イーロン・マスクのプライベートカンパニーとなったTwitterがどのように変わるのか、一種のエンターテインメントとして興味深く注視しています。
主だった動きとしては、
- 経営陣を刷新(取締役はイーロン・マスク1名体制)
- 従業員の約半数を解雇
- ハードコアな働き方改革(Twitter2.0に向け週80時間労働)
- 収益の柱を変更(広告→サブスク)
あたりでしょうか。
かなりの荒療治なので、当面は荒れるだろうとは思います。流石、出社初日に満面の笑みで洗面台を持ち込む変人のやることは違います。(everything but the kitchen sink...ってことかな)
everything but the kitchen sink(流し台以外は全て)というのは英語圏のユーモア表現で、戦争の物資不足の時にありとあらゆるものが武器に転用されたものの、陶器製の流し台は使われなかった(
参考)ことから「ありとあらゆるもの」を意味する慣用句らしいです。つまり、kitchen sinkすら持ち込むということは「例外なくなんでもやる」という意味ではないかと考えられます。
Twitter社内は中々楽しそうなことになっていたようです。
上記の方は現Twitter社員(本稿執筆時点でも米Twitterに在職)で、元livedoor社員というすごい経歴の方のようです。
上司ガチャのレアリティがヤバイw
世界広しといえど、ホリエモンとイーロン・マスクの両方を上司に持った経験がある(?)エンジニアは稀かもしれません。
現在の社内の様子も楽しそうで何より。
イーロン・マスクのハードコアな働き方改革には異論を唱える人も結構居るかもしれませんが、実際に働いている人々が楽しいならそれで良いのではないかというのが私見です。
コンプラ的な問題はさておき、私なら好きじゃない仕事(奴隷労働など)は週20時間でも苦痛だし、好きな仕事(趣味労働 ※
参考)なら週80時間どころか週120時間でも全然余裕です。これを行政で一律に線引しようとすると弱者保護が優先されるので、どうしても「コンプラ的には問題あり」になってしまうので、趣味人に厳しい(=生産性の低い)職場になってしまいがちです。日本で趣味労働をしたければ経営者になれば良いだけの話しですが。
Twitterがこの先どうなるかという点ですが、「上手くいく」か「潰れる」の二者択一だと思います。要するに分かりません。(一般的な会社にはこれ以外にも「ジリ貧」という第三の選択肢があるのですが、現在のTwitterには多分それが無い筈)
ですが、ハードコアな働き方改革による従業員離れ(人材不足)でダメになることは無いと思います。もちろん、当面は荒れるのはやむ無しの荒療治なので、一時的にシステムが不安定になったり、ちょっとした大事故が起きたりはするんでしょうけど。
従来のビジネスモデル(広告への9割依存)への退路は大胆に断ち切っているように見えるので、サブスクへの転換が成功しなければサクッと潰れる(サービス終了する)ものと思われます。
ソーシャルメディアサービスの商売的な意味での負けパターンは、
①そもそも集客ができなかった
②集客はできたがマネタイズに失敗した
という2種類に分類できます。
①のハードルがかなり高いですが、②もサービス化時点から戦略に組み込んでいない場合はかなり難儀です。
例えば、TikTokは①が成功していますが、②が成功しているようには見えません。テレビ等の動画配信プラットフォームはプロパガンダ用のツールとしてとても有用なので、そもそも②は考えなくても良いのかもしれませんが。
もっとも無難な②の手段が広告だと思われがちです。
しかし、売上の9割を広告に依存していた従来のTwitterの場合、過去10年の決算で黒字化できたのは2期しか無かったようです。Twitterレベルで集客が上手くいっていても広告では上手く行かなかったと言えるので、広告は銀の弾丸ではありません。
加えて、広告での収益化は基本的に好景気下であることが前提条件になります。過去20年の米国経済は絶好調だったので広告ビジネスも好調だったものと思われますが、インフレ退治のためFRBが急激な金融引締をした影響で、米国経済はしばらく景気後退する可能性が高いものと思われます。そして、景気が悪くなればプロモーション費用などの変動費が真っ先にカットされるので、広告ビジネスには冬の時代が到来する可能性が高いと考えられます。
そこで、収益の柱を広告→サブスクに転換しようとしているものと思われます。
「SNSのサブスク」といえばmixiでの先行事例がありますね。
mixiの有料会員特典としては、広告が表示されなかったり、日記が装飾できたり、日記の容量が上がるなどがあるようです。
拡張子 .pl のウェブサイトを久々に見ましたw(この時点で限界集落感があります)
色々とゴチャゴチャしていますが、日記関連の特典プライオリティが高いので、mixiの中核コンテンツはどうやら「日記」(ブログ)だったようです。そして、日記(長文)が中核コンテンツだったことが、mixiがスマホ対応に失敗した原因だと考えられます。
スマホ対応に成功できるSNSは、写真(インスタグラム)や短尺動画(TikTok)など、スマホでの情報発信(コンテンツ生成)がし易い特徴にすることが基本で、Twitter(短文)も偶然このパターンに該当します。
サブスクの特典設定の基本は、mixiと同様「中核コンテンツ」に対して紐付けた何かにするべきだと考えられますが、Twitterのサブスクによる特典として(バッジ以外に)何か良いアイディアは無いものか?と考えてみたのですが、中々難しい...
Twitterはどちらかといえば瞬間的なやりとりに特化していると思われるので、サブスク未加入(非ログインを含む)ユーザーは全ツイートを直近1年分しか見れないとかかな?(確かSlackの無料版がそんな感じですね)
どの程度のサブスク会員を確保する必要があるかで大分話しが変わってきそうです。
かなりザックリと計算すると、従業員の平均給与等を月間2万ドル(280万円)/人で最終的に1,000人残るものとして、オフィスやサーバー等の固定費が月間20Mドル(28億円)ぐらいなら、損益分岐点は月40Mドル(56億円)だから、月額$8のサブスクなら500万人ぐらいが損益分岐点ということになります。
TwitterのMAUは3.3億人ぐらい(2019年実績)らしいので、アクティブユーザーあたりの有料会員CVR1.52%で損益分岐点を達成できることになります。
CVRの目標値としてはそんなに高くないように思われるので、それぐらいならバッジだけでも大丈夫なのかな?
多分、大きなマネタイズはTwitter2.0(多分フィンテック?)で目指すものと思われるので、サブスクでは大きく稼がなくても良くて「とりあえず損益分岐点をクリアできればOK」ぐらいのノリではないかと勝手に想像してます。