東方BGM on VGS(東方VGS)のバージョン1.00が無事リリースされ、ピスコラやMMLを打ち込まない日々が、数日間続いてますが、まるで、糸が切れた凧のような気分です。だからといってすぐに東方VGSを再始動させたい訳ではないですが。^^;
暫く、凧らせてくださいw
実のところ、あまり惚けている訳にもいきません。次はニコニコ動画の自作ゲームフェス3向けの新作に取り掛かる予定なので。その新作ゲーム開発のことはさておき、とりあえず、東方VGSのことを色々と振り返ってみよう・・・と、思ったのですが、東方VGSのことは、既にこのブログで何度か記事を書いているので、
VGSの波形メモリ音源について振り返ってみたいと思います。
■波形メモリ音源を作った経緯
このブログの
2012年3月3日の記事~
3月17日の記事に、完成するまでの奮闘記みたいな記事が書かれています。(※若干、関係無い記事も混じっていますw)
実は、VGSの波形メモリ音源+音源ドライバ(MMLコンパイラを含む)は、2週間という短期間で完成させました。今、軽く読み直してみましたが、オリジナルの波形メモリ音源エミュレータ(ソフトウェアシンセサイザ)を、「あーでもない」、「こーでもない」と試行錯誤しながら完成させていく様が、中々微笑ましいですw
私は、VGSを作る以前から、音源エミュレータを実装することに興味があったのですが、技術的に色々と難しそうだと思って、躊躇していました。ついでに、作るのが大変な割りに、ありがた味(?)みたいなものが少ないんじゃないかと(OGGやMP3とかで別に良いんじゃない?とか)思っていた節もあります。
しかし、スマートフォンの場合、パソコンと違って容量が小さいし、不安定なワイヤレス通信だから容量が大きなアプリは嫌われます。そこで、スマートフォンアプリの開発に乗り出す以上、独自のソフトウェアシンセサイザを作ることには、モノ凄く大きな効果があるんじゃないだろうか...と、錯覚し、勢いに任せて作ってみた感じです。
■性能重視の音源仕様
開発奮闘記(?)の記事を読んでみると、私は「性能」というキーワードに敏感な事に、気付かれるかもしれません。これは、「音楽」というのはゲームにとっての「おまけ」であり、
音楽の為にリソースを割くことを嫌っていたためです。(単に、プログラマの職業病という側面も無くは無いですが)
ですが、「ゲームに音楽が無くても良い」とは考えていません。
むしろ、「ゲームに音楽は必須だ」と考えています。
しかし、「性能を割くのはナンセンスだ」と考えた訳です。
そこで、
「必要最小限のCPUリソースで、必要最大限の音楽演奏機能を作ること」を、設計目標に据えて、処理が重くなりそう&無駄な機能を最大限に削ぎ落とした形にデザインしました。
VGSの音源スペックが若干(かなり?)ショボイのは、その所為ですw
しかし、それでも東方VGSを聴いて頂ければ分かるように、十分ゲーム用のBGMとして成立できる音楽が鳴らせているんじゃないかと思います。(東方VGSの場合、思い出補正によるところが若干強いかもしれませんが)
■割とウケた(World Wideで)
波形メモリ音源を搭載したVGSで開発した処女作、「NOKOGI Rider」をAndroid Market(Google Play)でリリースしてみたところ、国内外問わず、その音楽を鳴らす仕組みに感心が集まりました。特に、海外からの反応が多かったと思います。
「こんな小さな容量でどうやってるんだ!」とか、
「日本製なのに快適に動く!」とか。
※日本製のゲームは、性能要件がキツイものが多いと見られているようです。
海外展開に苦戦している日本のデベロッパーさんは多いと思いますが、オリジナルの波形メモリ音源を搭載してみると良い感じかもしれませんよ。プログラミング知識は割と豊富なものの、音声プログラミングの知識ゼロの私にも作れたのだから、企業が本気になって作れば簡単に作れるんじゃないかと思います。
これは結構本気で思っています。
もちろん、懐ゲーをエミュレータで・・・ではなく、新作を。
(移植モノではそういう仕組みでやっても普通過ぎて面白くない)
実際、SUZUKI PLANの売上げは、海外売上高比率8割強(主に欧米)なので、海外メインで活動しているといっても過言ではありません。英語はそんなに得意ではありませんが、結構何とかなるものです。
そういえば、開発室Pixelさんの洞窟物語とかも、最初に海外で注目されたと思いますが、洞窟物語の音楽の仕組みも波形メモリ音源だったりします。(仕組み上、VGSとは違い、処理性能よりも表現性能を重視されているようなので、開発室Pixelさんの波形メモリ音源の方が、音楽としては良い感じのものが作れるという違いがありますが)
■効果的なアピールを
このような「独特な製品特性」を持っていることは、マーケティング(主にブランディング)をする上で、とても有利です。つまり、この製品特性をアピールしない手はありません。そこで、
「VGSの音源でアレンジしたJ.S.Bachの平均律クラビーア曲集を作ろう」という神憑り的な発想に至った訳です。
え、東方じゃないの?
・・・そうです。
私は最初、東方ではなく、WTCで行こうと考えました。
WTC = Well Tempered Clavier(平均律)
実は、その残骸が残っています。
私のAndroidアプリの一覧をご確認ください。
https://play.google.com/store/apps/developer?id=SUZUKI+PLAN
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SUZUKI PLANのAndroidアプリ一覧
(2014/1/10時点) |
画面下部で一際目を引くJ.S.Bach大先生。
折角なので、もうちょっと拡大してみましょう。
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デデーン!!! |
このアプリのスクリーンショットを見ると、東方VGSと非常にソックリな事に気付くと思います・・・というより、東方VGSとほぼ同じです。(WTC1を流用して東方VGSを作ったので...ついでにいえば、画面上部のパネル部分は、NOKOGI RiderのMusic Roomからの流用ですw)
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WTC1 on VGS(Lite)の画面
(東方VGSのパクリじゃありません) |
結果的に、WTC1 on VGSは鳴かず飛ばずでした。
トータルのダウンロード数は、今のところ200件ぐらいです。完全無料のアプリで、リリースから半年以上経って200件というのは、逆にスゴイことかもしれません。なお、★5が2~3件ついていますが、内1件は私です。
私は、音楽的な部分のほぼ全てを、J.S.Bach先生から学びました。東方の音楽をアレンジするに当たっては、J.S.Bach大先生から学んだ知識(主に対位法)がかなり役に立ちました。正しく学びとれているかは別として。しかし、音楽に関しては素人同然の私でも、東方VGSで大きな評価を頂けたのは、J.S.Bachの力添えによるところがかなり大きいかもしれません。(もちろん、原作者であるZUNさんの力が一番大きいですが)
きっと、東方VGSの至る所に、J.S.Bachの息吹(?)を感じられるかも。
これから作曲や編曲の世界に足を踏み入れようとされる方は、J.S.Bachにどっぷり浸かることをオススメします。ちなみに、私のお気に入りの奏者は、月並みにGlenn Gouldです。あとは、Ton Koopmanとか。一応、私はインヴェンション全曲と平均律の途中(1,2番のプレリュードとフーガ)までは弾けました。もう弾かなくなってから結構経つので、今はサッパリですが。
インヴェンションは、バッハ流の作曲法を学習するための入門書として書かれた側面もある曲集なので、私の作曲や編曲の技術は、インヴェンションからの影響がかなり大きいです。ちなみに、お気に入りは2声の15番です。(フーガが好きなので)
■J.S.Bachから学んだこと
「J.S.Bachから学んだ」とは言っても、直接、J.S.Bachの師事を受けた訳ではありません。何故なら、私が生まれる遥か前に亡くなられていたので。しかし、仮にご存命だったとしても、私は、音楽を専門にやってきた訳ではないので、そういう機会は無かったのではないかと思います。
具体的にやった事は、「J.S.Bachの音楽を楽譜を見ながら聴く」ということです。
そして、音楽(モチーフ、各声部、声部間の因果関係など)を徹底的に解析(アナリーゼ)します。
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アナリーゼの例
(青い丸で囲っている部分がモチーフ) |
実際に鍵盤を使って演奏する事も、とても大切です。
なお、別に高価なグランドピアノとかじゃなくて、5000円ぐらいで買えるCasioのキーボードとかで大丈夫です。J.S.Bachの頃の鍵盤音楽は、チェンバロ(ピアノよりも音域が狭く強弱表現も無い楽器)用に作られたものばかりなので、49鍵(できれば61鍵)で十分演奏可能ですし、ベロシティーコントロール(強弱)も不要です。むしろ、ベロシティーコントロールはOFFに出来た方が良い感じかもしれません。当然ですが、ペダル(ダンパーペダル)とかも不要です。
(最初の内は)両手で弾く必要はありません。
また、装飾音とかも入れなくて良いです。
片手でモチーフの切れ目、形の変化、調性の変化などを意識しつつ、一定のテンポ(遅くてOK)で弾くことを意識すれば良いです。ただ、左手と右手のパートがどのような関係にあるか意識することは重要ですが。
片手での演奏を、左右それぞれ何百回、何千回と繰り返し、アナリーゼが完璧なものになる頃には、自然と両手で弾きつつ、バロック感のある装飾音も鳴らせるようになり、且つ、速いテンポで弾くこともできるようになります。(※私の経験談です)
「VGSの振り返り」ってよりは、「J.S.Bachのすゝめ」みたいな感じになってしまったなw
私の話しが脱線するのはいつものことです。
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