2022年4月25日月曜日

「時代親父とハイカラ少女」を配信しました

東方VGSで「東方星蓮船」より雲居一輪&雲山のテーマ「時代親父とハイカラ少女」を配信しました。(Pull Request

原曲はコチラ(Apple Music)

【元ネタ確認】

時代親父(雲山)とハイカラ少女(雲居一輪)のテーマということで、東方Projectではかなり珍しい男性キャラクターを含むテーマ曲です。旧作後〜星蓮船の時点では森近霖之助以来、史上2人目のイラスト付き男性キャラクターとのことです。妖怪の性別は不詳かもしれませんが、公式に「親父」という男性名詞が付けられているので、男性という解釈で良いかと思います。

雲山は見越入道という妖怪が元ネタで、人間だった頃の一輪となんやかやあり、天寿を全う後に妖怪化した一輪とコンビで行動するようになったとのことです。(参考: ニコニコ大百科

原作者様コメント

雲居 一輪&雲山のテーマです。

楽しいキャラだったので、曲も楽しげで古くさい感じにしました。

馬鹿っぽかったり、時折センチになったり素敵です。

雲山は雲で出来ていますので、同時に二人以上出てきても同時に

腕が四本出てきても気にする必要はありません。眼力フラッシュ!

完全に天津飯w

天津飯良いですね。歪みない理想の男性像。ちなみに個人的に好きな天津飯の必殺技は排球拳です。(Dr.スランプ感がある)

この曲の表題の「時代親父」については容易に理解できるのですが、もうひとつの「ハイカラ」については完全にノーヒントなので「どの辺がハイカラ?」と長年謎でした。今回、楽曲を解析してみてようやくその意図が分かったような気がします。

ちなみに、ハイカラ(High Collar)は直訳すると「襟が高い(服)」という意味で、まだ着物文化だった明治時代頃の日本で洋服を着ているお洒落な人を指す言葉でしたが、洋服が当たり前になった現代では死語になったとのことです。ただし、ここ最近襟付きの服を着る機会が全く無くなったので、一周回って現代でもお洒落な人を指す言葉として通じるかもしれません。

以下、楽曲の解説です。

【全体構成】

  • 4-7構成
    • 4つのモチーフを7パートで構成
    • A→B→A'→B'→C→D→A''
    • ループ基点はB
    • モチーフの解釈についての補足
      • 便宜上4としています(ミニマムでは多分2)
  • 主調: ロ短調(H-Moll)
  • テンポ: 168
  • 拍子: 4/4
【A】(H-Moll→A-Moll→H-Dur)

4小節の短いフレーズです。

メインメロディーはリード系楽器で次のように演奏しています。

以下のように転調してます:

  • 1小節目: ロ短調
  • 2小節目: イ短調(短7度転調: -2)
  • 3〜4小節目: ロ長調(長7度転調: -1)

短7度転調は曲が盛り下がる効果があるため、使われる事が珍しい転調とのことです。有名どころではドラゴンボールZの初代オープンニング(CHA-LA-HEAD-CHA-LA)のサビに入る時に使われているようです。Apple Musicで確認してみましたが、音の響きだけ注意深く聴くと確かに盛り下がっていますね。(歌込みだと胸がパチパチするほどスパーキン!な展開なので気付き難いですがw)

長7度転調は、曲のトーンが下がる効果がある転調ですが、ここで長調になっているのであまりそういう風には聴こえないかもしれません。

3小節目からピアノのパッセージが入ります。

ベースはこんな感じです。

あとは、歪んだギター音が鳴ってますね。

ディストーションの聴音は相変わらず苦手です^^;

今回の曲はメイン(雲山)とサブ(一輪)の絡みが重要だから各2ch割り当てる必要があって、そして絶対に外すことが出来ないベース1chとドラム1chでチャンネルがカツカツなので、大半のギターパートは省略している所が多いです。

VGSの音源特性でD.GT音の再現が難しいという事情もあって、D.GTは普通のポップスだと割と主役級のポジションですが、VGSでは一番不遇な楽器かもしれません。稀に奇跡的に上手く入れられることもあったりしますが。(直近で上手く入れることが出来たと思っているのは地霊殿のラストリモート)

【B】(H-Dur→G-Moll→Haikara→F#-Moll→F#-Dur)

このパートの解説はかなり長くなるので、以下4小節毎に分けて解説します。

(1 of 4 / 5〜8小節)

前パートから引き続きロ長調で2小節単位のモチーフを提示します。

リードがメインメロディーでピアノがサブメロディーのようです。イメージ的にはメインが雲山、サブが一輪っぽさが感じられます。

初っ端からピアノの発狂具合が良い感じだったので、内声パッセージを加えるなどしたアレンジを少しだけ入れてみました。

(2 of 4 / 9〜12小節)

半音下(-1)のト短調に転調してモチーフを展開します。

最後の1小節(12小節目)は転調しているようなしていないような...

B♭が♮でAが♭になっているように見えます。(下り音階かな?)

上記の音階に一致する調(BがHになっている♭付きの調)は存在しません。

なので、これは転調ではなくスケール(音階)の変化だと考えられますが、Wikipediaの音階のページの音度記号(スケールディグリー)で表記すると「1 ♭2 #3 4 5 6 7」です...何だコレw

そもそも、私は音階に精通している訳ではないです(普通に長音階、短音階、和声的音階、旋律的音階、ブルーノートスケール、ニロ抜きなどの基本的なヤツしか知らないです)が、♭と#が同時に入るスケールは多分無いと思うので、恐らく楽典的な解釈が出来ない音階だと思われます。なるほど、すごくハイカラだw

こういう楽典的な解釈が出来ないケースに遭遇した時は、シンプルに耳コピがミスっているというオチが多かったりするので、このパートは普段よりも丁寧に繰り返し聴いたのですが、どうやらコピーミスではなさそうです。

ただし、自分の聴音力に絶対の信頼を寄せている訳ではない(^^;)ので、ニコニコ動画にアップされている猛者達の耳コピも幾つかチェックさせて頂いたのですが、(細部の違いはありましたが)少なくとも B♮ & A♭ の部分は合っているようです。

マイナー・スケールとして見ると規則性が一見分かり難いですが、メジャー・スケールとして見ると、先頭(1st)が#、末尾(7th)が♭になっているので、スケールサイズが全音1つ分小さい形になります。

メジャー・スケールのディグリー表記は「#1 2 3 4 5 6 b7」ですね。

ハ長調なら「ド# レ ミ ファ ソ ラ シ♭」です。

音の響きとして不自然ではなく、独特なエキゾチックな響きがあるスケールなので、実は既に存在するスケールなのかもしれませんが、その辺の知識が無いので ハイカラ短音階(Haikara Minor Scale)と呼ぶことにします。

華のさかづき大江山でも似たようなスケールがあったかも?記憶力には結構自信がある方だと過信してましたが、ちゃんと文書に記錄しておかないとダメですね...

念の為、Twitterで情報を求めてみました

あ...今ツイッター見返して気づいたのですが、ツイッターで呟いた当時、この次の4小節では増4度転調(+6)をして嬰ハ短調になると思っていたのですが、よくよく耳コピを進めてみたら # が1つ少なかったので、半音下転調(-1)して嬰ヘ短調でした...お恥ずかしい><(それでも私はTwitterには編集機能は要らない派です)

(3 of 4 / 13〜16小節)

嬰ヘ短調で同モチーフを更に展開します。

(4 of 4 / 17〜20小節)

引き続き嬰ヘ短調でフィニッシュ。

最後の20小節目の後半1/2拍は3の音(A)が#になっているので、短3度上(+3)の同主調転調で嬰ヘ長調になっています。

【A'】(H-Moll→A-Moll→H-Dur)

  • Bパートのリード音の続き(B=嬰ヘ長調のサブドミナント)をフェルマータ
  • 上記1点以外はAと全く同じ

【B'】(H-Dur→G-Moll→Haikara→F#-Moll→D#-Moll

最後の1小節(40小節目)以外はBと全く同じです。

40小節目は最初から嬰ニ短調(※嬰ヘ長調ではない)の半終止(ドミナント)になります。

【C】(H-Moll)

ここから曲の雰囲気がガラリと若干変わります。

まず、ピアノのアルペジオとベース(とギター)の和音で前半8小節(41〜48小節)で(ただならぬ雰囲気が漂わせながら)演奏します。8小節目からリードのメロディーが入ります。とてもハラハラする展開な気がします。

このアルペジオはC後半/Dパートで展開されるモチーフ(メインテーマ)の原型になっています。

この曲では、ピアノフレーズは全般的に一輪をイメージしていると思われるので、その点を踏まえて少し深読みして解釈すると、このパートでは元々人間だった一輪が怪異化していく過程(回想)を表現しているのかもしれません。

次の8小節(49〜56小節)では、前半で提示したアルペジオを展開したリードとピアノのメロディーを演奏します。


「この部分のピアノはもっとヒステリックなイメージではないか?」と、いつものように魔が差してしまったので、VGS版ではピアノ部分を少しだけ超絶技巧にしてみました。

以下、VGS版のピアノ譜です。

【D】(H-Moll)

引き続きロ短調で展開主題を演奏します。

最初の8小節(57〜64小節)は、単音で次のような形です。

次の7小節(65〜71小節)は、高音のサブメロディーが加わります。

したたかにシンコペーションしている楽譜だと、Logicが良い感じに譜面出力してくれないので、若干手書き修正してます^^;

カデンツは次のA''パートに重ねる形になります。

【A''】

  • Dパートのリード音の続き(H=ロ短調のトニック)をフェルマータ
  • 上記1点以外はAと全く同じ


2022年4月20日水曜日

「スカイルーイン」を配信しました(東方VGS)

東方VGSで「東方星蓮船」より3面のテーマ「スカイルーイン」を配信しました。(Pull Request

原曲はコチラ(Apple Music)

【元ネタ確認】

Sky Ruins = 空の遺跡・・・ラピュタかな?

原作者様コメント

3面のテーマです。

軽快さを失わずに、ちょっと謎めいた雰囲気を出してみました。

空中に浮かぶといえばやはりラピュタですが――のくだりは、もうやりましたね。

では廃墟といえば……やはりラピュ

やはり、ラピュタw

全然関係ありませんがジブリ繋がりで、以前とある施設のトイレで宮崎駿先生とエンカウントしたことがあります。私はどんな有名人を見ても無反応を装いますが、この時ばかりは感激を抑えるのに苦労しました。(もちろん、無反応を装いました)

以下、楽曲の解説です。

【全体構成】

  • 構成: 4-8構成
    • 4つのモチーフ(A/B/C/D)を8パートで構成
    • A, B, C, A', D, B', C', A''
    • メインテーマ: C
  • テンポ: 基本156(Dのみ152, 154, 156)
  • 拍子: 4/4
  • 主調: ホ短調(#が1つ)

【A】part 1(テンポ156/E-Moll)

まず、3小節の短いフレーズ(第1モチーフ)をピアノで提示します。

4小節目からがループ基点になります。

上図モチーフを展開した2セット(下りと上り)のモチーフを2回繰り返し、1回目の終わり(7小節目の4拍目)からリードが加わります。

8〜11小節目(2回目)は、上記と同じ楽譜をピアノとリードのユニオンで演奏します。

【B】part 2(テンポ156/E-Moll→D#-Moll)

リード楽器で第2モチーフを演奏します。

13小節目の最後1/4拍から15小節目まで半音下転調(-1)して嬰ニ短調(#が6つ)になります。

16小節目から再びホ短調に復帰(+1)して、同モチーフの展開を演奏します。最初と同様、17小節の4拍目から半音下転調(-1)して、最後にパートCへの繋ぎが入ります。

今回の例によって、ニコニコ動画やYouTubeにアップされている耳コピ動画の幾つかとクロスチェック(答え合わせ)をさせて頂いたのですが、Cパートへの繋ぎを上記(高音: BA#>C#)のようにしていない方が多かったかも?(多分、高音: G#A#B>C#派が優勢)

この部分は、(初見でBA#>C#と聴こえたというのも勿論ありますが)Cパートのモチーフと形状を合わせた方がキレイに繋がると思ったので、例によって自前の耳コピの方を採用しました...が、相変わらず自分の耳コピには自信がありません^^;(deCoda買った方が良いかなぁ...)

【C】part 3(テンポ156/D#-Moll)

嬰ニ短調でこの曲のメインテーマ(第3モチーフ)を演奏します。

楽器はリード楽器(高音2音)とピアノ(低音1音)のユニオンです。

この第3モチーフですが、第2モチーフの展開という解釈でも良いかも?

【A'】part 4(テンポ156/G#-Moll)

前パート(B)からサブドミナント転調(+5)した嬰ト短調(#が5つ)でAを演奏します。

その他の細かい変更点としては、メロディーの最初の1音だけが装飾音に変わっています。

その他の違いは...多分無いかなと思います。(この辺の判断にはあまり自信無いので、変化した感を強調するようにVGS版では軽いアレンジを入れて誤魔化しておきました^^;)

【D】part 5(テンポ152〜156/G#-Moll)

このパートは前半8小節と後半8小節に分けて解説します。

(前半8小節)

前パートから引き続き嬰ト短調のまま、リードでカデンツァのような即興的なフレーズを演奏します。

本パートのピアノ伴奏(※下図を2回繰り返す)は、以下のような形です。この伴奏が後半の主題になります。

※ロジックの譜面出力の仕様で高音が4分音符になってますが8分音符です

前半のベース(※下図を2回繰り返す)は裏拍のみ演奏しているジャジーな感じになっていて、とてもカッコイイです。実際にベースで演奏する時は表拍をゴースト・ノートにするとソレっぽくなると思います。

(後半8小節)

リードとピアノで前半のピアノ伴奏を演奏します。ただし、リード部分は低音部分が前半のピアノと若干異なります。また、最後の54小節目で次パート(B')への繋ぎが入ります。

ベースは前半と同じです。

(テンポについて)

更にこのパートではテンポが若干揺らいでいて、次のように変化しています。

  • 39〜40小節目 = テンポ152
  • 41〜46小節目 = テンポ154
  • 47〜50小節目 = テンポ152
  • 51〜54小節目 = テンポ156

メロディーがシンコペーションしてるので正確なテンポを拾えているかは若干自信ないです。

【B'】part 6(テンポ156/C#-Moll→C-Moll)

  • 前パートからサブドミナント転調(+5)した嬰ハ短調(#が4つ)に転調します
  • Bパート同様、途中で半音下転調(-1)してハ短調(♭が3つ)に転調します
  • Bパートを短3度下転調(-3)した形なので、Bよりもやや暗め(Bが廃墟外 → Dで廃墟内に進む → B'が廃墟内...というイメージかなと思われます)

【C'/Coda】part 7(テンポ156/C-Moll)

  • 前パートの終わりと同じ調(ハ短調)でCと同じフレーズを2回演奏します
  • Cパートを短3度下転調(-3)した形
  • 2回目の演奏時に発狂ピアノ追加

【A''】part 8(テンポ156/F-Moll)

このパートは、ハ短調からそのまま主調(ホ短調)にループした場合、+4の転調(長三度転調)で不自然な響きになってしまうので、繋ぎ用のパートですね。

  • 前パートからサブドミナント転調(+5)したヘ短調(♭4つ)で、Aの最初の7小節を演奏します(Aの最初の7小節を半音(+1)高い状態です)
  • ドラムが若干荒ぶっています
  • 7小節演奏後、半音下転調(-1)してAの4小節目にループします


2022年4月16日土曜日

東方Project二次創作物がYouTubeの著作権チェックでAPRA_CSのチェックに引っかかる件

東方地霊殿の全曲集(東方VGS版)をYouTubeで公開しました。

ところが、著作権チェックで「霊知の太陽信仰 〜 Nuclear Fusion」のみ「APRA_CSの権利侵害」となったので、現在、異議申し立て中です。

実は、「霊知の太陽信仰 〜 Nuclear Fusion」の単品動画もアップした時にも、同様に引っかかっていたので異議申し立てしたのですが、特に反論もなくAPRA_CSの申し立ては取り下げられました。

以前、東方永夜抄の全曲集をアップした時も竹取飛翔のみAPRA_CSのチェックに引っかかりました。

謎です...

同じようなチェックで既に3回引っかかっていて、恐らく今後も似たようなケースがあるものと思われるので、今回送信した異議申し立て文書とテンプレートを参考までに共有しておきます。

送信内容

申し立てがあった楽曲「霊知の太陽信仰  ~ Nuclear Fusion」は上海アリス幻樂団が著作権を有するゲームタイトル「東方地霊殿  〜 Subterranean Animism.」の収録楽曲であり、本著作物は原作者より東方Project二次創作ガイドラインを満たす限り二次創作動画を投稿することが許諾されています。


(東方Project二次創作ガイドライン)

https://touhou-project.news/guideline/


(動画投稿に関するガイドライン)

https://touhou-project.news/guideline_videoposting/


本投稿動画は上述ガイドライン記載事項を満たしているため、本件申し立ては無効であるものと思料します。

テンプレート

申し立てがあった楽曲「曲名」は上海アリス幻樂団が著作権を有するゲームタイトル「タイトル」の収録楽曲であり、本著作物は原作者より東方Project二次創作ガイドラインを満たす限り二次創作動画を投稿することが許諾されています。


(東方Project二次創作ガイドライン)

https://touhou-project.news/guideline/


(動画投稿に関するガイドライン)

https://touhou-project.news/guideline_videoposting/


本投稿動画は上述ガイドライン記載事項を満たしているため、本件申し立ては無効であるものと思料します。



2022年4月15日金曜日

「万年置き傘にご注意を」を配信しました(東方VGS)

東方VGSで「東方星蓮船」より多々良小傘のテーマ「万年置き傘にご注意を」を配信しました。(Pull Request

原曲はコチラ(Apple Music)

【元ネタ確認】

傘の付喪神(九十九神)ですね。

長年(99年)使われてきた多く(99種)の物には霊魂が宿り人をたぶらかすとされています。

年末煤払い(大掃除)という習慣には、物の付喪神化を防止する目的も含まれているようです。(参考

原作者様コメント:

多々良 小傘のテーマです。

傘って、一生のうちに何本買っちゃうんだろうか。

電車に置き忘れたり、出先での突然の雨にビニール傘を買ったり。

それはともかく、楽しげなのに急に気分が落ち込んだりするという

勝手な唐傘お化けのイメージで作りました。

そういえば、近所のコンビニの入り口にある傘立てに晴れている日でも大量のビニール傘が置いてあるのですが、あれはもしかして小傘を培養しているのだろうか?あと何年かすると小傘化するかもしれません。楽しみにしておきます。

以下、楽曲の解説です。

【全体構成】

  • 構成: 2-6構成(A→B→Cf→A'→B'→Ct)
    • 2つのモチーフを6パートで構成しています
    • A/Bパートでは2モチーフ1セットになっていて、後半部分が次パートに引き継がれて展開される構成になっています
    • モチーフ1をa、モチーフ2をbとした時の各パートの詳細構成は次のようになっています:
      • A(a1/a2)→ B({a2/b}x2)→ Cf(b)
      • A'(a1/a2)→ B'({a2/b}x1)→ Ct(b)
  • テンポ: 160(155〜165の範囲で一部テンポルバート)
  • 拍子: 4/4(Cfパートの3小節目以降のみ6/8)
  • 主調: 嬰ト短調(※本当はト短調)
【A】

嬰ト短調で最初のモチーフ(a1/a2)を提示します。

(モチーフa1)

(モチーフa2)

まとめて1モチーフでも良かったのですが、曲の構成上a2はa1の展開と解釈します。

Logicの楽譜出力の仕様上、楽譜の途中で調性を変えることができないので、8小節目にダブルシャープが付いてしまっていますが、この部分では半音下転調(-1)して変ロ長調(♭が2つ)に転調しています。

なお、ベースはスラップで1小節毎に付点二分音符で G#+D# → G#+D# → G#+D# →G#+D# → E+B → E+B → F#+C# → G+E♭ と演奏します。スラップだから聴き取りやすくて助かります。

また、出だしのテンポは155ですが、モチーフa2演奏時に155〜165の範囲でテンポルバートして、最終的に160で落ち着きます。

【B】

このパートでモチーフa2の展開と新しいモチーフb(この曲のメインテーマの原型となるモチーフ)を提示して繰り返します。

(モチーフa2・1回目)

変ロ長調から変ホ長調(ハ短調)にサブドミナント転調して、1小節づつ転調しながら演奏します。

  • 9小節目: E♭-Dur(変ホ長調: ♭が3つ)
  • 10小節目: E-Dur(ホ長調: #が4つ)半音上転調(+1)
  • 11小節目: F#-Dur(嬰ヘ長調: #が6つ)全音上転調(+2)
  • 12小節目: F#-Moll(嬰ヘ短調: #が3つ)短三度転調(+3)

(モチーフb・1回目)

12小節目の調性(嬰ヘ短調)のまま、この曲のメインテーマであるモチーフbを4小節だけ演奏します。

(モチーフa・2回目)

全音上転調(+2)して変イ短調から、1回目と同様に1小節づつ転調しながら演奏します。

  • 17小節目: A♭-Moll(変イ短調: ♭が7つ)
  • 18小節目: A-Moll(イ短調: #♭なし)半音上転調(+1)
  • 19小節目: C#-Moll(嬰ハ短調: #が4つ)長三度転調(+4)
  • 20小節目: E-Moll(ホ短調: #が1つ)短三度転調(+3)
変イ短調(全部の音を♭にするあまり使われない調性)が登場した為、若干時空が歪んでますね。「何か尋常ではないことが起こりそうな前触れ」みたいな雰囲気を醸し出しています。とてもハラハラします。大丈夫なのでしょうか^^;

(モチーフb・2回目)

20小節目の調性(ホ短調)のまま、この曲のメインテーマであるモチーフbを再度演奏して最後に次パートへの繋ぎの経過音を入れてメインテーマ(Cパート)に移行します。

【Cf】(偽C)

様々な不安要素を抱えながら、ついにメインテーマ始まったか?...と、思いきや2小節だけ演奏後、まるで蹈鞴(たたら)を踏んでいるようなリズムになってしまいます...何かに失敗してしまったのでしょうか。

なお、調性は前パートから短三度転調(+3)してト短調になります。

この多々良ステップは、3小節1セットで4回繰り返しますが、最後(38小節目)の1音だけG→A(Fメジャー)になり、「何とか持ち堪えた感」を演出しています。

【A'】(Aとの違い)

  • 調性は前パートから引き続きト短調(Aパートより半音低い)
  • テンポルバートしない安定した演奏
  • 今度こそ本気出す感

【B'】(Bとの違い)

  • 調性はロ短調(#が2つ)から(Bパートの最初のa2→bより半音低い)
  • a2→b を 2回繰り返さず1回のみ演奏してCパートへ移行
  • bにサブメロディー追加(確定演出?)

【Ct】(Coda)

前パートから半音上転調(+1)した嬰ト短調で、モチーフbを展開したメインテーマを4回演奏します。

(1・3回目)

(2・4回目)


2022年4月11日月曜日

「閉ざせし雲の通い路」を配信しました(東方VGS)

 東方VGSで「東方星蓮船 〜 Undefined Fantastic Object.」より2面のテーマ「閉ざせし雲の通い路」を配信しました。(Pull Request

Apple Music の原曲はコチラ

【元ネタ分析】

ニコニコ大百科によると 曲名は僧正遍照の歌「天つ風 の通ひ路 吹きとぢよ をとめの姿 しばしとどめむ」からか とのこと。

小倉百人一首に採用されている和歌ですね。

遍照(へんじょう)は平安時代の歌人です。816生〜890没)

桓武天皇の孫で親は大納言・良岑安世(よしみねのやすよ)という生粋のボンボンでしたが、850年に出家して僧侶になりました。

仮にBL小説だったとしても、こんなキャラ出したら設定盛り過ぎな感がありますが、更にイケメンだったようです。理解が追いつきません^^;

出家前後で歌の作風が変わったと言われ、出家前は情感あふれ、出家後は知的で客観的になったと言われてます。クリエイターあるあるですね。環境の変化はクリエイターの作家性に大きな影響を与えます。出家することが稀になった現代でも、例えば結婚前後で作風が変わる作家さんとかが割と多い気がします。

上述の歌「天つ風〜」は出家前の作品です。

雲の通い路」は、雲の上にある天上と地上の通路(天女専用)で、この歌を少しだけ意訳混じりに現代語訳をすると「天女マジぱねぇw 帰り道吹き飛ばしてもっと眺めていようぜ!」みたいな感じでしょうか。

パリピ怖い...

なるほど、だから閉ざしてしまったのか。

原作者様コメント引用:

2面のテーマです。

1面とは異なった浮遊感を出してみました。

妖怪がいるであろう雲の中を泳いでいます。

想像すると気持ちよさそうだけど、実際は寒いだろうね。

服が凍ったりするんじゃないかな。ガッツ足りるかなぁ。

浮遊感のある曲、好きです。

個人的に「浮遊感がある曲」で真っ先に思い浮かぶのはJ.S.Bachのパルティータ6番です。文章を書く系の作業や仕事中に、YouTubeがレコメンドしてくるバッハの曲を無限に聴く事がよくありますが、パルティータ6番が流れると思わず昇天しそうになり筆が止まります。(浮遊の種類が違っている感)

ちなみに、飛行機の巡航高度(だいたい33,000フィート)だと外気温はマイナス50度ぐらいだからすごく寒そうですが、ガッツがあれば大丈夫...なのかな?

この「ガッツ」というキーワードが割と好きでよく使っています。直近ではQiitaで書いたゲームギアのプログラミング解説の記事でも無意識で使ってました。

(引用)如何せん文量が多くついでに全部英語なので、読むにはかなりのガッツを要しましたが、何とか一通り読んで咀嚼した内容を本書で解説しつつ(以下略)

という訳で以下、この曲をアナリーゼした内容を3ガッツぐらい使って書きます。

【全体構成】

  • 構成: 2-5構成(2つのモチーフを5パートで構成)
    • A → B → C → A' → C'
    • C は B を展開したモチーフなので 3-5構成 ではなく 2-5構成 としてます
  • テンポ: 160(A,C)、151(Bのみ)
  • 拍子: 4/4
  • 主調: ハ短調

【A】

3連符を繰り返す2小節1単位のモチーフです。

前半8小節(2〜9小節)は単音で下図の2小節を4回、

後半8小節は低音を追加して4回繰り返します。

このパートは、雲の通路を通って天上に昇っていくイメージを表現しているものと思われます。ただし、このパート単体で見ると上昇というよりはフワフワと浮遊しているイメージですが。

先程、J.S.Bachのパルティータ6番を「浮遊感のある曲」として例示しましたが、トッカータのこの辺り(0:57)から1:15辺りまでが天に召されていく(昇っていく)ようなイメージなので連想したのかもしれません。(やや無理やり感がありますね^^; 単にパルティータ6番がものすごく好きだから聴いて欲しいというオタク特有のアレかもしれません)

当初、「3/4拍子で16分音符のリズムかな?」と判断して下図のように採譜していたのですが、それだとドラムのタイミングが取れないので「8分3連符の4/4拍子」と判断しました。

楽器毎に異なる拍子で1小節の長さを同じにすることも出来るので、メロディーは3/4とする解釈自体は間違いでは無いと思います。(Logicだと複数の拍子を同じタイミングで重ねる譜面形式では仕様上作れないので、採譜時は統一する必要がありますが...)

3/4拍子の場合、テンポ120(160 ÷ 4 × 3)でタイミングが合います。

理屈はよく分からないのですがテンポ120が一番拾いやすいです。

だから、当初聴いた時は「3/4かな?」と勘違いして採譜してまったのかもしれません。

テンポ120は特に特別な感じがするので何か根拠があるのかな?と思って調べてみたのですが、説得力のある根拠は見つかりませんでした。(普段、12進法の時間軸の中で過ごしているから慣れている...とか色々とありそうな気がするのですが)

あと、以下の4分音符のユニオンですが、これもメロディーですね。

後半は1オクターブ高くなります。

こういう場合、オクターブ上がる出だしで半音階グリッサンドを入れてアレンジをするのが私のアレンジの定番なので、今回もやっておきました。

【B】

Bは短い8小節の短いフレーズですが、ハ短調(主調)でこの曲のメインテーマを最初に提示する大事なパート(主題提示部)です。

また、このパートだけテンポを151に落としている点が特徴的です。

恐らく、このテンポ変化には表現上重要なセンテンスが込められていて「昇りきった感」(もう少し具体的に表現すると飛行物体が巡航高度到達時の加速度変化)を音楽的に表現しているのではないかと考えられます。

地霊殿の2面(渡る者の途絶えた橋)もそうでしたが、星蓮船も2面のテーマ曲もストーリー性に富んでいてアナリーゼしていて楽しいです^^

ですが、一般ウケするタイプの曲ではないかもしれません...どちらかといえば、かなり「通好み」な曲だと思います。実際、人気ランキングの初回登場時(第7回)は353曲中189位、第15回では529曲中313位なので、決して上位ではないけど常に真ん中よりちょい下ぐらいの順位を安定的にキープしています。

このテンポの変化は、表現上だけでなく音楽としても重要な意味があって、この曲のメイン主題(C, C')は基本的にこのメロディーを展開する形になっているので、ゆっくりした主調で演奏することで印象深く提示できる効果もあると思います。

【C】

このパート以降はずっとa tempo(160)です。

このパートでは、【B】を展開した8小節1セットのモチーフを2回演奏しますが、4小節毎に転調しているので、とても変化に富んでいるパートです。

①最初の4小節は、半音下(-1)のロ短調に転調

②次の4小節は、長三度下(-4)のト短調に転調

③次の4小節は、増4度(+6)の嬰ハ短調に転調

④最後の4小節は長三度下(-4)のイ短調(ハ長調)に転調

これは流石の私でも転調していることには気づきました。(4小節毎ということには最初気づかなかったけど^^;)

結構マニアックな転調を挟んでますが、対応するモチーフ箇所「①③」と「②④」の調性を見てみると、全音長(+2)転調の関係になっている(つまり、①②を+2した調性が③④になっている)ことが分かります。全音長の転調は、楽譜記号の#が2つ増えるか、♭が2つ減ります。つまり、ドミナント転調を2回したもので、これはとてもスタンダードな転調です。

また、最終的に主調のハ短調から、短三度下(-3)のイ短調(ハ長調)に同主調転調しています。これもとてもスタンダードな転調です。

転調しまくっていて長三度下や増4度といった扱いが難しい転調も挟んでいる(だから転調していることが初見で分かる)ものの、それでいて安定感があるように聴こえるのは恐らくこのためです。

不安定な中にある安定感(?)みたいなものにより、この曲のテーマである「浮遊感」が巧く表現できていると思います。

また、①〜④の各先頭の音のピッチを見ると「①↑②↓③↑④」と上下に動いているので、これもフワフワしている「浮遊感」の表現かもしれません。

【A'】

調性がハ短調からイ短調に同主調転調(-3)しています。

3連符のメロディーの楽器がリードからピアノに変わっていますが、単純に楽器が変わっただけでなくアルペジオのパターンも若干変わっています。

また、次パートがBではなくC(C')なので、最後の半小節でリードで繋ぎのメロディー(ソ>レソ)が入りつつ、アルペジオも3連符から8分音符(G-Dur)の昇り形状に変化します。

結構他の方の耳コピ譜も参考に見させて頂くことが多いのですが、この形で採譜されている方があまり居なかったので自信ありません^^;

当然ですが、自分のコピーが間違っていて治すこともよくあるので、ニコ動やYouTubeにピアノロール付きで動画をアップロードして頂いている方々には感謝しています。

あとは、このパートの最後でベースのスライドダウンが入ってますね。 

【C'】(コーダ)

Aの三連符を伴奏として追加しつつ演奏してフィニッシュです。

①最初の4小節はホ短調から始まります。

  • 【A'】の調性(イ短調)からドミナント転調の関係(曲の流れ)
  • 【C①】の調性(ロ短調)とはサブドミナント転調の関係(構成上の変化)

②次の4小節は、長三度下(-4)のハ短調(主調)に転調

  • 長三度下転調するのは【C②】と同じ

③次の4小節は、増四度(+6)の嬰ヘ短調に転調

  • 増四度転調するのは【C③】と同じ

④最後の4小節は、長三度下(-4)のニ短調に転調して最後の1小節だけ多分ニ長調に転調します。

  • 長三度下転調するのは【C④】と同じ

その後、付点四分休符を挟んだ後、先頭(ドラムソロ)からループします。

3連符の伴奏の形もまた微妙に変形しています。

なお、④がニ短調のまま終わってしまうと、ループした時にニ短調→ハ短調に全音下転調(あまりキレイではない転調)になってしまうので、最後の1小節はニ長調に転調(長調化)することで、半音上転調で次のループがキレイに繋がります。

【余談】

これまで120曲以上、東方Projectの曲でこういう(恐らくかなり独特な)アナリーゼを繰り返してきました。文章化するようになったのは星蓮船に着手してからですが、こうやってドキュメント化しながら作ると、記憶違いによるミスなどが減って良い感じかもしれません。また、コンテキストも深く調べるようになったので、曲に対する理解も深くなったかも?それが創作性に寄与できているのかは、ある程度の時間を置かないと判断できないので、正直まだ分かりませんが。

2022年4月6日水曜日

京都大学の耳コピAIについて少しだけ調べてみた

今朝配信した小さな小さな賢将の記事で少し触れた、京都大学で研究中の耳コピAIの研究内容について、少し興味があるので論文の概要だけ読んでみました。(本当は本編も読みたいのですが有料だし難しそうなのでちょっと迷っています...)

機械的に耳コピする場合、単音であれば音の周波数から音程を割り出すことが単純なプログラムで実現できます。しかし、だいたいの音楽は同時に複数の音が鳴っている(ポリフォニックな)状態なので、個々の音符の音程を機械的に割り出すこと(マルチピッチ検出)は容易ではありません。

複数の音を同時に鳴らすと、個々の波形のパルス符号を加算する形で合成された波形が最終的な波形の形状になります。

従来は、その合成波形をスペクトログラム因数分解で単音毎の波形に分離して解析するアプローチで、マルチピッチ検出を行う方式が一般的でした。

deCoda という耳コピ支援ツールがあり体験版を使ったことがありますが、これは恐らくスペクトログラム因数分解で波形分解しているものと思われます。体験版を使ってみた限り、肝心な音が込み入った複雑な部分とかは精度がイマイチ(音がクリアな部分ならDAWで原曲と合わせてピアノを弾きながらアナログ採譜した方が早いかも?)という印象です。VariSpeed等でピッチを変えずにスロー化した波形なら結構実用的かもしれませんが、それも結構手間が掛かるので「実用的か?」と考えると少し微妙なので製品版を買おうか悩み中です。(そんなに高いものではないですが)

ですが、この研究では、

  • DNN(ディープニューラルネットワーク)によるマルチピッチ検出
  • 統計モデルによるリズム量子化

の組み合わせにより、音声から正確な楽譜を起こすことを試みているようです。

DNNとは、多層ニューラルネットワークを用いた深層学習(ディープラーニング)の一種です。ニューラルネットワークとは、直訳すると「神経網」で、脳の神経回路の一部を模した数理モデルです。

余談ですが、今よく話題に挙がるAIは基本的にDNNが中心だと思われますが、個人的に「ニューラルネットワーク」のネーミングが原因で、「AIができること」について色々と変なミスリードが発生してしまっているような気がしないでもないです^^;(残念ながらドラ○もんを作るにはDNNとは別軸の深層学習が必要な気がします)

DNNを使うことで具体的に出来る事は「手作業による特徴抽出の自動化」です。例えば、スマホのカメラで写真の中から人物の顔だけ特定して矩形で囲ったりするヤツ(画像認識)とかがわかり易い例だと思います。

耳コピは「複数の音が混じっている中から個別の音を抽出する作業」なので、DNNとすごく相性が良さそうだから、AIによる完全自動化が可能だと考えられます。

論文によると、テンポスケール、拍子、小節線位置などの自動検出は誤検出が多かったものの、音符の採譜についてはかなり確度が高かったとのことです。つまり、リズム量子化の精度がイマイチだったものの、DNNによるマルチピッチ検出は精度が良かったとのことです。そこで、音楽知識から得られるピッチとリズムの非局所的統計量を定式化して、これらの大域的特徴の推定に及ぼす効果を検討してみたところ、リズム量子化についてもかなり改善されたとのことです。

つまり、この論文の研究テーマはリズム量子化がメインっぽいですね。

東方VGSの場合、音だけ拾えれば良くて完璧な楽譜は必要無い(編曲もするから結局楽譜も起こし直す)ので、マルチピッチ検出でピアノロールを生成できるようになるだけでも十分実用的なので未来が待ち遠しいですw(時間があればTensorFlowとか使って自力で作れたりするかも?)

「小さな小さな賢将」を配信しました(東方VGS)

東方VGSで「東方星蓮船 〜 Undefined Fantastic Object.」よりナズーリンのテーマ「小さな小さな賢将」を配信しました。(Pull Request

Apple Music の原曲はコチラ

今回はナズーリンのテーマ曲ということで、諸説ある「ナズーリンの元ネタ」についての新説を勝手に妄想してみます。

以下の内容は、Wikipediaでいうところの 独自研究 に相当しますので色々とご注意ください。(このブログのタイトルからお察し頂けるとは思いますが念の為)

ニコニコ大百科では、十二支のねずみが賢いというエピソードを元ネタの説として支持しているようです。なるほど。

私はナズーリンという名前の由来が気になりました。

ネズミ→ネズーミン→ナズーリンとする説もありますが、ナズーリン  نسرين (ペルシア語)は英訳すると wild rose(野ばら)という意味で、Wikipediaによるとイラン人女性の名前としてポピュラーらしいです。

日本の人名で言うところの優曇華...ではなく「花子」あたりでしょうか。

ナズーリンはスパイという印象が強いキャラクターなので、当たり障りのない名前ということで花子(偽名)なのか、または反乱軍のスパイの合言葉(のばら)をヒントにしているかは定かではありません。折角だらか私は、普通に考えればミスリードっぽいけど面白そうな前者「ナズーリン花子説」を支持してみます。

「ねずみ」+「花子」というキーワードと「星蓮船の体験版リリース(2009E)以前の文献」をヒントにリサーチしてみたところ、何故か村岡花子さん著の童話集(1938年出版)にたどり着きました。村岡花子さんは赤毛のアンの翻訳本などで有名な作家さんで、日本クリスチャンペンクラブの初代会長などもされていた方です。

その童話集の表紙にはかわいらしいネズミが描かれていて、何やらステッキと思しきものを持っています...ダウジングでもしているのでしょうか?

※童話集のスクショを貼って解説したかったのですが、この文献は2039年まで著作権が有効なので、残念ながらスクショ掲載はできません...(気になる方は国会図書館でタダで見ることができるので、そちらをご参照ください)

目次で収録タイトルを確認してみたところ、「ミッキー・マウスのお手柄」という中々攻めたタイトルが収録されてました(やぁ)。大雑把な粗筋としては、「日本在住の米国人メリー(幼女)が近所に引っ越してきた日本人(幼女)と友達になるためミッ○ーマウスの人形を使ったら上手くいった」というほのぼのしたストーリーでした。こういう文章を書けるようになりたいものです。

戦前の日本だとまだ外国人は珍しいので、外国人を見るとついつい「スパイかな?」と疑ってしまいがちです。もちろん、スパイじゃない人が大半ですが、有事中でなければスパイも一定数存在します。

童話集が出版された年(1938)は、満州国建国(1932)から6年後、太平洋戦争の宣戦布告(1941)の3年前なので、時期的にはABCD包囲網の真っ只中です。なので、史実上「有事リスクが極限まで高まった有事前」という、スパイが特に多かったと考えられる時期です。

ジョーカー・ゲームという人気のスパイ小説(2008年8月末出版)に、日本で諜報活動をする米国人スパイ(ジョン・ゴートン)のエピソードがありますが、その時期設定もだいたい同じ頃(1939年)ですね。

ジョーカー・ゲームによると「スパイは疑われた時点で失敗」らしいので、戦前の閉ざされた海洋国家日本での諜報活動は大変だったんだろうなぁ...と、当時のスパイの気持ちになって「ミッキー・マウスのお手柄」を読むと、ほのぼのストーリーの外側にやや複雑なメタ・ストーリーが見えてきます。

スパイというと危ない人だと思われがちですが、無益な戦争は起こさせないように内側からコントロールするという側面もあると思います。

今の日本では外国人は珍しくないので、スパイが安全に仕事できる良い世の中になったと思います。

スパイは時代劇のサムライと違って現代の日本にも普通に居ます。

以前都心に住んでいた時、早朝のゴーストタウンのような銀座を街歩きしていると結構な頻度でネズミを見かけたのですが、もしかするとあのネズミたちもナズーリンが使役する諜報ネズミだったのかもしれません。

合理的ではないものを作りたい

ここ最近、実機版の東方VGSの開発が忙しくて、東方VGSの曲追加が滞っています。 東方VGS(実機版)のデザインを作りながら検討中。基本レトロUIベースですがシークバーはモダンに倣おうかな…とか pic.twitter.com/YOYprlDsYD — SUZUKI PLAN (...