2022年1月に東方VGSを復活させてから1年が経過しました。
もう1年経ったのか...時間が光速で流れていく。
という訳で1年分の各種データを纏めてみました。
【アクティブユーザ数】
まず、月間アクティブユーザー数(MAU)の遷移から。
※正確には28日間平均のアクティブユーザ数の平均
2022年8月までの間(妖精大戦争の全曲コンプリートするまで)、だいたい週1ペース以上のハイピッチな間隔で楽曲追加していたのですが、妖精大戦争が終わった8月以降はペースをかなり落としています。
(月別の配信楽曲数)
- 2022.01: 3曲(地霊殿)
- 2022.02: 6曲(地霊殿)
- 2022.03: 6曲(地霊殿+星蓮船)
- 2022.04: 7曲(星蓮船)
- 2022.05: 5曲(星蓮船)
- 2022.06: 6曲(星蓮船、妖精大戦争)
- 2022.07: 5曲(妖精大戦争)
- 2022.08: 2曲(妖精大戦争)
- 2022.09: 3曲(神霊廟)
- 2022.10: 2曲(神霊廟)
- 2022.11: 3曲(神霊廟)
- 2022.12: 2曲(神霊廟)
8月から配信頻度を落とした結果、9月以降にMAUが落ちてきた傾向が顕れたことが分かります。
なお、DAUの平均は概ねMAU(28DAU)の1/10ぐらいでした。
ソーシャルゲームやソーシャルメディア(SNS)の一般的なDAU:MAU比率と比べると、乖離がやや広めかと思われます。
なにがしかのソーシャル要素(例えば楽曲の人気ランキングなど)を実装することで乖離幅を狭めることができると思われます。
DAU率を上げたところで売上が上がる程度の効果しかないので、すぐにやろうとは思っていませんが、手が空き&予算に余裕があったら何かしら考えてみようと思っているところです...ただし、ソーシャル機能は色々な意味で諸刃の剣なので極力持たない方が良いと思っています。
ちなみに1年前に再公開した当時の記事では、「DAU 500 が同人としてほどほどに良い感じのレンジ(目標レンジ)です」と言及していますが、年間平均は411でした。
微妙に目標値には届いていませんが、500を超えた日もあったので目標達成できたといっても過言ではないかもしれません。
また、DAUあたりの収益について
- DAU 平均100人 = 月収3,000円
- DAU 平均500人 = 月収1万5,000円
- DAU 平均2,500人 = 月収7万5,000円
- DAU 平均30,000人 = 月収90万円
と予測してましたが、月あたりの平均売上は3万円ぐらいなので、上記予測値の2倍ぐらいの乖離があります。
これは多分課金による広告削除を入れた影響なので、広告収入だけに絞って見れば概ね上記予測通りでした。(売上面での分析については詳しく後述します)
【ダウンロード数】
月間のダウンロード数(※新規インストールのみ)は、最大が 2022.03(3,328DL)、最小が 2022.09(1,488DL)、年間合計は 26,557DL でした。
1日平均は73ダウンロードぐらいです。
スマホアプリの公開を始めたばかりの頃は、1日1ダウンロードしてもらうのも大変でした。
50ダウンロードでガッツポーズし、100ダウンロードで祝杯を上げ、1000ダウンロードで「思えば遠くへ来たものだ」と感慨にふけっていたあの頃のことを思えば、ありがたいことにかなり沢山ダウンロードして頂いています。
ただ、2013年〜2016年の4年間の累計ダウンロード数は約50万(年間平均12.5万)ぐらいで、1日平均300ダウンロード以上だったので、復活前と比べると大分落ちました。
※2013年〜2016年の累計ダウンロード数ですが実は正確な数字は不明で、Androidのコンソールのどこかに20万ぐらいという数字が見つかったので、iOSはおそらくその1.5倍〜2倍と類推しておよそ30〜40万ぐらいと見て「OS合算すれば少なく見積もって50万DLぐらいかな?」というフワッとしたものです(去年の記事だと30万とか言ってますねw)。2022年の復活以降はちゃんとFirebaseでDL数カウントするようにしたので恐らくそこそこ正確な数字かと思われます。
DL数が落ちた主な要因は、
- 東方Projectの二次創作アプリが増えたので埋もれやすくなった(特にガッツリ広告予算を組んでいるであろう大手の公認アプリには絶対に勝てない)
- 2013年〜2016年当時と比べてスマホアプリの目新しさが減ったので、単純なストア流入だけでは厳しくなってきた
あたりかなと思われます。
なお、別に公認アプリに勝とうとは思っていませんw
公認アプリの売上は恐らく上海アリス幻樂団さんとレベニューシェアとかの契約になっていると思われます。一方、東方VGSは公認ではなく非公認(野良)の二次創作なので、公認アプリが売れた方が上海アリス幻樂団さんの実入りが良い筈なので、応援しようと思うことはあっても勝とうと思うことはありません。
そもそも、流入数というのは資本の体力勝負(パワーゲーム)で決まるものなので、資本力のある企業に勝つのはほぼ不可能です。
流入数を増やそうと思うと、メディアに露出したり広告を打ったりといった手段(プロモーション)が必要なのですが、その辺を頑張る予定も資本もありません。
実験的に広告(※純広告ではなくアドネットワークの広告)を打ったことならありますが、広告で獲得できるダウンロード単価はARPUの10倍近い状況で、加えて広告で獲得したユーザーは、自然流入のユーザーと比較してリテンション率<Vが低い傾向があるように見受けられました。なので、広告の使い所は収益調整のみだと思っています。
【リテンション率】
流入よりもリテンション率(継続率)の方が重要です。
流入数(ダウンロード数)を増やすにはプロモーションが必要で、プロモーションをするには基本的にお金が必要です。テレビCMなど、より多くの人にリーチできる手段だと天文学的な数字の予算が必要になります。もちろん、趣味で作っているアプリでは無理です。だからといって、何もプロモーションをしなければどんなに良いプロダクトでも埋もれていってしまいます。
しかし、流入数(≒パワーゲーム)と異なり、リテンション率の良し悪しはプロダクトの質にのみ依存します。
良質なプロダクトを作るのにもお金が掛かるから、リテンション率向上も結局お金の力が必要なパワーゲームではないか...と思われがちですが、お金を積んで得られるのは「表面上のプロダクトの質」でしかありません。
短期のリテンション率や流入数なら表面上のプロダクトの質向上(便利な機能、キレイな絵、美しい音楽...etc)でそこそこ上げることができますが、長期のリテンション率を左右するのは「より原始的なプロダクトの質」で、それは世界観や哲学など(作家性)でできているというのが持論です。
もちろん、表面上のプロダクトの質もある程度は重要ではありますが、そこは後から改善することができるので、最初からそこに全力投球するのはお金をドブに捨てるようなものです。当たる確度が高い既に成熟している市場でのマーケティングということであれば話は別で、そういう市場はパワーゲームで勝敗が決まるので個人のスモールビジネスでは絶対に勝てないです。(勝てない勝負はすべきではないというのが私見)
原始的なプロダクトの質は、500億円の開発予算、天才的なデザイナ、伝説のプログラマなどの盤石な布陣で開発しても向上することはありません。
むしろ逆効果かもしれません。
というのも、開発に携わる人間が増えるほど世界観も哲学もブレていくものなので、大組織によるサービス立ち上げは「サービスの長期リテンション」という観点では、失敗する確率を高めるリスクの塊のように思われます。更に、失敗した時のトータル損失額(初期投資額+損切りできなかった期間の運用コスト)も無駄に高くなってしまいそうです。
協調性のある優秀な人材ではなく、サイコパスな独裁者の方が、低リスク&高確率で長期リテンション率の高いサービスを生み出せる可能性が高いかもしれません。
長期のリテンション率が最重要KPIですが、それを狙ってコントロールするには未来予知に等しい能力が必要になります。
データや歴史書などを読み漁ったりAIの力を駆使するなどして、未来予測(過去に起こった事象の再現を推し量ること)だけなら「ある程度」までならできますが、未来予知(未来に起こることを予め知る)には神の視点が必要です。
この点(神の視点の有無)に限れば、資本の大小に関係なく全ての人(法人)は平等です。もちろん、才能の有無(というか、運の良し悪し)ならあるかもしれませんが、この世に神の視点を持つ人や法人は存在しません。
なので、初期の内は色々な方向性でプロダクトの種のようなものを作り、ヒットするプロダクトの芽を見つけたらそれを選択&集中するという、とてもシンプルな脳筋戦略(多様な10を生んで、9を捨て、1に全力投球)が、プロダクトアウトにおける最善のマーケティング戦略だと考えられます。
この点に絞れば大企業と同じ土俵で戦っても勝ち筋があります。
むしろ、組織が大きいと柵も多いので1を生むのに掛かるコストが無駄に高く、上場企業ならそうそう簡単に作ったモノ(資産価値のある可能性のあるモノ)を捨てられないので、個人やベンチャーの方が有利です。ただし、後者(捨てる決断)については、個人でもベンチャーでも人によっては簡単ではないかもしれませんが。膨大な時間と丹精を込めて捏ねたツボを、些細な理由で地面に叩きつけて壊せる気難しい陶芸家のようなスキルが必要です。
という訳で、直近6週間のリテンションをOS別に見てみます。
iOS: 1週目27.4%〜5週目11.4%
Android: 1週目22.6%〜5週目11.1%
リリース当初、Androidのリテンションが妙に低かったので、UIのデザインをマテリアルデザイン(ライト)からiOSと同じフラットデザイン(ダーク)に合わせる大幅改修を入れた所、iOSと同程度のリテンション率に改善できました。
「マテルアルデザインがダメ」という訳ではなく、ちゃんとアプリの世界観と合致したデザインを思考&試行すべきということかと思われます。
世界観に完全に一致しているベストなUIは、マテリアルやフラットなどのチャラチャラしたUIではなく、2013年当時のVGS独自UI(RETROタブのUI)だと思っているのですが、OS側(特にAndroid)のバックグラウンド再生を安定化させるにはVGSだと出来ない(Android 7以前ならできたのですがAndroid 8以降で不可能になった)ので、メインUIはチャラチャラしたUIにせざるを得ないのが中々歯がゆいところです。チャラチャラした標準的なUIの方が、人間工学なりなんなりが考えられていて使いやすいのは知ってますが、私は使いやすさよりも世界観の方が重要だと思っていて、多分この辺が私とGoogleのデザイナーさんとの間で決定的に相違している価値観なのかもしれません。
結果的にAndroidの序盤(1週目〜4週目)のリテンション率がiOSと比べてまだ微妙に低い傾向がありますが、重要なのは長期リテンションで、5週目リテンションについてはAndroid/iOS間に大差はありません。
Androidの初期リテンションはiOSよりも低い傾向があることは他のサービスでも同じらしいので、Androidのテコ入れは完了した感じだと思われます。
あと必要なのは全体的なリテンションの底上げですね...何をするのがベストなのかは明白で「もっと配信頻度を上げる」ということに尽きるかなと。
【売上】
赤と青はAds(広告)、緑と黄はIAP(広告削除のアプリ内課金)の売上です。
なお、実際の収益の受け取りは日本円&約1ヶ月遅れですが、上図は米ドル基準&リアルタイムのグラフです。
日本円換算の年間トータルの売上金額は40万円ぐらい(経費を差っ引いた雑所得金額は16万円ぐらい)なので、小金持ちな家庭の高校生のお小遣いぐらいでしょうか。
作業時間あたりの単価で見ると、コンビニでレジ打ちしていた方が遥かに高い程度ですが、想定以上に儲かってしまいました。
広告での売上は「売れるソシャゲが出るかどうか」に掛かっていて、ソシャゲは2020年のウマ娘を最後に大きなヒット作が無いにように見受けられるので、艦これを最後に終わったブラウザゲームの時と似たような潮流を感じています。(奇しくも同じ擬人化ネタですね)
2023年以降はもっと厳しくなるものと予測しています。
幻想入りしてからが本番と思っている節があって、2020年の最後の大きな花火が本当のラスイチだと確信した2022年のタイミングで復活した訳ですが(※もちろん冗談です)、これで食っている訳ではないものの、最低限赤字にならない年2〜3万円程度の売上はキープしたいところです...大丈夫かなぁ。
とりあえず今年(2023年)は黒字キープできそうな見通しなので、売上面のことはしばらく考えなくて良さそうです。
参考までに月間売上と月間平均DAUの偏差値の遷移を比較してみました。
基数やベースラインの異なるデータを比較する時は偏差値にすると相関関係が見やすくなります。
3月〜4月は、課金アイテムの売上が大きかったので若干異常値が出てますが、その点を無視すれば概ね相関関係があるように見えます。
少し注目すべき点は、
- 1〜2月: 売上偏差値 > DAU偏差値
- 5月〜12月: 売上偏差値 < DAU偏差値
というところですね。
課金機能の導入を契機に逆転現象が起きているように見えます。
課金(広告削除)を行うことで広告収入が0になるのでDAUが伸びても売上が上がりにくくなるとも考えられます。
加えて、そもそも課金しなくても全機能をフルで解放している状態で提供しているので、課金してくれるユーザさんのリテンション率が基本的に高めになるのではないかと想定しています。
この辺が再開当初に課金による広告削除を躊躇した(入れなかった)理由です。
LTVと楽曲配信サーバやドメインのコスト(固定費)との兼ね合いで、恐らくそれでも赤字化することは無いだろうということで、課金機能の導入に踏み切りました。
儲けすぎるのも良くない(というか同人っぽくない)と思っているので売上はほどほどで良いのですが、赤字運営だけは回避したいのでマネタイズ周りの意思決定はかなり慎重に行っています。
【LTV】
LTV(Life Time Value; ユーザーの利用期間あたりの平均売上金額)はおよそ $0.09 でした。
一般的に「iOSの方がユーザがお金払いが良い」みたいなイメージがあるかもしれませんが、少なくともデータ的にはそういう傾向は全く見られません。
単純に(日本や北米では)iOSユーザの方が多いから売上が多いだけで、ユーザ単位のLTVで均せばAndroidとiOSの差はほぼ無くてどちらもおよそ $0.09 (100日目あたり) という結果でした。
少し興味深い傾向として、
- 9日目
- 46日目
- 68日目
という、特定のタイミングでLTVがライズアップしている点が気になります。
恐らく46日目、68日目あたりが広告削除の課金をしてくれるタイミングかな...(68日目のライズアップを堺にLTVの上昇が緩やかになっているので)
星蓮船に着手してから完成するまでに掛かった期間が78日間だったので、その辺が関係しているのかもしれません。
【サーバコスト】
楽曲配信サーバには、Firebase Hosting + 独自ドメインを使っています。
独自ドメインはお名前どっとこむで10年間で1万円(年間1,000円弱)ぐらいの契約です。
ホスティングは従量課金制ですが、年間の請求額は¥0(無料枠内)でした。
直近1ヶ月のデータ通信量は以下のような形です。
- ストレージ(アップロード): 21.1MB/月
- ダウンロード: 67.9MB/月
無料枠は、ストレージ・ダウンロードが各10240MB(10GB)/月までです。
ストレージ(※正確にはCDNキャッシュのinvalidation→validationのコストかな?)は概ね「曲の配信頻度」に比例して、ダウンロードは概ね「アクティブユーザ数」に比例します。
ストレージの方は、東方Projectの全楽曲を配信しても確実に無料枠内で収まるので黙殺できます。
ダウンロードの方は、アクティブユーザ数が増えれば無料枠を超過してコストが発生する可能性があり、アクティブユーザ数が現在の約150倍(10240 ÷ 67.9)に増えればコストが発生する可能性があります。
2022年12月のMAUは4,220だったので、MAUが63万3,000以上になった辺りで初めてサーバーコストが発生し始めます。
その規模になれば、月間の収益が300万〜400万円前後になる筈で、加えてサーバコストが発生するといっても数百円レベルのオーダーだと思われるので、サーバコストにより利益切迫になる心配はほぼ無さそうです。(ただ、流石にそのオーダーで稼ぐと野良の二次創作だとマズイから原作レベニューが必要などの別の問題が出てくる筈...そこまで伸びることは多分無いとは思いますが)
データ選定は重要です。
東方VGSの場合、曲データがMMLと呼ばれるテキストデータ(CDNでgzip圧縮された状態なので1曲数KB)だから、インフラコストを低く抑えられています。
AAC等(m4a)なら音質を落としても1曲数MB(約1,000倍)になり、データが1,000倍になればインフラコストも1,000倍以上になります。
動画ならもっと大きくなります。
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