まるで、小学生の作文のタイトル見たいな見出しで恐縮ですが、書いてあることも、だいたいそんな感じの内容です。もう直ぐアラフォーにリーチがかかるおっさんが語るには、あまりにも純情無垢で、ピンク色の妖精たちが飛び交うお花畑みたいな脳内コンテンツを惜しげもなく展開した内容となっております。という訳で、軽い気持ちで読み捨てるか、もしも貴方が寛容な大人であれば、聖母のような眼差しで読んで頂ければ幸いです。
市場概況
※上記は資料から数値をExcelで(目コピーで)打ち込んで出したものなので、もしかすると間違っている箇所があるかもしれません。
「日本の音楽産業は終わっている」などという話をよく聞きますが、具体的には、1998年の約6000億円をピークに凄い勢いで下がり続けていることが分かります。例外的に2010年代に一度パルス的な回復が見られますが、握手券的な何かかな?(もはや過去のネタですね)
上記は音楽ソフト(レコード、CD、音楽ビデオ)の生産金額の遷移なので、インターネット等での有料音楽配信を加えれば、トータルでは伸びているんじゃないか?と思われるかもしれませんが、下図に音楽ソフト生産金額にインターネット等での有料配信の売上金額を上乗せしてみたものを示します。
※生産額(ソフト)に売上(配信)を加えているため、総数は意味を成さない数字になっているので、上図はグラフの形だけ見て下さい(利益率は年次でそんなに変化しないので、形としては概ね正しくなると思います)
2005年〜2007年まではトータルで微増してますが、2008年ぐらいからトータル減となり、以後(2012年の例外を除けば)下落が続いています。
日本は、有料音楽配信で失敗しました。
別に媒体は何でも良いと思います。
しかし、トータル減転したということは、ダメだったということでしょう。
ですが、有料音楽配信が完全に失敗だったのかというと、それは違うと思います。
実際、2005年〜2007年ぐらいまでは、トータルでは伸びていた訳なので。
微増程度ではありますが。
最初の図を、ピーク時(1998年)から2014年までの間にフォーカスしてみます。
すると、1998年〜2004年に掛けて、急激に下落していた音楽ソフトの生産額が、2004年から2007年に掛けて一度下落幅が緩くなっていることが分かります。先ほどの図で示したように、2005〜2007年は有料配信とのトータルで前年比+だったので、その時の有料配信は、音楽ソフトの売上減少に歯止めを掛けつつ、トータルで前年比プラスに転じることができていました。そのため、その時期の音楽業界は、実績値から見ても「上手くいっていた」と言えると思います。
(参考情報: 1998以降の世の中の主な出来事)
1998年: 長野オリンピック、松坂(横浜)高校で活躍、Kiroro爆誕
1999年: NTT docomo iモード (s-in)、坂本龍一・裏BTTB(energy flow他)
2000年: 3月, 高校のクラスメートi君が卒業式に突如金髪で登校し, 通称「ミレニアム」と呼ばれる
2001年: 映画「千と千尋の神隠し」公開、iTunes誕生(Macのみ無料)
2002年: 社会人1年目, 花見の席で同僚がガンダムの話に興じており, ガンダムを1ミリも知らなかった私は酒の勢いで「俺がガンダムだ!」と発言し, パーティーの主役になる(その数年後, ニコニコ動画で同セリフが一時的に流行って割とビビったのだが, どうやら原作でも同セリフが使われていたらしいことを2008年頃に知る)
2003年: 朝青龍が第68代横綱に昇進、SARS流行、iTunes Store(s-in)
2004年: ふたりはプリキュア、音楽番組の視聴率低迷、VOCALOID販売開始
2005年: 音楽ミリオンセラー2年連続皆無
2006年: ニコニコ動画(s-in), タワーレコード破産 ※2004年以来2度目の破産(タワーレコードは二度死ぬ)
2007年: 初代iPhone(+iPod touch)誕生: 以後3G(2008), 3GS(2009), 4(2010), 4s(2011)...
2008年: SUZUKI PLAN活動開始(この辺からは概ね記憶がホットなので省略)
日本の有料音楽配信
日本で有料音楽配信が普及した最初のキッカケは携帯電話の「着メロ」です。
Wikipediaによると、日本の着メロは1994年にテレメッセージのポケットベルモーラが着信メロディ機能を搭載したことに始まり、2000年に世界初の16和音再生に対応したLSI(クアルコム社製)を搭載したauのcdmaOne端末C309H(日立製作所)が発売されたとのことです。そして、2005年には64和音 - 128和音対応が一般的になったとか。
一番最初の着メロサービスは、私の記憶が正しければJ-Phoneのスカイメロディ(1998年s-in〜2010年終了)でした。
参入障壁が低かったためか、大小色々な会社が着メロサービスに参入しました。
今はニコニコ動画で有名なドワンゴの16メロミックスとかがかなりヒットしていましたね。
このCMで流れている曲は、ち◯こ音頭かな?懐かしいですねぇ。
私の記憶では歌詞も流れていた筈ですが、インストゥルメンタルだったんですね。
TVCMだから萎縮してしまったのかな?(ち◯こだけに!!)
他にも色々とあったと思いますが、筆頭は16メロミックスだったという印象。
いや、私がそっち系の人間だから贔屓しているとかそういう事ではなく、確か着メロ業界全体の20%ぐらいを取っていたとか、何処かに書いてあったような気がします。
しかし、着メロブームは割と一瞬で終了しました。
着メロブームは、技術的な進化で携帯電話の通信が高速化されたり、圧縮技術も進化し、チップチューン音源(LSI音源)よりも安価なPCM音源のみを搭載した携帯電話が一般化したことで、技術的な意味でオブソリートになり(つまり、消費者ニーズとは関係ないところが原因で)終了しました。
技術の進化スピードが速すぎたことも不幸でした。
その為に、大きな市場形成をする前に埋もれていってしまったので。
惜しい。
実に惜しい。
しかし、コスト競争も激しかったし、PCM音源ならチップチューン音源の曲も再現できるという、垂直思考的な考え方(私が最も忌み嫌う考え方)で、着メロは次第に消えていき、着メロのブーム終了に伴って、日本の有料配信市場は縮小の一途を辿りました。
世界の有料音楽配信
世界的には、日本の着メロブームのようなことは起こりませんでした。
着メロブームは、ガラパゴス・ジャパン限定の流行だったようです。
世界の有料音楽配信は、日本に遅れること数年後、iTunesの登場により普及しました。
「日本のレコード産業」の資料(2015年版)より抜粋 |
iTunesは2001年に登場し、2003年に iTunes Store がs-in。
そして、2006年に爆発的に成長。
その後もiPhone普及なども追い風となって、パッケージ売上を侵食。
2014年にはパッケージ売上と並ぶまでに成長しました。
日本のソレとは違い、世界は有料音楽配信に大成功を収めたと言えます。
なお、先ほどから「世界」と書いてますが、音楽売上の大半は日本と米国が占めているので、実質的には 世界=米国 です。
iTunesの登場は衝撃的な革命でした。
しかし、それが音楽業界を潤すことはありませんでした。
この点については異論がある方も居るかもしれません(その点については後で解説します)が、事実、売上は年々低下してますし、iTunesの伸び率も低くなってきています。
iTunesは、単にコンテンツの「器」(だからiPod) をすり替えただけです。
つまり、コンテンツそのものの価値は変えていません。
そこにあるのは、単なる ディジタル化されたタワーレコード です。
「単なる」とは書いてみましたが、コンテンツがどのようなメディアで配られているのかという議論は、マーケティング上かなり重要なことです。折角「マーケティング」という言葉が出てきたので、マーケティング視点で(古典的な「マーケティングの4P」というヤツで)説明してみます。
iTunesは、音楽業界のPlace(流通)に革命を起こしました。
Promotion(販促)のやり方も変えたかもしれません。
Product(商品)の内、コンテンツの入れ物=器も、CDプレイヤーからiPod / iPhoneに変えました。
しかし、コンテンツ(Product)とその価値(Price)は据え置きにしています。
つまり、iTunesが起こしたのは、音楽業界の流通革命です。
これは、あのタワーレコードが倒壊するほどのもの凄く大きな革命だった訳ですが、消費者にとって見れば、「利便性が良くなった」とは感じるかもしれませんが、音楽そのものの価値は何も変化していません。
だから、iTunesは、有料音楽配信の促進には大きく貢献したものの、ジリ貧に陥った音楽業界を蘇らせる起爆剤にはなりませんでした。
薄い本と原作の話
日本と世界の有料音楽配信の事情を(かなり)ざっくりと解説してみましたが、同じ「有料音楽配信」ですが、日本と世界のそれは本質的に別のものです。日本の着メロと世界のiTunesの違いは「薄い本」(同人誌)と「原作」の関係に似ています。
電子書籍で購入したマンガの紙版も購入する人は居ますか?
信者なら当然両方買うでしょう。
電子書籍なら汚れないので「読む用」に電子書籍、
「保管用」に紙本1冊、
「布教用」に紙本をもう1冊。
しかし、そんな人はごく稀です。
恐らく、99%以上の人はどちらか一方しか買わないと思います。
何故なら、どちらも中身(コンテンツ)は同じものなので。
それでは、「ゆるゆり」の薄い本(同人誌)を購入した人は、果たして原作の「ゆるゆり」を買うでしょうか?
これは当然ほとんどの人がYesでしょう。
Yes! Yuru-Yuri!
原作は原作、薄い本は薄い本という風に、「別のもの」として楽しむのが多勢です。
逆のパターン(本家→薄い本)だと、人数はぐっと減ると思いますが、それでも「電子書籍で購入したマンガの紙版を購入する人」よりも、比率としては確実に多いことは想像できると思います。
「薄い本→原作」という図式だとちょっとイメージし難いかもしれませんが、例えばアニメ(※原作付き)なども一種の二次創作と考えればイメージし易いかもしれません。ただし、アニメの場合「原作忠実路線」みたいなものが結構多いので、ちょっとアレかもしれませんが。私はアニメにはあまり詳しくないのでよく分かりませんが、例えば、原作忠実路線以外の手法で上手くいっている例としては、「ひだまりスケッチ」や「化物語」など(シャフト作品)。これは、原作と時間軸をズラす手法でアニメ化している(=二次創作要素が強い)ので、原作忠実路線のアニメ作品と比べて原作へのコンバージョン率が高いと思います。結構原作の種類が限られる手法なので、下手に真似して爆死している作品も多いような気もしますが。特にいわゆる日常系モノの場合、単純にこの手法を真似てしまってもそもそも時系列があまり原作でも気にならないから効果は薄いと考えられます。しかし、ひだまりスケッチの場合、日付をタイトルにすることで作為的に時系列変化を視聴者に意識さるなど、非常に巧妙かつ原作のイメージを崩さずネチュラルに創作性が入っていて絶妙。私はアニメには詳しくないので、あまり詳しいことはよく分かりませんが。古い例ばかりだと分かり難いと思うので、今年放映されたアニメで二次創作性が上手く機能していた作品は「響け!ユーフォニアム」とかですかね。原作小説すごく面白かったです。「お前、一瞥し過ぎだろ」と何度かツッコミを入れそうになったのですが、青春時代に赤川次郎作品を読んでいて「お前、踵を返し過ぎだろ」と突っ込んでいたことを思い出し、思わず目が細くなりました(...このネタが通じる人は、果たしてどれぐらい居るのだろうか)。
何を言わんとしているかお察し頂けたでしょうか?
要するに、
- 着メロで配信されていたのは薄い本(二次創作)
- iTunesで配信されているのは電子書籍(原盤)
という事です。
着メロは、飽くまでも「二次創作」なので、原盤の売り上げに影響しません。
そのため、原盤+着メロの著作権使用料+プロモーション効果の収益が音楽業界に入ることが見込めたと考えられます。
「プロモーション効果」について補足しておくと、着メロのダウンロードサイトはサブスクリプション型(月次で会費徴収されるタイプ)でダウンロードし放題というものが多かったので、それを通じて曲のプロモーションをすることで、原盤が売れる可能性が広がるというものです。二次創作と原盤は別物だからこそ成立するという、現代の音楽業界には無い特殊&強力なプロモーション効果が得られていた筈です(途中でブームが終了しなければ、コレが数値として実感でき、チップチューンが死なずに済んだかもしれません...)。
著作権使用料の収入は、音楽業界全体の売り上げ規模から見ると微々たるものです。しかし、プロモーション効果は絶大だったと想定されます。その反面、明確な数値としては拾いにくい部分でもあります。
先ほど「実に惜しい」と言ったのはその点です。
着メロブームが終わった後、2002年頃から売り上げが急速に落ち始め、2004年から2005年の間に2年連続ミリオンセラーが一本も出なかったという小さな事件が起こりましたが、これはそのプロモーション効果を失ったことによる影響だと私は分析しています。
もちろん、音楽は水物なので、不作 or 豊作の年があるのも当然です。しかし、この時の下落はあまりに急激なので、少なくとも自然現象による下落でないことだけは確かだと言えます。
この時の市場関係者は、これをどのように分析していたのか?
2003年以前の社団法人日本レコード協会の資料には、「業界の課題」について記されているのでそれを確認してみると、だいたい「インターネットの普及+違法コピーが悪い」の一点張りでした。確かその頃は、winmxやwinnyといったP2P型のファイル交換ソフトで違法コピーが横行していたと思うので、恐らくその辺の事を言っているのだろうと思います。
つまり、完全にそっちの方に目が向いてしまい、マーケティング視点での分析とかには目が行ってなかったものと考えられます。ディジタルコンテンツの場合、違法コピーの横行による影響は確かに驚異的なので、「インターネットの普及+違法コピーが悪い」の一点張りだったのは、仕方がないことかもしれません。
そんな不運が重なったこともあり、技術的な進化という消費者ニーズとは関係ないところで、その宝の山をみすみす捨ててしまった訳です。(技術的な進化が消費者ニーズと常に全く関係ないという事も無いかもしれませんが、少なくともLSI音源からPCM音源に変えたのは消費者ニーズによるものではなく、作り手事情によるものだったと思います)
音楽業界は今、極めて危機的な状況にありますが、私は、もしも着メロを捨てていなければ、現在の危機も脱せられていたのではないかとすら思っています。
現在の危機的な状況とは、コンテンツ・デフレです。
コンテンツ・デフレ
現在のコンテンツ・デフレがどの程度深刻な状態なのか、データを基に解説します。
以下に、日本のレコード生産額ピーク時(1998年)から現在(2014年)に至るまでの「新譜数」の遷移を示します。
新譜数(枚/年)の遷移 |
大幅な下落をしていた生産額と比べて、多少の上下はあるものの単調増加・単調減少は見受けられないサイン波形状です。そのため、「大枠では変化していない」と見ることができます。
生産額は落ち込んでいるのに新譜数は変化していない...!?
この点を分かり易くするため、生産額÷新譜数としたものを下図に示します。
新譜の平均生産単価(単位:百万円) |
綺麗なお椀型の謎のデータがありますが、それは見なかったことにしましょう。
生産額ベースでの下落開始は1998年ですが、実際の所、2002年までの間の生産単価は落ち込んでおらず、むしろ上昇しています。これが意味することは、「単純に売れる新譜が出ていなかった(少なかった)」ということです。
しかし、2002年から2014年に至るまで、(握手券パルスを除けば)新譜の生産単価が凄い勢いで落ち続けています。2002年というと私がガンダムだった頃(就職氷河期の大不況)ですね。それにしても下がりすぎでしょう。その後、多少景気が良かった時期もあったのに、生産単価は落ち続けています。
先述したファイル交換ソフトによる違法コピーは、コンテンツ・デフレを進めた大きな要因の一つです。しかし、ファイル交換ソフト利用者数は法整備による取締り強化や消費者のネット利用形態の変化(スマホ移行)などが功を奏し、2014年時点で5年前の十分の一程度まで減少しています。この程度のボリュームまで萎めば、日本レコード協会が分析しているように、違法コピー「だけ」が原因だったと仮定すると、プラスに転じていてもおかしくない筈です。しかし、2009年頃から生産単価の下落に歯止めが掛かっているものの、デフレ脱却には至っていません。
2014年には、ピーク時(2002年)の半分以下(45%)にまで落ち込みました。
これは、日本のデータですが、世界的に見ても同じような傾向です(ただし、最大市場のアメリカでは有料配信が成功しているので、利益率基準で見てみると話は変わってくるかもしれませんが)。
iTunesは、音楽業界を「死なせないこと」には成功したと思います。
ただし、「iTunesがあったから音楽業界が死ななかった」と売上データ上からは判断できませんが。世界の売上データをよく見てみると、1999年から2002年にかけて下落していた世界の音楽市場の売上は、2002年ぐらいから下げ止まっています。iTunesがリリースされたのは2001年で、時期的には「iTunesが下げ止めた」ように見えるかもしれませんが、その時のiTunesには未だ「マーケット」が無いので、そこまでの力があったとは思えません。
iTunesがマーケット(iTunes Store)をs-inさせたのは2003年からで、データ上頭角を表すのは2006年以降なので、「2002年の下げ止まりがiTunesによるものだった」とは判断できません。その点を踏まえてデータから判断できることは、iTunesは全体のパイを伸ばさずパッケージ売上を奪っていったということです。
ファイル交換ソフトによる違法コピー問題は日本に限った問題ではなかった(英語ですがこちらの資料などを参照)ので、全体のパイは伸ばせなかったものの、日本ほどの大幅な下落を生まなかったという点は、iTunesのいわゆる「箱庭スタイル」と呼ばれる戦術が功を奏していたのではないかと考えられます。
しかし、今年の動向の一つとして、Apple Music他のいわゆるストリーミング配信サービスの台頭がありましたが、これらも音楽業界復活の起爆剤にはならないと思いますが、確実にPriceを引き下げに掛かっているので、コンテンツ・デフレを加速させる悪手になるのではないかと私は考えています。
違法コピー以外の要因
コンテンツ・デフレ(Price下落)が止まらない要因は一体何なのか...
分かんないですねー(棒)
何が何やら全然分からないのですが、この記事の真実2とかで面白おかしく書かれている内容のことかな?
逆SEO(というよりGoogle八分)対策でこのキーワードは出さない方が良いかな?と思いましたが、どう考えてもこのキーワードを出さずに説明するのは無理があるので諦めます。要するに、YouTubeが今のコンテンツ・デフレを進めている原因だろうと考えられます。
そのことは、先ほどの「世界音楽売上実績」を見ればよく分かります。
YouTubeが音楽業界にもたらす収益は、上図のシンクロ収入や演奏権収入のみです。また、原盤配信なので(二次創作と違い)原盤へのプロモーション効果などの異次元収入も実質ゼロです。
このスズメの涙ほどの収益を、そこで提供されている全ての原盤コンテンツの再生数で除算すると、果たしてコンテンツ当たりの単価は何セントぐらいになるのでしょうか?しかも、シンクロ収入は、YouTubeが伸び始めた時期から殆ど成長していません。
Googleが買収してから結構経つと思います。
そして、その間に何かしら収益改善策を講じている筈です。
それでも成長できていなくて、2013年から2014年に掛けてシンクロ収入は減少に転じており、また、2014年末に動画配信者への支払いを大幅に減らしたことが少しだけ話題になりました。これは要するにコスト削減策なので、つまり、事業的に行き詰まっている状態なのであろうと考えられます。
考え得る一番手っ取り早い策は、YouTubeのサービスを閉じてしまうことかな。
「そんな訳ないだろ」と思われるかもしれませんが、私は割と現実味があることだと思っています。実際のところ、YouTubeはまだGoogleにも収益をもたらしていないようですし(ウォールストリートジャーナルの記事を参照)。
今年のYouTubeの動きを具にチェックしてみると、結構「攻め」というか背水の陣みたいな施策が幾らかあったので、客観的に見ていよいよラストスパートかなと感じました。Googleは極めてシビアにサービスの見切りをつけれる企業です。そのため、これでアタリが引けなかったら(当然ながらGoogleにとって価値がある部分だけ残した上で)引っ込めるなり事業売却するなりしても、何も不思議はありません。
しかし、万が一にもYouTubeが引っ込んだとしても、戦局は何も変わらないだろうと思われます。恐らく、第二、第三のYouTube的な何かが出てきたり、再び違法コピーが猛威を振るう可能性も十分に考えられるので。
「音楽なんてタダで聴けて当たり前でしょ」
という空気感が既に定着してしまっていることが問題です。
コンテンツ・デフレの敵とは、その空気感です。
そもそも、コンテンツの値段というのは、決まった原材料費+間接費で作れる工業製品などと違い、消費者にとって極めて分かり難い存在です。そのため、消費者にその価値を認めて貰うことが極めて難しいものです。それ故に、この「空気感」に対抗するのは極めて困難なことです。
そのため、YouTubeが引っ込むか引っ込まないかに関係なく、何らかの対抗策を練る必要があります。
しかし、0円と1円の間には、極めて大きな壁があります。
0円と1円は別次元のものと言っても過言ではないでしょう。
だからこそ、ファイル交換ソフトを犯罪行為だと知りながら、それ利用する人が後を立たなかったのだろうと思います(私は使った事が無いけど)。
犯罪行為であれば、取締り強化や法整備などの策が打てるかもしれませんが、YouTubeは原盤使用料を支払っている筈なので、違法コピーとは違います。そのため、簡単には対策できません。違法コピーの対策も簡単ではありませんが、それとは次元が違うレベルで難しいと思います。
そんな手詰まり感満載の中で出てきた苦肉の策が、「ストリーミング配信サービス」なのだろうと考えられますが、しかし、それでも異次元の敵への対抗手段としては少々弱い気がします。
コンテンツ・デフレがもたらす最悪の事態は「新しいコンテンツが生まれなくなること」で、その前兆現象として起こるのが「過去コンテンツの使い回し」です。これは、クリエイターが疲弊するなり、夢や希望を失うなりした結果、新しいコンテンツを生み出す力を失うことで発生する現象です。(他にも色々要因はあるんだろうけど割愛)
例えば、最近街で流れている音楽に耳を傾けてみると「妙に懐メロが多いな」と思ったりしたことはありませんか?(それです)
この「0円との戦い」という消耗戦は、既に最終局面まで進んでいます。
万策は尽き、このまま音楽は死ぬのか...
二次創作プラットフォーム
普段より少しばかり前置きが長くなりましたが、ここから記事のタイトル通りの話題(いつもの妄言)に戻ります。
SUZUKI PLANは、ジリ貧に陥った音楽業界を復活させるためには音楽のコンテンツ価値を引き上げる必要があると思っていて、その為に有効な手段が異次元プロモーションであり、それを実現する上でのベストな手段は、着メロの復活だと考えています。
iTunesは、音楽業界のPlace(流通)に革命を起こしました。Product(商品)の内、コンテンツの入れ物=器も、CDプレイヤーからiPod / iPhoneに変えました。しかし、Promotion(販促)のやり方の根本は変わっていません。そこで、次に起こすべきトレンドはプロモーション革命だというのが私の考えです。原盤のProductとPriceには関与しませんが、価値は実質的に上がるであろうと予測しています。
ただし、着信メロディそのものにそこまでの価値は無いと思います。
実際、私の携帯電話の着信メロディは昔から「ピピピッ」という機械音ですし、今の携帯電話だとそういう音すら入っていないことがよくあるから、自分でわざわざ矩形波生成装置を使って昔ながらの「ピピピッ」という音のAACを作って着メロにしています。ある意味、拘りがあると言えるのかもしれませんが、私の電話はそもそも鳴らない。私には電話をしてくれる友人も恋人もいないからかもしれませんが、それはさて置き、SNSの普及などで電話の使用頻度は世界的に少なくなっている筈です。
より正確に言えば、着メロの頃の、チップチューンにより制限された表現範囲のコンテンツ・フォーマットによる二次創作コンテンツ・プラットフォームを世界レベルで流行らせる必要があると考えています。
図示するとこんな感じでしょうか。
これにより、原盤の「コンテンツ価値」を引き上げることで、原盤のコンテンツ・デフレを脱却し、音楽業界を復活させることができるなどというぶっ飛んだことを、割と本気で考えています。ただし、生き残れるのは「二次創作に対して寛容な原作者に限り」となるかもしれませんが、その点はあまり問題無いと思います。
私も「一応クリエイターの端くれ」だと思っているので、クリエイターの立場で考えてみると、二次創作して貰えることは、自分の作品を愛して貰えることの現れだと思うので単純に嬉しいです。淫夢ネタにされたりすると流石にドン引きされるクリエイターも居るかもしれませんが、私ならそれすら嬉しい。一番悲しいことは誰の目にも留まらず消えていくことなので。
原盤のコンテンツ価値を引き下げることがあってはならないので、表現の制限の度合いがキーポイントになります。そのため、着メロみたいに64和音や128和音といったハード思考(垂直思考)的な進化はNGです。垂直思考的な進化をしてしまうと再現性が上がりすぎることで「安価な原作の劣化版」になり、原盤の価値を下げることになるので。
私はマゾなので、制限がキツければキツいほど燃えるのですが、キツ過ぎてもダメです。創造性を発揮する余地が少なくなってしまうので。
創作性を発揮出来る必要最低限のバランスで「制限をデザイン」する必要があります。VGSの波形メモリ音源のスペックは、そういったバランス感覚でデザインしました。
ちなみに、LINE musicなどでは、原盤権が処理できていない楽曲をオルゴール・アレンジという形(=制限が施されたコンテンツ・フォーマット)で配信していますが、このコンテンツ・フォーマットに対するユーザーの反応は酷く不評です。そもそも、LINE musicのユーザーはオルゴール・アレンジではなく原盤を聴きたい訳なので、当然のことかもしれませんが。
ところが、私が配信している東方BGM on VGSは多くのユーザーの心を掴むことに成功しました。この成功要因を以前「よく分からない」と書いたかもしれませんが、実のところ私自身、それは「創作性」の一点だったと確信しています。
LINE musicのオルゴール音源は、言ってみれば「単なる工業製品」で、そこに創作性は殆ど有りません。むしろ、工業製品だからこそ、そういうムラっ気のあるものがあることの方が問題になります。だから、純粋に音楽コンテンツとして楽しむような代物ではなく、単なる数合わせだと考えられます。
東方BGM on VGSは、アプリの説明文で「なるべく原曲に似せようとしている」と書いてますが、実のところ、全曲「完全に俺色に染めてやるぜ!」ぐらいの考えの基で編曲しています。要するに、東方Projectの音楽を「再現」するのではなく、僕が考えた最強の東方Projectの音楽をVGSという制限されたコンテンツ・フォーマットの中で「表現」しています。ムラっ気を排除するのではなく、逆にムラっ気を全力全開で放出しました。
先ほど、着メロ時代の筆頭としてドワンゴの16メロミックスを例に挙げましたが、16メロミックスの成功要因も創作性が介在していたことなのかもしれません。ち○こ音頭とか2ch広告とかTVCMなど、その辺のプロモが印象に残っている人が多いかもしれませんが、プロモなんてプロダクトに価値が無ければ何の意味も成しません。
そういえば、以前ドワンゴの川上会長が書いた本に、16メロミックスについて「音割れしてもいいから音を大きくしてみたらウケた」みたいなことが書かれてましたが、それも一種の創作性かな(これは機械的に実現できることですが)。
この「音を大きく」というのは、Logic Pro Xを持っている人なら割と簡単に違いを確認することができます。バウンスする時にノーマライズをoffにした状態とon(default)にした状態で出力したmp3を聴き比べてみてください。多分、第三者に聴かせてみると、殆どの人は「offの方が良い」と言う筈です。しかし、プロのミュージシャンに聴かせてみると(offの方は)「音が割れてるんじゃね?」と怪訝な顔をすると思います。ちなみにVGSは同時発音数を6音に絞り単音のパワーを引き上げることで、これと同じ(かつ、プロミュージシャンが怪訝な顔をしない)ような効果を狙っています。ディジタルサウンドの場合、鳴らす音の数(同時発音数)を多くすると単音のパワーが落ちてしまう特性があるので、同時発音数が少ない方がこの(音量面で)良いと思わせる音楽が作り易くなります。(だから、末期の頃の着メロのように64和音, 128和音と和音数を増やしていったのは割と無意味なことで、恐らくベストなのはPC-8801の頃のYM-2203ぐらいのスペックです)なお、東方BGM on VGSは、プラットフォームではなく、そのプラットフォームのコンテンツ・フォーマットに則った「コンテンツ」です。プラットフォームはまだ創っていません。
プラットフォーム
プラットフォームを創るには、以下3つのものが必要です。
- コンテンツ
- 器(コンテンツの入れ物)
- マーケット(コンテンツを入手できる場所)
一番重要なのはコンテンツです。
VGSの音楽コンテンツで成功できることは、東方BGM on VGSのヒットでそれとなく感じています。ただし、「東方だったからじゃね?」と内心では思っていたりしますが。
コンテンツではなく、コンテンツ・フォーマットで成功できることの確信が欲しい。
なので、東方以外でも試したいのは山々なのですが、権利関係上それは中々厳しい。
(できることなら、FFとかロマサガとかドラクエとかでもやってみたい...)
妥協案として、スマホの東方二時創作アプリの中でトップの人気を獲得できれば、このコンテンツ・フォーマットの価値は本物だと判断できると考えておくことにしました。それでもまだ弱いんじゃないかと思っている節もあるのですが、ここを突き詰めるとキリがない。
「器をどうやって創るのか」は、私がこのプラットフォームの必要性を感じた1990年代の中旬頃(※)だとかなり悩ましい大きな課題でしたが、スマートフォンが普及した今なら、アプリとして作ってしまえば良いだけのことです。
着メロを槍玉に挙げてますが、私が本当に復活させたいのはチップチューン(パソコンのYM-2203の頃のFM音源)なので、携帯電話で着メロが流行る以前から、構想していました。着メロのヒットで一度は「私がやる必要はないね」と思ったりもした時期もありましたが。
器
という訳で「器」をつくってみました。
iTunesで言うところのiPodに相当するものなので、本当は VGS Pod という名前にしようとしたのですが、リジェクトが恐かったので、シンプルに「VGS BGM Player」という名称にしました。
SUZUKI PLANとして最初のスマートフォンアプリです。
一応スマホアプリは今まで十数本リリースしてますが、全部VGSで作っているので、純粋なスマートフォンアプリはこれが初です。
デザイン的には全面的に「音楽」を表現したかったので、楽譜をイメージした白ベースのモノクロ・フラットで作成。
東方BGM on VGSはブラックイメージなので、それとの対称性も意識。
†SUZUKI PLANの光と影† みたいな、ちょっと厨二っぽい感じが欲しかった。
私が音楽をやり始めたのが中学生の頃からだったということで。
そんなことは、パッと見では全然分からないと思いますが。
(一目でここまで見抜ける人は完全にエスパーですね)
なお、iOS専用です。
Androidには対応しません。
私はプログラムを作るスピードが物凄く速いから、作るだけならすぐに作れる(このiOS版も実働換算での制作期間は3〜4日ぐらいで完成した)のですが、Androidは(OSとデバイス側の)品質面の問題がネックです。東方BGM on VGSのレビューでも度々指摘されてますが、バックグラウンド動作時に音飛びするという件です。あれはアプリ側ではどうしようも無いことなので、OSやデバイス側で改善してくれないとどうしようもありません・・・というのは建前で本音は別にあるのですが、その点は色々とお察しください。
マーケット
今回作ったのは、飽くまでも器(Pod)です。
iTunes Storeに相当する「マーケット」を整備していないので、まだ「プラットフォーム」では無く、単なる音楽プレイヤーです。
今の所、Dropboxに入れた音楽データをインポートする感じで使います。
Appleのエコシステムの外でデータのやり取りができるので、作ろうと思えばマーケットはアプリの外でも作れます。なので、やろうと思えば、同人ショップでデータだけ売ることもできますね。なお、自作のVGSデータをSUZUKI PLANを介さず同人ショップやコミケ、或いは別のeコマース手段で販売するのは全く問題ありません。
このアプリですが、恐らくそんなにダウンロードされないでしょうね。
マーケットが無いので。
当面はGitHubで公開している東方BGM on VGSの曲データをインポートするぐらいの用途でしか使え無いので、ニーズはそんなに無い筈です。また、東方BGM on VGSが目当ての方にこのアプリを使っていただくことを目的にするのは(このアプリは普通にマネタイズしている関係で)マズイと思うので、東方BGM on VGSについては今まで通りの形で(もちろん、Android版も含めて)無料で提供し続けます。
本当の勝負は「マーケット」を作ってから。
OTK!
まるで連載打ち切りみたいな終わり方で不吉な感じですが、実際、マーケットを作る目処は全然立っていません。(主に、原作者から使用許諾という点がアキレスだろうと思っています)
VGS BGM Player を AppStore で入手
https://itunes.apple.com/us/app/vgs-bgm-player/id1056898557?l=ja&ls=1&mt=8