気だから、まだ育成着手していない段階と想定)

あたりかなと。

2022年9月21日水曜日

東方VGSのアプリ内課金(広告削除)の価格について

2022年10月5日以降、日本を含む一部地域でAppStoreのアプリ内課金の価格が改訂されます。 

https://developer.apple.com/jp/news/?id=e1b1hcmv

これに伴い、iOS版「東方VGS」のアプリ内課金アイテムの価格が次のように改訂(値上げ)されます。

  • リワード広告削除: 370円→480円
  • ディスプレイ広告削除: 1,220円→1,600円

なお、Android版でも2022年10月5日に日本ではiOSと同価格へ手動改訂を実施する予定です。

また、日本以外の地域におけるAndroid版の価格は、2022年10月5日時点の米ドル為替レート($2.99、$9.99)を基準に自動調整をする予定です。

本家のお値段がだいたい¥1,500(※委託販売の場合)なので、それぐらいの価格をということでだいたい¥1,500よりも少し安くなるように当初価格設定したので、合計¥1,500以下ぐらいになるように調整しようか悩んだのですが、物価や為替は変動するのが当たり前なので「米ドル基準で価格維持」という方針でいきます。

2022.10.06 追記: 米ドルで$13なので¥1,500以下だろうと勘違いしてましたが、値上げ前から既に¥1,500超えていました。送料込みで¥1,590ということで。(値上げ後は¥2,000超えるのか....ちょっと高すぎる感)

業績分析: スクウェア・エニックスHD

ゲーム業界大手のスクウェア・エニックスHDの業績分析をしてみました。

【P/L】

概ね右肩上がりの成長をしています...ただ、バンダイナムコHDと比べると当期純利益と売上の偏差値ギャップが激しく、2009.03以前は利益率が高く、2010.03以降は利益率が低い傾向が目立ちます。

また、2011.03は営業利益が黒字なのに当期純利益が赤字になっている謎の状態です。

(2011.03決算)※偏差値ギャップ = 11.1

  • 売上: 1252億7200万円(偏差値42.2)
  • 営業利益: 73億2500万円(偏差値38.8)
  • 経常利益: 53億9000万円(偏差値38.4)
  • 当期純利益: △120億43万円(偏差値31.1)

これは、主にのれんの減損損失の計上(約88.5億円)によるもののようです。のれんの減損損失は、過去のM&Aで儲かると見越した額に届かなかった額を損失計上することです。(節税スキームかな)

ただし、前期よりもトータルの特別損失額は低い(2010.03の特別損失は179億で、2011.03は160億)ので、人気タイトル(FF14)の発売延期による減収減益が響いたようです。

ただし、ここから丸5年間、売上偏差値40台の低水準の暗黒期が続き、2016.03年になってようやく2010.03の売上を超えることができた業績結果から見るに、仮にFF14がオンスケで販売できたとしても、結果的にダメだったであろうことが予測できます。

2013年の偏差値ギャップも激しく、営業利益(本業の利益)でも赤字を掘っています。

(2013.03決算)※偏差値ギャップ = 15.5

  • 売上: 1479億8100万円(偏差値45.0)
  • 営業利益: △60億8100万円(偏差値29.5)
  • 経常利益: △43億7800万円(偏差値32.4)
  • 当期純利益: △137億1400万円(偏差値29.9)

決算短信によると「開発方針の変更、組織体制の見直し、一部ビジネスモデルの変更等による特別損失」が主要因とのこと。恐らく、その体質改善により、2014年以降の業績が回復したものと思われます。

特にひどい偏差値ギャップは2011.03と2013.03ですが、その他にも計測期間(19期)全体で7期(約36.8%)に目立つ偏差値ギャップが出ています。通常、本業に専念していれば売上と利益の偏差値はキレイに相関するので、偏差値ギャップが出ることは好ましくありません。

【投資C/F】

投資C/Fは基本マイナスで徐々に右肩下がり(増額)になっているのが理想形なので、これはダメなパターンです。

基本マイナスになる筈の投資C/Fが5億円ぐらいプラスになっている2005.03の決算短信を確認したところ「国債の満期償還などによって投資有価証券の売却による収入が 22 億 61 百万円、有形固定 資産、無形固定資産の取得による支出が△16 億 81 百万円」とのこと。2005.03は業績が赤字になりそうだった訳ではないので投資が不十分な謎の状態です。

2011以前のジェットコースターのような変動は完全に謎でしたが、2012年以降はだいぶマシになった感があります。2013年3月に社長交代があったようなので、恐らくそれが原因だろうと考えられます。ただし、2012以降も業績が良い2019.03〜2021.03の間に投資シュリンクしているので、企業の成長能力について疑問が残ります。前任社長の下手な博打がトラウマになっているのかもしれません。

以上のことからスクエニ株に対する私の投資判断は、任天堂と同様「投資不適格」という結論になります。

【余談】

2005.03決算短信の「2. 経営方針」に「当社は、株主に対する利益還元を経営の重要政策の一つとして位置づけており、今後、既存事業の拡 大、新規事業の開拓等を目的とした設備投資や買収など、当社の企業価値を高めるための投資を優先し、そのための内部留保を確保します。」とあります。

またこのパターンか...それならそもそも公開株式市場に上場すべきではないと思います。ゲーム会社の人は公開株式市場をスコアアタック大会か何かと勘違いしているのでしょうか。ゲーム会社に限らずそういう企業は結構多い印象ですが、何故上場しているのか今一度しっかり考え直した方が良いと思います。上場維持するにも結構コストが掛かるので。

【まとめ】

P/Lを見る限り2015年以降は順調に成長をしているように見えるので、私の判断が的外れかもしれません。

私は、サラリーマン生活で貯めたケチなお金の使い道が無いから投資をしているだけの素人なので、的外れの可能性が高いと思います。だから既にスクエニに投資されている方は心配しなくて良いと思います。

「ドラクエやFFの続編が遊びたい」といった純粋な動機があればスクエニの株を買うのはアリで、それが金融の本質だと思っています。私の中ではドラクエは5、FFは6で完結していて、もう新作もリメイクも欲しいと思わないので、投資をする動機がありません。

【金融の本質】

株式投資とは単なるお金を使ったゲームですが、パチンコ、競馬、FXなどのギャンブルとは根本的に異なる点があります。

パチンコ等のギャンブルは勝っても負けても何も生産されません。単にお金が減ったり増えたりするのを楽しむだけの無意味なゲームです。しかし、株式投資は私の(使い道の無い)お金を有効に使ってすごく優秀な人達が頑張って何某かを生産してくれます。額面のキャピタルゲインや配当はその副産物に過ぎません。

私は商売が基本ヘタクソ...というか、儲けとかよりもフィロソフィーとかばかり重視してしまう傾向があるので、一応サラリーマン業とは別に商売(個人事業)もしてますが、個人事業ではサラリーマン業ほど儲かっていません。個人事業はむしろ儲からなくても良いと思いながらやっているので(資本主義の世界では)生産効率が悪い無能です。だから、商売は商売が得意なフレンズたちに頑張っていただく方が生産効率が良いと考えています。

ここ数日間、任天堂、バンナム、スクエニの業績分析をした結果、その3社の中ではバンナムが一番優秀そうに見えます。

ただし、バンナムの分析記事で投資適格の判断を下しながら「少なくとも現時点ではバンナム株は1株も持っていませんし、今の所買う予定もありません」と書いた根拠は、スクエニと同じく「株を買う動機が無いため」です。

単純に株でお金を儲けたいだけなら、バンナム株ならポートフォリオに組み込んでも良いと思います。(そして、トータルパフォーマンスだけなら個別株よりインデックスの投資信託やETFの方が良いと思います)

昔のnamcotのゲームは好きだったのですが、最近のゲームはバンナムに限らず魅力を感じません。(任天堂のゲームは別軸で魅力的ですが)

ゲームを卒業した訳ではなく、素人が個人制作してSteamとかで売られている同人ソフトとかは魅力的なものが一定数あるので、大人数のチームで工業的に作られたゲームよりも、1人か多くても3人(グラフィック、サウンド、プログラムに各1人)ぐらいで作られた「作家性が垣間見える作品」が好きなようです。

ただし、その路線ではビジネススケールが難しいのか商売向きではないらしいことは何となく理解しています。ですが、ゲームと違って漫画や小説などの作家性が垣間見えるものしか基本ヒットできない傾向が見られるコンテンツも存在するので、やり方次第では何とかなる気がしないでもないです。実際、Valve Corporation(ワシントン州)が運営するSteamはかなり上手くいっているらしいという噂をチラホラ聞きます。上場企業ではないので実態は不明ですが(参考)。しかし、日本の大半のゲーム企業はその方向を向いていないようです。

だから、ゲーム企業(株式会社)に投資しても、私が好きなタイプのゲームが作られることはないから「ゲーム企業の株は例え優良であっても買う予定はない」という結論に至ります。

バンナムの分析記事で「私が実際に売買をする時は主に定性的な論点でもっと煮詰めたレビューをします」と書いた「定性的な論点」というのがそこです。

例え評価損を抱えて何年間も塩漬けしたとしても「別に良いか」と思える銘柄に投資するのがベストで、業績評価等の定量的な論点での分析は、無能な企業の株を掴まないための単なる足切り手段です。

そして、資本を貸す以上は最低限のパフォーマンスは求めます。

IPO(公開市場への上場)をしている企業にも無能な企業は結構多いので、チェックは必須です。その一方、最低限のパフォーマスンスを出せる可能性がある最低限の足切りラインがIPOなので、IPOしていない企業の非公開株の第三者割当増資、私募ファンド、合同会社スキームなどは論外です。

2022年9月19日月曜日

業績分析: バンダイナムコHD

先日、任天堂の業績分析をしましたが、残念ながら私の投資スタイルとは合わない感じでした。業界トップの企業なら私の投資判断で「投資不適格」になる事は滅多に無いのですが、ゲーム業界はやはりヤクザな業界なのか...と思ったのですが、流石にそんなことは無いだろうと思って色々探してみたら、ちゃんと真っ当な企業もありました。

という訳で、私の投資判断OKなゲーム会社の例として、バンダイナムコHD(BNH)の業績分析の結果を記します。

【P/L分析】(2006.03〜2022.03)

理想的な(右肩上がりの)成長をしています。

また、売上+営業利益と経常利益+純利益が概ね相関関係にあるので「本業に専念している状態」だということが分かります。

敢えて気になる点を挙げるとすれば、以下2点です。

  1. 2006〜2010の期間が右肩下がり
  2. 2022.03の経営成績が売上+利益すべて偏差値70超え(偏差値60ぐらいの成長が理想的だがやや急激に業績が伸びている印象がある)

2007.03 決算短信で『当社グループは当期よりスタートいたしました3ヵ年の中期経営計画に基づき、「ポートフォリオ経営の強化・充実・拡大」を推進しております』とあり、その中期経営計画ではKPIとして売上高と営業利益の目標値が示されていました。

2008年目標は売上5500億円、営業利益580億円とのことでしたが、2008.03決算成績は売上4604億円、営業利益334億円なので大幅に未達です。1年ズレて2009.03決算成績なら売上4263億円、営業利益223億円でもっと未達です。

実のところKPI未達については大した問題ではなくて、未達の原因が「戦略ミスなのかどうか」が重要です。私はそもそも売上とか利益のKPI自体重視してなくて、極論ですが「戦略が妥当なら何なら短期的には利益が落ちてもOK」とすら考えています。

中期経営計画で示されている「ポートフォリオ経営の強化・充実・拡大」の目的は「市場構造変化、競争の激化等による経営リスクの増大への対応」とのことで、具体的には次の経営戦略と事業戦略を実行したようです。

  • 経営戦略
    • コーポレートガバナンスの強化
    • 人的資源の有効活用
    • 最適な経営体制の構築(組織再編、間接部門の集約化)
  • 事業戦略
    • エンターテイメント・ハブ構想
    • 海外事業の強化

経営戦略は特に気になるところはありません。コーポレートガバナンスは強化すべきだし、HRは有効活用すべきだし、間接部門は集約した方が良いに決まっています。(いわば「当たり前のことをやります」という内容だからOK)

事業戦略の「エンターテイメント・ハブ構想」とは、要約すると「コンテンツの創出から商品展開までの機能を持ちつつ事業領域の拡大を図る」とのことでした。これは特段問題無さそうですが、「海外事業の強化」が結果的に中期計画未達の原因になったものと考えられます。

海外事業の強化とは具体的には、2005年度時点で国内売上比率81.6%だったものを2008年度は75.1%にしようとしたようです。結果的にリーマン・ショック後の世界金融危機があり、2008年〜2012年頃の期間は記録的な円高水準だったので、計画通り海外売上比率を上げてしまった場合、数字が悪くなることになります。

ただし、日本は少子高齢化が進むことで玩具やゲームの販売が将来的にシュリンクしていくことが明白なので、コンテンツ産業全般の経営戦略として「海外事業の強化」は必須です。ドメスティックでしか戦えないコンテンツ企業は遅かれ確実に淘汰されます。また、円高の内に海外の設備投資を進めておけば円安のタイミングでの利幅が上がるので、金融危機の円高タイミングでの「海外事業の強化」は、ベストな戦略だったと私は評価します。

実際、円安がゴリゴリ進んでいる2023年Q1決算短信に「為替差益で儲かった」ということが書かれています。また、フロム・ソフトウェア(KADOKAWA傘下)と共同開発したELDEN RINGがヒットしたことなどが寄与したようです。ELDEN RINGの開発にどの程度関わったのかは不明ですが、海外販売をBNH傘下が担当していることから、海外におけるエンターテインメント・ハブ構想の商品展開機能が好走したものと考えられます。

つまり、2022年の決算が異常に良かった原因は「偶然儲かった(ギャンブルに勝った)」のではなく「前々から準備していたから儲かった(戦略上の勝利)」ということになります。

以上のことから、私のBNH投資判断は「投資してもOK」という評価になります。

なお、実際に私が投資するかどうかは別 & 株を買えば絶対儲かるというものではありません。少なくとも現時点ではバンナム株は1株も持っていませんし、今の所買う予定もありません。(私が実際に売買をする時は主に定性的な論点でもっと煮詰めたレビューをします)

【投資C/F分析】(2006.03〜2022.03)

投資C/F(一般的に設備投資など)の流れは、2011年までは投資抑制傾向でしたが2012年以降は緩やかに強化していることが分かります。

「投資C/Fをシュリンクさせている企業の株は下がるから買うな」という持論があるのですが、実際投資C/Fがシュリンクしている期間は業績も悪かった傾向が覗えます。シンプルに儲かってない(原資がない)から投資シュリンクしているのなら良いのですが、儲かっているのに投資シュリンクさせる企業は伸びる見込みが無いと考えています。

2012.03以降は投資C/Fを無理なくだんだん増やしていっており、業績も伸びているので、この点は特に問題無さそうです。

一点、2018.03に異常値を出している点が気になります。決算短信によると「主に有形・無形固定資産の取得による支出が48,243百万円(前期は14,821百万円)、投資有価証券の取得による支出が11,461百万円(前 期は2,946百万円)であったことによるもの」とのこと。

単なる自社ビル建設などでここまで高くなることは無いので若干謎です。

投資CFに入れているからオフィスではなく事業目的の不動産等だと考えられますが、三田にディズニーランド的な何かでも作ろうとしたのでしょうか?(参考: 東京ディズニーシーの総工費は3,350億とかなのでその規模ではないです)

2018Q1〜Q4の株主総会の質疑応答を見てもそれらしい質問をしている人が居ないっぽいのでよく分かりませんでした。普通、こういう異常値が出れば真っ先に株主に問い詰められる筈ですが、それが無いということは、400億ぐらい投資しててもおかしくない公知の事実があったのかもしれません。

【コーポレート・ガバナンス分析】

組織の統治機構について分析してみます...とはいえ、組織図とかの変化を見たりとか無駄なことはしません。組織の統治機構はトップのプロフィールを見ればだいたい分かるので、歴代の社長のプロフィールをザックリ確認します。

※敬称略 & 役職類は登記上影響のあると思しきもの以外とBNH代表取締役社長社長以降の経歴は省略します

  • 2021.04(川口勝)
    • 1960.11 生
    • 1983.03 駒澤大学経済学部経済学科卒
    • 1983.04 バンダイ入社
    • 2006.04 バンダイ取締役
    • 2015.08 バンダイ代表取締役社長
    • 2016.06 バンダイナムコHD取締役
    • 2021.04 バンダイナムコHD代表取締役社長
  • 2015.06(田口三昭)
    • 1958.06 生
    • 1982.03 明治大学法学部卒
    • 1982.04 バンダイ入社
    • 2003.06 バンダイ取締役
    • 2015.06 バンダイナムコHD代表取締役社長
  • 2009.04(石川祝男)
    • 1955.04 生
    • 1978.03 関西大学文学部ドイツ語学科卒
    • 1978.04 ナムコ入社
    • 1995.06 ナムコ取締役
    • 2002.05 NAMCO AMERICA INC 取締役会長
    • 2002.05 NAMCO EUROPE LTD 取締役会長
    • 2005.05 NAMCO HOLDINGS CORP 取締役社長
    • 2006.04 ナムコゲームス代表取締役社長
    • 2006.06 バンダイナムコHD取締役
    • 2009.04 バンダイナムコHD代表取締役社長
  • 2005.09(高須武男)
    • 1945.06 生
    • 1968.03 早稲田大学経済学部卒
    • 1968.04 三和銀行入行
    • 1996.04 バンダイ移籍
    • 1996.06 BANDAI HOLDINGS CORP代表取締役社長
    • 1997.06 バンダイ取締役
    • 1999.03 バンダイ代表取締役社長
    • 2000.09 バンダイネットワークス設立 取締役会長
    • 2000.12 トイカード代表取締役副社長
    • 2002.02 バンダイネットワークス代表取締役社長
    • 2005.06 バンダイ代表取締役会長
    • 2005.09 バンダイナムコHD設立 代表取締役社長

なるほど。

初代社長がバリバリの銀行マンだったんですね。ゲーム会社なのにずいぶん優秀な経営しているのはその為かもしれません。ちなみに、バンダイは元々三和系企業グループ(みどり会)で設立されたので、三和銀行→バンダイ移籍という流れだと思われます。

BNHはまだ(旧バンダイと旧中村製作所が合併してから)歴史が浅い企業ですが、社長はバリバリの現場叩き上げのようです。この統治タイプの企業としては日立製作所などがあります。(日立は実質初代の小平浪平さんの後釜以降は全員、大学卒業後即日立入所というバリバリの現場叩き上げ)

という訳で、私の分析ではBNHの組織の統治機構は「現場型」です。

(参考: 私の統治機構診断)

  • ワンマンタイプ
    • 同族型(跡継ぎが無能だと潰れるので長期視点ではリスキー)
    • カリスマ型(ちゃんと世代交代できれば存続可能性があるので一族経営型よりは安全なミドルリスク。組織としてトップマネジメントの後進育成をちゃんとしているかが重要)
  • バランスタイプ
    • 外部委託型(プロ経営者に経営をお任せするタイプで本来ローリスクな筈だが、カルロス・ゴーンのような有能なプロ経営者が逮捕されてしまうケースもあったので日本の組織向きではないかもしれない)
    • 現場型(現場叩き上げがトップになるタイプで、日本の伝統的な組織ではこのタイプが多い。日立製作所のようにグローバルで戦える企業もあるので、日本の組織とは最も相性が良いのがこのタイプだと考えられる)

ワンマンタイプは、基本的に組織統治がメチャクチャなケースが多いので、業績を見て「この企業良いな」と思っても、このタイプに属する企業は基本的にハイリスク(伸び代はあるが存続しにくい)と判断します。投資しない訳ではなく、短期・中期でのキャピタルゲインは狙いやすいので、短期投資銘柄(投機に近い)としては悪くないと思われます。

たいだいの企業の中期経営計画は3年単位なので、社長任期は長くても3年2期(6年)、短ければ3年で次世代にバトンタッチするのが現場型の理想形で、二代目の石川さんと三代目の田口さんがジャスト6年なので妥当です。

ちなみに、目安として10年以上トップが世代交代できていない組織は、専制君主制(カリスマ型)に移行したものと判断できます。

【リスク分析】

  1. 直近の決算数値が良すぎるので短期 or 中期的には反動減があるかもしれない。(単なるテクニカルなので根拠は無いです)
  2. 円安で儲かるということは急激に円高に振れると減収減益リスクがありそう。(円安進行が急だったので円高に振れる時もフラクラ後急に進むではないかというテクニカル上の懸念)
  3. 私の株式取引は基本長期保有が前提です(組み換えならします)が、長期保有の前提で考えると配当利回りが低い。(配当ではなく株価で複利が付く方が税制面で有利なので、必ずしも配当利回りが低いから投資しない訳ではないですが)
  4. 過去の決算短信をななめ読みした限りガンダムに関する報告割合(ガンダム頼み?)が体感的に多い気がした。また、2023Q1も他社コンテンツの海外販売代理業務で儲かっているだけだから結果的に利幅が少ない筈。エンターテイメント・ハブ構想の要点であるコンテンツ創出が弱いかもしれない。(この辺はバンダイ系よりもナムコ系の強みか?)
【総括】

私の投資判断基準だと、任天堂は投資NGですがバンナムは投資OKということになります。ただし、コレは飽くまでも公示情報を確認した限りでの私の単なる感想であって、株の売買を勧めている訳ではありません。

株の売買判断は自己責任で。

ちなみに、私はバンナム株は持っていない(というかゲーム業界には詳しくないので、ゲーム業界の株にそもそも手を出したことがない)です。

2022年9月17日土曜日

業績分析: 任天堂

来月(2022.10)任天堂の株が31年ぶりに分割されます。という訳で「安くなるなら買おうかな?」と思っている方向けに任天堂の業績を分析してみました。

株式の売買を勧めている訳ではなく、任天堂の株なら興味あるけど株ってよく分からない >< という方の売買判断の一助になればと思い書いてみました。

【データ】

【経営分析】

1999年〜2022年までの売上、営業利益、経常利益、当期純利益の偏差値をグラフ化してみます。

経営上プラスのインパクトがある商品をだいたい10年スパンでリリースしていることが、経営成績にハッキリ現れています。(株の買い時はちょうど2005年、2015年でした...買ってないけど)

【参考】(12月末日の株価終値)

  • 1999: ¥16,830
  • 2000: ¥18,250
  • 2001: ¥22,700
  • 2002: ¥11,050
  • 2003: ¥10,060
  • 2004: ¥12,780
  • 2005: ¥14,290(買いシグナル)
  • 2006: ¥30,900
  • 2007: ¥66,500(ピークアウト)
  • 2008: ¥33,750
  • 2009: ¥22,190
  • 2010: ¥23,820
  • 2011: ¥10,540
  • 2012: ¥9,070
  • 2013: ¥14,010
  • 2014: ¥12,605
  • 2015: ¥16,755(買いシグナル)
  • 2016: ¥24,540
  • 2017: ¥41,190
  • 2018: ¥29,285
  • 2019: ¥43,970
  • 2020: ¥65,830(ピークアウト)
  • 2021: ¥53,650

理想的には偏差値が右肩上がりになっている状態で、前回の暗黒時代末期(2015年)から現在までの短いスパンで見ると右肩上がりではありますが、2021年→2022年で若干ダウンしているので、テクニカル的な視点では今は買うのを少し警戒するタイミングです。

ただし、前回のヒット(DS+Wii)と今回のヒット(Switch)では利益構造が異なることに注目すべきかもしれません。売上、営業利益、経常利益、当期純利益の偏差値の並び順がキレイに逆転してます。

  • 【DS+Wii】売上 > 営業利益 > 経常利益 > 当期純利益
  • 【Switch】当期純利益 > 経常利益 > 営業利益 > 売上

2021年3月期と2022年3月期の偏差値低下の具合を見ても、売上と営業利益の低下と比べて経常利益と当期純利益の低下が緩やかです。

【財務&投資】

任天堂は無借金経営をしていることで有名ですね。

実際過去の決算短信で、「当社は、会社の成長に必要な設備投資等を内部留保資金でまかなうことを原則とし、将来経営環境の急激な変化への対応や競争に勝ち抜くため、財務面での健全性を維持しつつ、株主の皆様への 直接的な利益還元については、安定した配当を継続しながら、各期の利益水準や配当性向をも勘案 して実施することを基本方針としています。」と説明されていました。(いつの頃からか書かれなくなりましたが)

という訳で、現金残高と投資CFの推移を見てみます。

投資CFがプラスの年がチラホラありますね。財テクかな?と思って決算短信をチェックしたところ、有価証券の満期償還による利益とのことでした。つまり、財テクですね。

本業の投資(設備投資、開発投資)と財テクは分離して欲しいです...

ちょくちょく財テクで稼げているおかげで営業利益が赤字でも当期純利益が黒字という年もあったので、投資ファンドとしても優秀な側面があるようです。

その財テクのノイズで本業のお金の流れが少し分かり難くなっていますが、2020年3月期と2021年3月期に大きめの投資CFが発生していて、2022年3月期に収束していることから、新しいゲーム機の開発中ですかね...過去の投資CFの流れと比較してみると、3DSが発売される5年前の投資CFの動きと似ている気がするので、この新作ゲーム機(?)の発売は2025年ぐらいかな?と予測してます。

過去のゲーム機の開発投資期間を3〜5年程度と予測すると概ね、

  • DSとWii: 無理の無い範囲で予算を投じて開発(メガヒット)
  • 3DSとWiiU: ガッツリ予算を投じて開発(ヒットせず)
  • Switch: そこそこの予算を投じて開発(ヒット ※Wiiほどではない)

というように見えます。

2008年に約1兆円あったキャッシュ残高は、2016年には2500億円近くまで減少しています。つまり、だいたい年1000億円ぐらいづつライフが削られる計算なので、Switchがヒットできなかったら(潰れないにしても)無借金経営を維持できず、お金を持っている外資(Appleとか?)の傘下になるなど、大きく状況が変わっていたかもしれません。

とりあえず、今は1兆円キープできているので、10年ぐらいは戦える余力がありそうです。

10年でプロダクト・アウトが成功すればセーフ、できなければアウト。

仮に任天堂の株を買う場合、「ギャンブル要素が高い」ということを念頭に入れ、一点買いは避けたほうが良いかもというのが私見です。

...というより、無借金経営できる体力がある(=外部からの資金調達が不要)なら、そもそも上場すべきではないと私は思っていて、何で上場しているのか昔から謎だったのもあって少し調べてみたのですが、結局謎は謎のままでした。

2022年9月15日木曜日

決算短信の読み方

基本的に投資はインデックス系の投資信託かETF推奨です。ただし、不景気局面では含み損が続く期間を許容する胆力が必要になります。最終的に上がってくれれば問題ないですが、確実に最終的に上がる保障は無いので、そういったリスクを許容できる範囲で定期・定額(ドルコスト平均法)で積み立てていくのが良いと思います。

その上でまだ余裕資金があるなら、思い切って個別株も組み入れてリスクヘッジするのも悪くはないというのが私見です。

個別株を購入する時、対象企業のB/S(資産)、P/L(損益)、C/F(お金の流れ)などの情報を決算短信からチェックします。

決算短信には色々な数値が載っていて全部重要な数値ですが、とりあえず売上高、営業利益、経常利益、当期純利益、1株あたりの当期純利益、総資産、自己資本比率、投資キャッシュフローだけ通期(Q4)のみチェックしておけば大丈夫だと思います。

  • 売上&利益(P/L)→ 会社が儲かっているかどうかの判断指標
  • 総資産と自己資本比率(B/S)→ 会社が潰れやすいかどうかの判断指標
  • 投資C/F → 会社が成長できるかどうかの判断指標

そして、以下のような業績の銘柄は、投資不適格として弾きます。

  • 売上が右肩下がり
  • 利益が右肩下がり
  • 資産が右肩下がり

という訳で、結構面倒ですが決算短信からスプレッドシートにそれらの数値をひたすら転写していきます...(面倒だから必要な数値情報を規定書式のJSONで公示するルールにして欲しいところ)

※上図はとある銀行の業績なので、売上高=経常収益、利益=経常利益

一通り転写できたら、売上高と利益の偏差値を求めます。

【例: B2の偏差値をC2で求める場合の計算式】

=(B2-AVERAGE(B$2:B$9999))/STDEV.P(B$2:B$9999)*10+50

上記の式をC2へ入力すれば、あとはオートコレクトやコピペで簡単に全部入力できます。

偏差値を求めることで、「売上が良かった年」「営業利益が良かった年」「経常利益が良かった年」「当期純利益が良かった年」などが(※もちろん、逆に悪かった年も)ひと目で分かるようになります。

そして、その年の数値が「何で{良かった | 悪かった}のか?」という情報を決算短信の概況テキストから調べます。

例えば、日立製作所の決算短信から営業利益の偏差値を(かなりザックリと)分析すると下図のようになります。

観測期間の中間点が偏差値50、中間点より過去が50以下、中間点より未来が50以上という右肩上がりの状態であることが望ましいです。

日立製作所の場合、金融危機でこの観測期間内で最悪の営業利益(損失)を計上してますが、そこから順調に回復できていて、コロナショックの業績反映タイミングで一瞬落ちましたが、それでもこの観測期間内で偏差値50以上をキープできています。要するに、とても優秀な企業だということが分かります。

もちろん、それでも株を買えば必ず儲かるものでもありませんが。

客観的な経営成績のインプットができたらその企業の 過去の中期経営計画の評価 を行います。それを踏まえた上で、将来に向けた中期経営計画の妥当性を評価した上で「まだ成長できそうか?」を予測して、「成長しそうだ」と思ったら株を買います。

日立の場合はグローバルロジックの買収で2022年3月期に1兆円を超える投資C/Fが発生しているところが直近では最大の焦点ですね。グローバルロジックはだいたい1兆368億円ぐらいらしいので、他の投資を殆ど(100億ぐらいしか)してないから、ほぼ1点張りですね...男前だなぁ(円安拡大前なので結果的に投資タイミングとしてはベストでしたが大丈夫なのだろうか)


最近はIR資料として凝ったパワポのレポートとかを頑張って作っている企業が多いですが、何故そのような無駄な事にコストを掛けているのか理解できません。

決算短信だけで十分だと思います。

パワポ資料は企業サイドにとって都合が良い情報を強調するなど、変なバイアスが掛かっているケースが多いので、読むだけ時間の無駄...とまでは言いませんが、実態的な業績情報をチェックした上で参考程度に読むぐらいで良いと思います。(経験上、そこまで詰めて読むと、得られる有益な情報は無いケースしかなかったので、変に情報分散するよりは決算短信で情報を一元化してくれた方がレビューしやすくて助かります)

なお、パワポ資料は頑張っている割に決算短信は過去5年分しか開示していない...といった企業は基本的にギャンブル性が高いから、そういった企業も投資不適格企業として弾きます。

多分、もっとカジュアル(ラジカル?)な判断をした方がリターンは高くなるので、年間30%以上とかの爆益を叩き出したいスタイルの投資家向けではありません。リターンが高い運用はその分リスクも高いので、景気連動で業績がよくなるハイリスク企業にはインデックスで広く浅く張っておき、個別株をやるならこれぐらい硬めのバランス感覚が良いかなと。

2022年9月10日土曜日

Quiet Quitting

最近「QQ: Quiet Quitting (静かな退職)」という言葉が米国のZ世代の間で流行っているとか。

Z世代よりもう少し上のミドル世代(30代〜40代)では、少し前に FIRE; Financial Independence, Retire Early (経済的独立と早期退職) といった言葉が流行ってました。(それで勘違いしてレバナスとかにどーんと突っ込んで派手に散ったりする人が居たりして少し落ち着いた感があります)

  • FIRE = 投資運用リターンのみ(目安として目標年率4%前後)で生活する
  • QQ = 必要以上に働かない

どちらも要にするに 働きたくないでござる という事ですね。

良い傾向だと思います。

そもそも、何故働く必要があるのか?

この問いに対する回答は、大きく分類すると「趣味」と「必要に迫られて」の2種類があり、後者は3パターンに細分できるというのが私見です。

  1. 趣味で働いている
  2. 必要に迫られて働いている
    1. 豪華な暮らしがしたいため
    2. 生活費を捻出したいため(働かないと生活できない)
    3. 奴隷であるため(働くことが強制されている)

日本の場合、生活保護の規定があり、米国の生活保護制度(SSI)と比べれば判定基準が緩いので、質素な暮らしで問題無ければ 2-2 は除外できます。

ただし、質素な暮らしが出来るのは一種の才能かもしれませんが。「質素な暮らし」とは具体的には「生活に必要な最低支出以内での暮らし」です。例えば、東京23区住まいの単身世帯なら、家賃5万円/月、光熱水費1万円/月、食費3万円/月で月間最低支出9万円ぐらいで、物価高騰分のバッファを見て月間10万円ぐらいが最低ラインで、2〜3万円/月程度の遊興費も入れることができたと思われます。収入が月間最低支出(※具体的な金額は確か自治体により異なる筈)を下回っていたり、そもそも就労できない心身状態であれば、原則的には生活保護を受けることができます。

また、現代の日本に限らず大多数の国には奴隷制度は殆ど無いので、2-3 についても除外できるケースが大半だと思われます。

つまり、日本では究極的には、

  1. 趣味で働いている
  2. 豪華な暮らしがしたいため必要に迫られて働いている

の二者択一の筈です。

そして、だいたいの人は必要に迫られて働いているものと考えられます。

米国も多分同じような状況だと思われますが、米国は日本よりも大胆に弱者を切り捨てる社会システムなので、必要に迫られて働いている人の比率は日本よりも高いかもしれません。

生産性の観点では 1>2 なのは明らかなので、より多くの人々が趣味で働いている状態が理想的です。

趣味で働く手段としては、

  • 趣味を事業化する
  • 趣味と合致する業務内容の企業に就職する
  • 会社に洗脳されて働くことが趣味化する

という3通りの方法が考えられます。

1点目の「趣味を事業化」は、昨今では事業化自体の難度は低いですが、それだけで生活費の全額を賄おうとすると結構難度が高いです。運ゲー要素も結構強いです。

2点目の「趣味が合った会社に就職する」も、そこそこ難度が高い運ゲーだと思います。また、運良く自分の趣味と合致する業務ができる企業に就職できたとしても、長くても40年ぐらいしか働くことができないので、老後のことも考えると企業に依存しきるのは得策ではありません。

3点目は時代錯誤かなと。例えば、頑張ったら謎のバッジが贈られたり無意味な肩書を与えたりみたいな手法は古くから存在しますが、昨今ではSNSによる監視や、ともするとすぐに「ブラック起業」と叩く風潮もあるので、使用者側にとってもリスキーな手段だと思います。

消去法で、「趣味を事業化」が一番筋が良いように見えます。

  • 生活費は FIRE で捻出しつつ、趣味の事業化に励む(資産がある人向け)or
  • 私企業に 趣味かQQで働きつつ、副業で趣味の事業化に励む(資産が無い人向け)

あたりが最適解かなと。

そうなると、資産が無い若い世代には QQ が刺さりやすく、そこそこ資産が有る人が多いミドル世代には FIRE が刺さりやすいということになります。

FIRE や QQ が持て囃されている昨今の風潮は、人類が生産性を最適化しようとする過渡的な段階で顕在化した事象なのかもしれません。

合理的ではないものを作りたい

ここ最近、実機版の東方VGSの開発が忙しくて、東方VGSの曲追加が滞っています。 東方VGS(実機版)のデザインを作りながら検討中。基本レトロUIベースですがシークバーはモダンに倣おうかな…とか pic.twitter.com/YOYprlDsYD — SUZUKI PLAN (...