昨今OSSを利用しない商用ソフトウェアはほぼ存在しないと思います。
商用ソフトウェアで利用可能なOSSライセンスについての(一般論としての)私の認識は概ね下記と同じです。
商用利用できるオープンソースライセンスはけっきょくどれで何をすればいいのか?(Qiita)
上記記事では「GPLは使わない方が良い」とのことですが、個人的には GPL も含めて良いと思っている節があります。商用ソフトウェアでも積極的にソースコード公開した方が良いのではないかと。その方が結果的にソフトウェアの再利用性が高くなり世の中が便利になりそうな気がするので。
商売する上では「競合に簡単にマネされる」といった側面もあるので、全てのケースでそうすべきとまでは言いませんが、可能な範囲でライセンスはGPLにした方が良いと考えています。
という訳で、東方VGS(iOS, Android)のバージョン4(2022.01再開時バージョン)のライセンスはGPLv3にしてます。
https://github.com/suzukiplan/tohovgs4-ios/blob/master/LICENSE.txt
https://github.com/suzukiplan/tohovgs4-android/blob/master/LICENSE.txt
東方VGSの技術的な特異点はVGSのチップチューン・サウンドの仕組み(部品)ですが、経済性(商業的な意味での価値)は「部品」にはほぼ無いと思っているので、部品にはより再利用性が高い(≒緩い)ライセンスである 2-Clause BSD を採用しました。
https://github.com/suzukiplan/vgs-bgm-decoder/blob/master/LICENSE.txt
https://github.com/suzukiplan/vgs-mml-compiler/blob/master/LICENSE.txt
経済性があるのは「部品」ではなく「コンテンツ」です。(※ソフトウェアの場合)
理由は簡単で「大半の人は部品ではなくコンテンツに感動するため」です。もちろん、部品に感動する特殊な性癖の方も居るかもしれませんが、それはある種の性的マイノリティだと思います。
昨今は、映画、音楽、マンガなどのコンテンツそのものは幾らでも無料で手に入るし、何なら将来的にはAIが自動生成してくれるかもしれないので、コンテンツに経済性を発生させることにすら一工夫が必要です。
しかし、部品そのものに経済性は無くてもゼロから開発するには相応のコストが掛かるので「部品はどんどんオープン化してより良い部品が生まれる形にした方が実利がある」というのが私の基本的な考え方です。
VGS以外だとZ80エミュレータなんかも作ってますが、これも単なる「部品」ですね。
なので、それ単体での経済的価値は無い筈です。
しかし、Z80エミュレータについては、開発当時(2019年)すでに多くのフリーウェアが存在したのですが、ライセンス周りが結構曖昧なものが多かったので、差別化のためMITライセンス(2-Clause BSD より若干緩いライセンス)にしています。
https://github.com/suzukiplan/z80/blob/master/LICENSE.txt
エミュレータ関連のソースコードは、微妙なライセンスで提供されているものが多く、その代表例が fMSX でしょうか。
fMSXライセンス(抜粋)
The fMSX source code is written in portable C and will work on any sufficiently fast computing platform, be it a personal computer, a videogame console, a PDA, a cell phone, a set-top box, a DVD or MP3 player, or even a digital camera. Some examples of fMSX being ported to various platforms can be found below on this page. If your company intends to use MSX emulation in its products, you can license the fMSX source code from me to use it for commercial purposes. I am also available for consulting work in the software emulation, embedded programming, and other fields. See my resume and contact me if interested.
fMSXのソースコードはポータブルCで書かれており、パーソナルコンピュータ、ビデオゲーム機、PDA、携帯電話、セットトップボックス、DVDやMP3プレーヤー、デジタルカメラなど、十分に高速なコンピュータプラットフォームで動作する。このページでは、さまざまなプラットフォームに移植されたfMSXの例をいくつかご紹介します。もしあなたの会社がMSXエミュレーションを製品に使用するつもりなら、私からfMSXのソースコードをライセンスして、商業目的で使用することが可能です。また、ソフトウェアエミュレーション、組込みプログラミング、その他の分野でのコンサルティングも可能です。私の履歴書をご覧いただき、ご興味があればご連絡ください。
「ライセンスを受けることで商用利用できる」とありますが、事実上それはかなり困難です。日本語で「ライセンスしてくれ」とメールを送ったところで無視される可能性すらありそうですし、そもそも、より緩いライセンスのMSXエミュレータなら他にもあるので、わざわざレガシーなfMSXを(お金を支払ってまで)使う理由がありません。
また、fMSXの場合、商用利用についての条件は定義されていますが、非営利目的やプライベートユースについての許諾が一切されていないので、例えば大学の研究目的での使用などでも利用できない可能性がある不自由なライセンスだと思われます。
しかし、fMSXはエミュレータ黎明期からOSSとして提供されていたため、色々なエミュレータのコードベースとして汚染されているのが実態で、例えばBlueMSXなどのコードベースになっていた時期もあるようです。
そこで、明確に自由なライセンスのZ80エミュレータを生み出すことには価値があると考えて作ってみました。
この他にもエミュレータ界隈は古くからOSSが浸透していましたが、「利用は原則自由だが商用利用はNG」という不自由なライセンスが多い印象があります。
例えば、FM音源エミュレータで有名なfmgenのライセンスも、商用利用に関してはfMSXと概ね同じ「不自由なライセンス」になっているようです。
https://github.com/kuma4649/MDSound/tree/master/MDSound/MDSound/fmgen
何故、そんなに商売を毛嫌いする必要があるのか?
太古の昔のインターネットには「嫌儲」という謎の文化があり、それに毒されているのかもしれません。
冷静に考えれば、経済的に発展している国はほぼすべて資本主義のスキームを採用していて、資本主義社会では認知拡大のためのツールとして「商売」がとても有用なので、これを積極的に活用しない手はありません。
もちろん、fMSXのようにライセンスビジネスで小銭を稼ぐ路線=部品そのものに経済性を求める方向もナシではないと思いますが。(ただ、どう考えても大して儲からないと思いますが)
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