2015年11月25日水曜日

ぼくの夢

まるで、小学生の作文のタイトル見たいな見出しで恐縮ですが、書いてあることも、だいたいそんな感じの内容です。もう直ぐアラフォーにリーチがかかるおっさんが語るには、あまりにも純情無垢で、ピンク色の妖精たちが飛び交うお花畑みたいな脳内コンテンツを惜しげもなく展開した内容となっております。という訳で、軽い気持ちで読み捨てるか、もしも貴方が寛容な大人であれば、聖母のような眼差しで読んで頂ければ幸いです。

市場概況


社団法人日本レコード協会の「日本のレコード産業」の資料(2015年版)によると、1952年(昭和27年)〜2014年(63年間)の音楽ソフト生産金額は下図のように遷移しています。
※上記は資料から数値をExcelで(目コピーで)打ち込んで出したものなので、もしかすると間違っている箇所があるかもしれません。

「日本の音楽産業は終わっている」などという話をよく聞きますが、具体的には、1998年の約6000億円をピークに凄い勢いで下がり続けていることが分かります。例外的に2010年代に一度パルス的な回復が見られますが、握手券的な何かかな?(もはや過去のネタですね)

上記は音楽ソフト(レコード、CD、音楽ビデオ)の生産金額の遷移なので、インターネット等での有料音楽配信を加えれば、トータルでは伸びているんじゃないか?と思われるかもしれませんが、下図に音楽ソフト生産金額にインターネット等での有料配信の売上金額を上乗せしてみたものを示します。
※生産額(ソフト)に売上(配信)を加えているため、総数は意味を成さない数字になっているので、上図はグラフの形だけ見て下さい(利益率は年次でそんなに変化しないので、形としては概ね正しくなると思います)

2005年〜2007年まではトータルで微増してますが、2008年ぐらいからトータル減となり、以後(2012年の例外を除けば)下落が続いています。

日本は、有料音楽配信で失敗しました。

別に媒体は何でも良いと思います。

しかし、トータル減転したということは、ダメだったということでしょう。

ですが、有料音楽配信が完全に失敗だったのかというと、それは違うと思います。
実際、2005年〜2007年ぐらいまでは、トータルでは伸びていた訳なので。
微増程度ではありますが。

最初の図を、ピーク時(1998年)から2014年までの間にフォーカスしてみます。
すると、1998年〜2004年に掛けて、急激に下落していた音楽ソフトの生産額が、2004年から2007年に掛けて一度下落幅が緩くなっていることが分かります。先ほどの図で示したように、2005〜2007年は有料配信とのトータルで前年比+だったので、その時の有料配信は、音楽ソフトの売上減少に歯止めを掛けつつ、トータルで前年比プラスに転じることができていました。そのため、その時期の音楽業界は、実績値から見ても「上手くいっていた」と言えると思います。
(参考情報: 1998以降の世の中の主な出来事)
1998年: 長野オリンピック、松坂(横浜)高校で活躍、Kiroro爆誕
1999年: NTT docomo iモード (s-in)、坂本龍一・裏BTTB(energy flow他)
2000年: 3月, 高校のクラスメートi君が卒業式に突如金髪で登校し, 通称「ミレニアム」と呼ばれる
2001年: 映画「千と千尋の神隠し」公開、iTunes誕生(Macのみ無料)
2002年: 社会人1年目, 花見の席で同僚がガンダムの話に興じており, ガンダムを1ミリも知らなかった私は酒の勢いで「俺がガンダムだ!」と発言し, パーティーの主役になる(その数年後, ニコニコ動画で同セリフが一時的に流行って割とビビったのだが, どうやら原作でも同セリフが使われていたらしいことを2008年頃に知る)
2003年: 朝青龍が第68代横綱に昇進、SARS流行、iTunes Store(s-in)
2004年: ふたりはプリキュア、音楽番組の視聴率低迷、VOCALOID販売開始
2005年: 音楽ミリオンセラー2年連続皆無
2006年: ニコニコ動画(s-in), タワーレコード破産 ※2004年以来2度目の破産(タワーレコードは二度死ぬ)
2007年: 初代iPhone(+iPod touch)誕生: 以後3G(2008), 3GS(2009), 4(2010), 4s(2011)...
2008年: SUZUKI PLAN活動開始(この辺からは概ね記憶がホットなので省略)

日本の有料音楽配信


日本で有料音楽配信が普及した最初のキッカケは携帯電話の「着メロ」です。

Wikipediaによると、日本の着メロは1994年にテレメッセージポケットベルモーラが着信メロディ機能を搭載したことに始まり、2000年に世界初の16和音再生に対応したLSI(クアルコム社製)を搭載したauのcdmaOne端末C309H(日立製作所)が発売されたとのことです。そして、2005年には64和音 - 128和音対応が一般的になったとか。

一番最初の着メロサービスは、私の記憶が正しければJ-Phoneのスカイメロディ(1998年s-in〜2010年終了)でした。

参入障壁が低かったためか、大小色々な会社が着メロサービスに参入しました。
今はニコニコ動画で有名なドワンゴの16メロミックスとかがかなりヒットしていましたね。
このCMで流れている曲は、ち◯こ音頭かな?懐かしいですねぇ。
私の記憶では歌詞も流れていた筈ですが、インストゥルメンタルだったんですね。
TVCMだから萎縮してしまったのかな?(ち◯こだけに!!)

他にも色々とあったと思いますが、筆頭は16メロミックスだったという印象。
いや、私がそっち系の人間だから贔屓しているとかそういう事ではなく、確か着メロ業界全体の20%ぐらいを取っていたとか、何処かに書いてあったような気がします。

しかし、着メロブームは割と一瞬で終了しました。

着メロブームは、技術的な進化で携帯電話の通信が高速化されたり、圧縮技術も進化し、チップチューン音源(LSI音源)よりも安価なPCM音源のみを搭載した携帯電話が一般化したことで、技術的な意味でオブソリートになり(つまり、消費者ニーズとは関係ないところが原因で)終了しました。

技術の進化スピードが速すぎたことも不幸でした。
その為に、大きな市場形成をする前に埋もれていってしまったので。

惜しい。

実に惜しい。

しかし、コスト競争も激しかったし、PCM音源ならチップチューン音源の曲も再現できるという、垂直思考的な考え方(私が最も忌み嫌う考え方)で、着メロは次第に消えていき、着メロのブーム終了に伴って、日本の有料配信市場は縮小の一途を辿りました。

世界の有料音楽配信


世界的には、日本の着メロブームのようなことは起こりませんでした。
着メロブームは、ガラパゴス・ジャパン限定の流行だったようです。
世界の有料音楽配信は、日本に遅れること数年後、iTunesの登場により普及しました。
日本のレコード産業」の資料(2015年版)より抜粋
iTunesは2001年に登場し、2003年に iTunes Store がs-in。
そして、2006年に爆発的に成長。
その後もiPhone普及なども追い風となって、パッケージ売上を侵食。
2014年にはパッケージ売上と並ぶまでに成長しました。
日本のソレとは違い、世界は有料音楽配信に大成功を収めたと言えます。
なお、先ほどから「世界」と書いてますが、音楽売上の大半は日本と米国が占めているので、実質的には 世界=米国 です。
iTunesの登場は衝撃的な革命でした。
しかし、それが音楽業界を潤すことはありませんでした。
この点については異論がある方も居るかもしれません(その点については後で解説します)が、事実、売上は年々低下してますし、iTunesの伸び率も低くなってきています。

iTunesは、単にコンテンツの「器」(だからiPod) をすり替えただけです。
つまり、コンテンツそのものの価値は変えていません。
そこにあるのは、単なる ディジタル化されたタワーレコード です。

「単なる」とは書いてみましたが、コンテンツがどのようなメディアで配られているのかという議論は、マーケティング上かなり重要なことです。折角「マーケティング」という言葉が出てきたので、マーケティング視点で(古典的な「マーケティングの4P」というヤツで)説明してみます。

iTunesは、音楽業界のPlace(流通)に革命を起こしました。
Promotion(販促)のやり方も変えたかもしれません。
Product(商品)の内、コンテンツの入れ物=器も、CDプレイヤーからiPod / iPhoneに変えました。
しかし、コンテンツ(Product)とその価値(Price)は据え置きにしています。

つまり、iTunesが起こしたのは、音楽業界の流通革命です。

これは、あのタワーレコードが倒壊するほどのもの凄く大きな革命だった訳ですが、消費者にとって見れば、「利便性が良くなった」とは感じるかもしれませんが、音楽そのものの価値は何も変化していません。

だから、iTunesは、有料音楽配信の促進には大きく貢献したものの、ジリ貧に陥った音楽業界を蘇らせる起爆剤にはなりませんでした。

薄い本と原作の話


日本と世界の有料音楽配信の事情を(かなり)ざっくりと解説してみましたが、同じ「有料音楽配信」ですが、日本と世界のそれは本質的に別のものです。日本の着メロと世界のiTunesの違いは「薄い本」(同人誌)と「原作」の関係に似ています。

電子書籍で購入したマンガの紙版も購入する人は居ますか?

信者なら当然両方買うでしょう。

電子書籍なら汚れないので「読む用」に電子書籍、
「保管用」に紙本1冊、
「布教用」に紙本をもう1冊。

しかし、そんな人はごく稀です。
恐らく、99%以上の人はどちらか一方しか買わないと思います。
何故なら、どちらも中身(コンテンツ)は同じものなので。

それでは、「ゆるゆり」の薄い本(同人誌)を購入した人は、果たして原作の「ゆるゆり」を買うでしょうか?

これは当然ほとんどの人がYesでしょう。

Yes! Yuru-Yuri!

原作は原作、薄い本は薄い本という風に、「別のもの」として楽しむのが多勢です。
逆のパターン(本家→薄い本)だと、人数はぐっと減ると思いますが、それでも「電子書籍で購入したマンガの紙版を購入する人」よりも、比率としては確実に多いことは想像できると思います。
「薄い本→原作」という図式だとちょっとイメージし難いかもしれませんが、例えばアニメ(※原作付き)なども一種の二次創作と考えればイメージし易いかもしれません。ただし、アニメの場合「原作忠実路線」みたいなものが結構多いので、ちょっとアレかもしれませんが。私はアニメにはあまり詳しくないのでよく分かりませんが、例えば、原作忠実路線以外の手法で上手くいっている例としては、「ひだまりスケッチ」や「化物語」など(シャフト作品)。これは、原作と時間軸をズラす手法でアニメ化している(=二次創作要素が強い)ので、原作忠実路線のアニメ作品と比べて原作へのコンバージョン率が高いと思います。結構原作の種類が限られる手法なので、下手に真似して爆死している作品も多いような気もしますが。特にいわゆる日常系モノの場合、単純にこの手法を真似てしまってもそもそも時系列があまり原作でも気にならないから効果は薄いと考えられます。しかし、ひだまりスケッチの場合、日付をタイトルにすることで作為的に時系列変化を視聴者に意識さるなど、非常に巧妙かつ原作のイメージを崩さずネチュラルに創作性が入っていて絶妙。私はアニメには詳しくないので、あまり詳しいことはよく分かりませんが。古い例ばかりだと分かり難いと思うので、今年放映されたアニメで二次創作性が上手く機能していた作品は「響け!ユーフォニアム」とかですかね。原作小説すごく面白かったです。「お前、一瞥し過ぎだろ」と何度かツッコミを入れそうになったのですが、青春時代に赤川次郎作品を読んでいて「お前、踵を返し過ぎだろ」と突っ込んでいたことを思い出し、思わず目が細くなりました(...このネタが通じる人は、果たしてどれぐらい居るのだろうか)。
何を言わんとしているかお察し頂けたでしょうか?

要するに、
  • 着メロで配信されていたのは薄い本(二次創作)
  • iTunesで配信されているのは電子書籍(原盤)
という事です。

着メロは、飽くまでも「二次創作」なので、原盤の売り上げに影響しません。
そのため、原盤+着メロの著作権使用料+プロモーション効果の収益が音楽業界に入ることが見込めたと考えられます。
「プロモーション効果」について補足しておくと、着メロのダウンロードサイトはサブスクリプション型(月次で会費徴収されるタイプ)でダウンロードし放題というものが多かったので、それを通じて曲のプロモーションをすることで、原盤が売れる可能性が広がるというものです。二次創作と原盤は別物だからこそ成立するという、現代の音楽業界には無い特殊&強力なプロモーション効果が得られていた筈です(途中でブームが終了しなければ、コレが数値として実感でき、チップチューンが死なずに済んだかもしれません...)。

著作権使用料の収入は、音楽業界全体の売り上げ規模から見ると微々たるものです。しかし、プロモーション効果は絶大だったと想定されます。その反面、明確な数値としては拾いにくい部分でもあります。

先ほど「実に惜しい」と言ったのはその点です。

着メロブームが終わった後、2002年頃から売り上げが急速に落ち始め、2004年から2005年の間に2年連続ミリオンセラーが一本も出なかったという小さな事件が起こりましたが、これはそのプロモーション効果を失ったことによる影響だと私は分析しています。

もちろん、音楽は水物なので、不作 or 豊作の年があるのも当然です。しかし、この時の下落はあまりに急激なので、少なくとも自然現象による下落でないことだけは確かだと言えます。

この時の市場関係者は、これをどのように分析していたのか?

2003年以前の社団法人日本レコード協会の資料には、「業界の課題」について記されているのでそれを確認してみると、だいたい「インターネットの普及+違法コピーが悪い」の一点張りでした。確かその頃は、winmxやwinnyといったP2P型のファイル交換ソフトで違法コピーが横行していたと思うので、恐らくその辺の事を言っているのだろうと思います。

つまり、完全にそっちの方に目が向いてしまい、マーケティング視点での分析とかには目が行ってなかったものと考えられます。ディジタルコンテンツの場合、違法コピーの横行による影響は確かに驚異的なので、「インターネットの普及+違法コピーが悪い」の一点張りだったのは、仕方がないことかもしれません。

そんな不運が重なったこともあり、技術的な進化という消費者ニーズとは関係ないところで、その宝の山をみすみす捨ててしまった訳です。(技術的な進化が消費者ニーズと常に全く関係ないという事も無いかもしれませんが、少なくともLSI音源からPCM音源に変えたのは消費者ニーズによるものではなく、作り手事情によるものだったと思います)

音楽業界は今、極めて危機的な状況にありますが、私は、もしも着メロを捨てていなければ、現在の危機も脱せられていたのではないかとすら思っています。

現在の危機的な状況とは、コンテンツ・デフレです。

コンテンツ・デフレ


現在のコンテンツ・デフレがどの程度深刻な状態なのか、データを基に解説します。
以下に、日本のレコード生産額ピーク時(1998年)から現在(2014年)に至るまでの「新譜数」の遷移を示します。
新譜数(枚/年)の遷移
大幅な下落をしていた生産額と比べて、多少の上下はあるものの単調増加・単調減少は見受けられないサイン波形状です。そのため、「大枠では変化していない」と見ることができます。

生産額は落ち込んでいるのに新譜数は変化していない...!?

この点を分かり易くするため、生産額÷新譜数としたものを下図に示します。
新譜の平均生産単価(単位:百万円)
綺麗なお椀型の謎のデータがありますが、それは見なかったことにしましょう。

生産額ベースでの下落開始は1998年ですが、実際の所、2002年までの間の生産単価は落ち込んでおらず、むしろ上昇しています。これが意味することは、「単純に売れる新譜が出ていなかった(少なかった)」ということです。

しかし、2002年から2014年に至るまで、(握手券パルスを除けば)新譜の生産単価が凄い勢いで落ち続けています。2002年というと私がガンダムだった頃(就職氷河期の大不況)ですね。それにしても下がりすぎでしょう。その後、多少景気が良かった時期もあったのに、生産単価は落ち続けています。

先述したファイル交換ソフトによる違法コピーは、コンテンツ・デフレを進めた大きな要因の一つです。しかし、ファイル交換ソフト利用者数は法整備による取締り強化や消費者のネット利用形態の変化(スマホ移行)などが功を奏し、2014年時点で5年前の十分の一程度まで減少しています。この程度のボリュームまで萎めば、日本レコード協会が分析しているように、違法コピー「だけ」が原因だったと仮定すると、プラスに転じていてもおかしくない筈です。しかし、2009年頃から生産単価の下落に歯止めが掛かっているものの、デフレ脱却には至っていません。

2014年には、ピーク時(2002年)の半分以下(45%)にまで落ち込みました。

これは、日本のデータですが、世界的に見ても同じような傾向です(ただし、最大市場のアメリカでは有料配信が成功しているので、利益率基準で見てみると話は変わってくるかもしれませんが)。

iTunesは、音楽業界を「死なせないこと」には成功したと思います。

ただし、「iTunesがあったから音楽業界が死ななかった」と売上データ上からは判断できませんが。世界の売上データをよく見てみると、1999年から2002年にかけて下落していた世界の音楽市場の売上は、2002年ぐらいから下げ止まっています。iTunesがリリースされたのは2001年で、時期的には「iTunesが下げ止めた」ように見えるかもしれませんが、その時のiTunesには未だ「マーケット」が無いので、そこまでの力があったとは思えません。

iTunesがマーケット(iTunes Store)をs-inさせたのは2003年からで、データ上頭角を表すのは2006年以降なので、「2002年の下げ止まりがiTunesによるものだった」とは判断できません。その点を踏まえてデータから判断できることは、iTunesは全体のパイを伸ばさずパッケージ売上を奪っていったということです。

ファイル交換ソフトによる違法コピー問題は日本に限った問題ではなかった(英語ですがこちらの資料などを参照)ので、全体のパイは伸ばせなかったものの、日本ほどの大幅な下落を生まなかったという点は、iTunesのいわゆる「箱庭スタイル」と呼ばれる戦術が功を奏していたのではないかと考えられます。

しかし、今年の動向の一つとして、Apple Music他のいわゆるストリーミング配信サービスの台頭がありましたが、これらも音楽業界復活の起爆剤にはならないと思いますが、確実にPriceを引き下げに掛かっているので、コンテンツ・デフレを加速させる悪手になるのではないかと私は考えています。

違法コピー以外の要因


コンテンツ・デフレ(Price下落)が止まらない要因は一体何なのか...

分かんないですねー(棒)

何が何やら全然分からないのですが、この記事の真実2とかで面白おかしく書かれている内容のことかな?

逆SEO(というよりGoogle八分)対策でこのキーワードは出さない方が良いかな?と思いましたが、どう考えてもこのキーワードを出さずに説明するのは無理があるので諦めます。要するに、YouTubeが今のコンテンツ・デフレを進めている原因だろうと考えられます。

そのことは、先ほどの「世界音楽売上実績」を見ればよく分かります。
YouTubeが音楽業界にもたらす収益は、上図のシンクロ収入や演奏権収入のみです。また、原盤配信なので(二次創作と違い)原盤へのプロモーション効果などの異次元収入も実質ゼロです。

このスズメの涙ほどの収益を、そこで提供されている全ての原盤コンテンツの再生数で除算すると、果たしてコンテンツ当たりの単価は何セントぐらいになるのでしょうか?しかも、シンクロ収入は、YouTubeが伸び始めた時期から殆ど成長していません。

Googleが買収してから結構経つと思います。
そして、その間に何かしら収益改善策を講じている筈です。
それでも成長できていなくて、2013年から2014年に掛けてシンクロ収入は減少に転じており、また、2014年末に動画配信者への支払いを大幅に減らしたことが少しだけ話題になりました。これは要するにコスト削減策なので、つまり、事業的に行き詰まっている状態なのであろうと考えられます。

考え得る一番手っ取り早い策は、YouTubeのサービスを閉じてしまうことかな。

「そんな訳ないだろ」と思われるかもしれませんが、私は割と現実味があることだと思っています。実際のところ、YouTubeはまだGoogleにも収益をもたらしていないようですし(ウォールストリートジャーナルの記事を参照)。

今年のYouTubeの動きを具にチェックしてみると、結構「攻め」というか背水の陣みたいな施策が幾らかあったので、客観的に見ていよいよラストスパートかなと感じました。Googleは極めてシビアにサービスの見切りをつけれる企業です。そのため、これでアタリが引けなかったら(当然ながらGoogleにとって価値がある部分だけ残した上で)引っ込めるなり事業売却するなりしても、何も不思議はありません。

しかし、万が一にもYouTubeが引っ込んだとしても、戦局は何も変わらないだろうと思われます。恐らく、第二、第三のYouTube的な何かが出てきたり、再び違法コピーが猛威を振るう可能性も十分に考えられるので。

「音楽なんてタダで聴けて当たり前でしょ」
という空気感が既に定着してしまっていることが問題です。
コンテンツ・デフレの敵とは、その空気感です。

そもそも、コンテンツの値段というのは、決まった原材料費+間接費で作れる工業製品などと違い、消費者にとって極めて分かり難い存在です。そのため、消費者にその価値を認めて貰うことが極めて難しいものです。それ故に、この「空気感」に対抗するのは極めて困難なことです。

そのため、YouTubeが引っ込むか引っ込まないかに関係なく、何らかの対抗策を練る必要があります。

しかし、0円と1円の間には、極めて大きな壁があります。
0円と1円は別次元のものと言っても過言ではないでしょう。
だからこそ、ファイル交換ソフトを犯罪行為だと知りながら、それ利用する人が後を立たなかったのだろうと思います(私は使った事が無いけど)。

犯罪行為であれば、取締り強化や法整備などの策が打てるかもしれませんが、YouTubeは原盤使用料を支払っている筈なので、違法コピーとは違います。そのため、簡単には対策できません。違法コピーの対策も簡単ではありませんが、それとは次元が違うレベルで難しいと思います。

そんな手詰まり感満載の中で出てきた苦肉の策が、「ストリーミング配信サービス」なのだろうと考えられますが、しかし、それでも異次元の敵への対抗手段としては少々弱い気がします。

コンテンツ・デフレがもたらす最悪の事態は「新しいコンテンツが生まれなくなること」で、その前兆現象として起こるのが「過去コンテンツの使い回し」です。これは、クリエイターが疲弊するなり、夢や希望を失うなりした結果、新しいコンテンツを生み出す力を失うことで発生する現象です。(他にも色々要因はあるんだろうけど割愛)

例えば、最近街で流れている音楽に耳を傾けてみると「妙に懐メロが多いな」と思ったりしたことはありませんか?(それです)

この「0円との戦い」という消耗戦は、既に最終局面まで進んでいます。

万策は尽き、このまま音楽は死ぬのか...

二次創作プラットフォーム


普段より少しばかり前置きが長くなりましたが、ここから記事のタイトル通りの話題(いつもの妄言)に戻ります。

SUZUKI PLANは、ジリ貧に陥った音楽業界を復活させるためには音楽のコンテンツ価値を引き上げる必要があると思っていて、その為に有効な手段が異次元プロモーションであり、それを実現する上でのベストな手段は、着メロの復活だと考えています。

iTunesは、音楽業界のPlace(流通)に革命を起こしました。Product(商品)の内、コンテンツの入れ物=器も、CDプレイヤーからiPod / iPhoneに変えました。しかし、Promotion(販促)のやり方の根本は変わっていません。そこで、次に起こすべきトレンドはプロモーション革命だというのが私の考えです。原盤のProductとPriceには関与しませんが、価値は実質的に上がるであろうと予測しています。

ただし、着信メロディそのものにそこまでの価値は無いと思います。
実際、私の携帯電話の着信メロディは昔から「ピピピッ」という機械音ですし、今の携帯電話だとそういう音すら入っていないことがよくあるから、自分でわざわざ矩形波生成装置を使って昔ながらの「ピピピッ」という音のAACを作って着メロにしています。ある意味、拘りがあると言えるのかもしれませんが、私の電話はそもそも鳴らない。私には電話をしてくれる友人も恋人もいないからかもしれませんが、それはさて置き、SNSの普及などで電話の使用頻度は世界的に少なくなっている筈です。
より正確に言えば、着メロの頃の、チップチューンにより制限された表現範囲のコンテンツ・フォーマットによる二次創作コンテンツ・プラットフォームを世界レベルで流行らせる必要があると考えています。

図示するとこんな感じでしょうか。
これにより、原盤の「コンテンツ価値」を引き上げることで、原盤のコンテンツ・デフレを脱却し、音楽業界を復活させることができるなどというぶっ飛んだことを、割と本気で考えています。ただし、生き残れるのは「二次創作に対して寛容な原作者に限り」となるかもしれませんが、その点はあまり問題無いと思います。
私も「一応クリエイターの端くれ」だと思っているので、クリエイターの立場で考えてみると、二次創作して貰えることは、自分の作品を愛して貰えることの現れだと思うので単純に嬉しいです。淫夢ネタにされたりすると流石にドン引きされるクリエイターも居るかもしれませんが、私ならそれすら嬉しい。一番悲しいことは誰の目にも留まらず消えていくことなので。
原盤のコンテンツ価値を引き下げることがあってはならないので、表現の制限の度合いがキーポイントになります。そのため、着メロみたいに64和音や128和音といったハード思考(垂直思考)的な進化はNGです。垂直思考的な進化をしてしまうと再現性が上がりすぎることで「安価な原作の劣化版」になり、原盤の価値を下げることになるので。
私はマゾなので、制限がキツければキツいほど燃えるのですが、キツ過ぎてもダメです。創造性を発揮する余地が少なくなってしまうので。
創作性を発揮出来る必要最低限のバランスで「制限をデザイン」する必要があります。VGSの波形メモリ音源のスペックは、そういったバランス感覚でデザインしました。

ちなみに、LINE musicなどでは、原盤権が処理できていない楽曲をオルゴール・アレンジという形(=制限が施されたコンテンツ・フォーマット)で配信していますが、このコンテンツ・フォーマットに対するユーザーの反応は酷く不評です。そもそも、LINE musicのユーザーはオルゴール・アレンジではなく原盤を聴きたい訳なので、当然のことかもしれませんが。

ところが、私が配信している東方BGM on VGSは多くのユーザーの心を掴むことに成功しました。この成功要因を以前「よく分からない」と書いたかもしれませんが、実のところ私自身、それは「創作性」の一点だったと確信しています。

LINE musicのオルゴール音源は、言ってみれば「単なる工業製品」で、そこに創作性は殆ど有りません。むしろ、工業製品だからこそ、そういうムラっ気のあるものがあることの方が問題になります。だから、純粋に音楽コンテンツとして楽しむような代物ではなく、単なる数合わせだと考えられます。

東方BGM on VGSは、アプリの説明文で「なるべく原曲に似せようとしている」と書いてますが、実のところ、全曲「完全に俺色に染めてやるぜ!」ぐらいの考えの基で編曲しています。要するに、東方Projectの音楽を「再現」するのではなく、僕が考えた最強の東方Projectの音楽をVGSという制限されたコンテンツ・フォーマットの中で「表現」しています。ムラっ気を排除するのではなく、逆にムラっ気を全力全開で放出しました。

先ほど、着メロ時代の筆頭としてドワンゴの16メロミックスを例に挙げましたが、16メロミックスの成功要因も創作性が介在していたことなのかもしれません。ち○こ音頭とか2ch広告とかTVCMなど、その辺のプロモが印象に残っている人が多いかもしれませんが、プロモなんてプロダクトに価値が無ければ何の意味も成しません。

そういえば、以前ドワンゴの川上会長が書いた本に、16メロミックスについて「音割れしてもいいから音を大きくしてみたらウケた」みたいなことが書かれてましたが、それも一種の創作性かな(これは機械的に実現できることですが)。
この「音を大きく」というのは、Logic Pro Xを持っている人なら割と簡単に違いを確認することができます。バウンスする時にノーマライズをoffにした状態とon(default)にした状態で出力したmp3を聴き比べてみてください。多分、第三者に聴かせてみると、殆どの人は「offの方が良い」と言う筈です。しかし、プロのミュージシャンに聴かせてみると(offの方は)「音が割れてるんじゃね?」と怪訝な顔をすると思います。ちなみにVGSは同時発音数を6音に絞り単音のパワーを引き上げることで、これと同じ(かつ、プロミュージシャンが怪訝な顔をしない)ような効果を狙っています。ディジタルサウンドの場合、鳴らす音の数(同時発音数)を多くすると単音のパワーが落ちてしまう特性があるので、同時発音数が少ない方がこの(音量面で)良いと思わせる音楽が作り易くなります。(だから、末期の頃の着メロのように64和音, 128和音と和音数を増やしていったのは割と無意味なことで、恐らくベストなのはPC-8801の頃のYM-2203ぐらいのスペックです)
なお、東方BGM on VGSは、プラットフォームではなく、そのプラットフォームのコンテンツ・フォーマットに則った「コンテンツ」です。プラットフォームはまだ創っていません。

プラットフォーム


プラットフォームを創るには、以下3つのものが必要です。
  • コンテンツ
  • 器(コンテンツの入れ物)
  • マーケット(コンテンツを入手できる場所)
一番重要なのはコンテンツです。

VGSの音楽コンテンツで成功できることは、東方BGM on VGSのヒットでそれとなく感じています。ただし、「東方だったからじゃね?」と内心では思っていたりしますが。
コンテンツではなく、コンテンツ・フォーマットで成功できることの確信が欲しい。
なので、東方以外でも試したいのは山々なのですが、権利関係上それは中々厳しい。
(できることなら、FFとかロマサガとかドラクエとかでもやってみたい...)

妥協案として、スマホの東方二時創作アプリの中でトップの人気を獲得できれば、このコンテンツ・フォーマットの価値は本物だと判断できると考えておくことにしました。それでもまだ弱いんじゃないかと思っている節もあるのですが、ここを突き詰めるとキリがない。

「器をどうやって創るのか」は、私がこのプラットフォームの必要性を感じた1990年代の中旬頃(※)だとかなり悩ましい大きな課題でしたが、スマートフォンが普及した今なら、アプリとして作ってしまえば良いだけのことです。
着メロを槍玉に挙げてますが、私が本当に復活させたいのはチップチューン(パソコンのYM-2203の頃のFM音源)なので、携帯電話で着メロが流行る以前から、構想していました。着メロのヒットで一度は「私がやる必要はないね」と思ったりもした時期もありましたが。  



という訳で「器」をつくってみました。

iTunesで言うところのiPodに相当するものなので、本当は VGS Pod という名前にしようとしたのですが、リジェクトが恐かったので、シンプルに「VGS BGM Player」という名称にしました。
SUZUKI PLANとして最初のスマートフォンアプリです。

一応スマホアプリは今まで十数本リリースしてますが、全部VGSで作っているので、純粋なスマートフォンアプリはこれが初です。

デザイン的には全面的に「音楽」を表現したかったので、楽譜をイメージした白ベースのモノクロ・フラットで作成。
東方BGM on VGSはブラックイメージなので、それとの対称性も意識。
†SUZUKI PLANの光と影 みたいな、ちょっと厨二っぽい感じが欲しかった。
私が音楽をやり始めたのが中学生の頃からだったということで。
そんなことは、パッと見では全然分からないと思いますが。
(一目でここまで見抜ける人は完全にエスパーですね)

なお、iOS専用です。
Androidには対応しません。
私はプログラムを作るスピードが物凄く速いから、作るだけならすぐに作れる(このiOS版も実働換算での制作期間は3〜4日ぐらいで完成した)のですが、Androidは(OSとデバイス側の)品質面の問題がネックです。東方BGM on VGSのレビューでも度々指摘されてますが、バックグラウンド動作時に音飛びするという件です。あれはアプリ側ではどうしようも無いことなので、OSやデバイス側で改善してくれないとどうしようもありません・・・というのは建前で本音は別にあるのですが、その点は色々とお察しください。

マーケット


今回作ったのは、飽くまでも器(Pod)です。
iTunes Storeに相当する「マーケット」を整備していないので、まだ「プラットフォーム」では無く、単なる音楽プレイヤーです。

今の所、Dropboxに入れた音楽データをインポートする感じで使います。
Appleのエコシステムの外でデータのやり取りができるので、作ろうと思えばマーケットはアプリの外でも作れます。なので、やろうと思えば、同人ショップでデータだけ売ることもできますね。なお、自作のVGSデータをSUZUKI PLANを介さず同人ショップやコミケ、或いは別のeコマース手段で販売するのは全く問題ありません。

このアプリですが、恐らくそんなにダウンロードされないでしょうね。
マーケットが無いので。
当面はGitHubで公開している東方BGM on VGSの曲データをインポートするぐらいの用途でしか使え無いので、ニーズはそんなに無い筈です。また、東方BGM on VGSが目当ての方にこのアプリを使っていただくことを目的にするのは(このアプリは普通にマネタイズしている関係で)マズイと思うので、東方BGM on VGSについては今まで通りの形で(もちろん、Android版も含めて)無料で提供し続けます。

本当の勝負は「マーケット」を作ってから。

OTK!
まるで連載打ち切りみたいな終わり方で不吉な感じですが、実際、マーケットを作る目処は全然立っていません。(主に、原作者から使用許諾という点がアキレスだろうと思っています)

VGS BGM Player を AppStore で入手
https://itunes.apple.com/us/app/vgs-bgm-player/id1056898557?l=ja&ls=1&mt=8

2015年10月19日月曜日

iOSアプリを単純にOSX移植したらリジェクトされた件

拙作のiOSアプリ(東方BGM on VGS)をMac OS X向けに移植して Mac AppStore へ審査を依頼してみたところ、リジェクトを喰らってしまったので、内容を精査しておきます。

リジェクト理由

  • 2.8 - Apps that are not very useful or do not provide any lasting entertainment value may be rejected
  • 3.4 - App names in iTunes Connect and as displayed on Mac OS X should be the same, so as not to cause confusion
  • 5.1 - Apps must comply with all terms and conditions explained in the Guidelines for using Apple Trademark and Copyrights and the Apple Trademark List
  • 6.4 - Apple and our customers place a high value on simple, refined, creative, well thought through interfaces. They take more work but are worth it. Apple sets a high bar. If your user interface is complex or less than very good it may be rejected

詳細


2.8

We found that your app is primarily songs and is therefore not appropriate for the Mac App Store. Songs and movies should be submitted to the iTunes store. For more information about distributing content in the iTunes store, please see iTunes Partner as a Content Provider. If you own or control the song or movie content for digital distribution, or are an authorized representative, complete the iTunes Connect Online Application.

要は、音楽を鳴らすアプリなら iTunes でやれってことですね。

3.4

The app name to be displayed on the App Store does not sufficiently match the name of the app displayed when installed on Mac OS X.(中略)

これは単純にXCodeのプロジェクト設定をミスっていて表示名とアプリケーション名が不一致だったという感じのもの。大した問題ではありません。


5.1

The app uses 'Mac' in the Installed App Name in a manner that is not consistent with Apple's trademark guidelines. Indicating Mac compatibility in the app name is not necessary for the Mac App Store.

これも 3.4 とほぼ同じ。

ミスっていて表示名に「Mac」の文字が出ていたからダメーという感じのもの。
3.4を直せば直るので、これも大した問題ではないです。

審査に出す時は、アプリ名、表示名、メニューの一番左あたりをよくチェックして正しい名前になっているか確認しましょう。1レビューあたり1週間ぐらいの待ち時間が発生するので、趣味ならともかくお仕事とかでこういうミスをすると痛い。(私は趣味でやっているから何も問題ありませんが)

6.4

The user interface is not of sufficient quality. Applications that provide a poor user experience are not considered appropriate for the App Store.
Your app appears to be a mostly unmodified port of your iOS app.
The Mac OS environment is significantly different from the iOS environment, and it is important that your app be a great app on Mac OS X. Multiple windows, windows that resize or go full screen, and control functionality for mouse and keyboard, are some of the many features customers expect in a Mac OS X app, and it's important that your app look and work well in a Mac OS X environment.
For app design information, see the Apple Human Interface Guidelines. The HIG provides in-depth guidance on the characteristics of a great Mac OS X app, and describes the appropriate technologies and interface elements Mac OS X provides to add to your app.
Also available is Programming with Objective-C, a guide to getting started with the Objective-C programming language.


長いですが要約すると iOSアプリの単純移植はダメー とのこと。
Apple Human Interface Guidelineをよく見て、Mac OS Xアプリらしいデザインにせよとかそんな感じの指摘。
言わんとすることは分かりますが、そういう指摘するなら Mac OS X で iOS アプリを動かせれるようにしてくれませんかね?と言いたい。
それならこの指摘は素直に頷けるのですが、それができない現状でこういう指摘をされると、若干モヤっとした感情が生まれなくもない。

2.8 の件は私のアプリ固有の問題ですが、この6.4の指摘に関しては、同じ轍を踏んだ人が結構多いんじゃないだろうか。

さて、どうするか

とりあえず、東方BGM on VGS の Mac OS X版 はお蔵入りにします。
主に 2.8 が致命傷。
実はこの規約、iOSアプリの審査基準にも同じ項目があるので、iOS版の東方BGM on VGSがそれを理由にリジェクトされても何ら不思議はないことだったりしますが。

仮にOSX版を諦めずにやるなら、汎用的なVGS MML playerみたいな感じにするとかになると思います・・・それなら有料で販売することもできちゃいますね。(Mac AppStoreじゃ大して売れないでしょうけど)

なお、東方BGM on VGS は OS X移植を諦めますが、とりあえず何本かリリースした実績を作っておきたいので、今度はInvader Block 2で審査に出そうと思います。

まだ審査には出してないけど、既に作ってあります。
Invader Block 2の Mac OS X版
(画面は開発中のものです)
(ちなみに操作はキーボード専用)

2015年10月14日水曜日

東方BGM on VGS for Mac OS X(リリース予告+α)

そこそこ人気がある拙作のスマートフォン用アプリ「東方BGM on VGS」が、近日 Mac AppStore でリリースされます。(昨日審査に出しました)

という訳で、プレスリリース的な記事でも書いておこうかなと。
リリースされたら私のTwitterアカウント(@suzukiplan)の方で連絡します。

iTunes Connect の管理画面
(OSX版とiOS版がちょうど並んでいたので撮影)
Mac OS X(以下、OSX)版は、iPhone版よりもアイコンが若干小さくなります。

これは、iTunes Connectで私が管理する際のトラブル防止が目的なのですが、iPhoneアプリと違って、OSXアプリはこれぐらいのサイズの余白を取らないと不恰好になってしまうというユーザ目線上の理由もあったり、なかったり。

画面は4inch版のものがベースになっています。
4inch版との違いは、画面上部の時計バーと画面下部の「SUZUKI PLAN - Video Game System」というロゴパネルが無いことぐらいです。(あとは、キーボードのカーソルキーでリストを操作できたりします。キーボード操作については今後拡充予定)

プレスリリース的なものはこんな感じかな。
あとはいつものように駄文を書き綴っておきます。

・・・以下、駄文・・・

iOSアプリをOSXへポーティングする事例って結構少ないっぽい。
そんなに難しく無いのに不思議ですね。

OSX対応よりも遥かに簡単にできるiPad対応(ユニバーサル対応)をやっていない私がそういうことを言うのもなんですが^^;
iPadの存在意義ってイマイチ分からないんですよね。一応iPad miniのRetinaモデルを持っているのですが、電子書籍(漫画)専用機としては優秀だと思うのですが、それ以上でもそれ以下でもない。だから、私は意図的にユニバーサル対応を避けています。(プロモーション的な意味では対応した方が良いけど)

iOSもOSXも同じ Cocoa という仕組みの上に乗っかっています。

タッチデバイス(iOS)とキーボード+マウス(OSX)という入力デバイス上の違いから、OSX用のアプリをiOSへ移植するのは結構大変です。しかし、その逆であれば割と容易にできます。

逆方向の移植(iOSからOSXへの移植)が容易な理由は、OSXには Magic Trackpad が標準で付いているためです。

Windowsのノートパソコンしか触ったことが無い人にとって「トラックパッド」に良い印象を持っている人は少数派かと思います。実際、私もノートPCを買うといつも最初にすることは「とりあえずトラックパッドをOFF」でしたし。アレって使い難いし邪魔なんですよね。マウス最高!

・・・などと思っている時期が私にもありました・・・

Mac(MacBookシリーズ)標準のトラックパッド(Magic Trackpad)は、Windowsのトラックパッドとは次元が違うレベルで使い易いです。具体的にはタッチデバイス(iOS)と同等以上の直感的な操作ができます。そのため、iOSからOSXへの移植はMagic Trackpadの利用を前提にすれば容易だということになります。

まぁ、iOSのUIKitがOSXでは使え無い(代わりにAppKitを使う)といった細かい技術的な事情も幾らかありますが、その辺は技術力がある人なら何とでもなることなので、然して大きな障壁ではありません。(OSX関連技術をググろうとするとiOS関連技術が出てくるのは少々厄介でしたが。「ちがう...お前じゃない」という場面が幾度となくありました)

PCの出荷台数は年々下降傾向なので、そんな中PC OS(OSX)をサポートをするのは、一見するとナンセンスなことかもしれません。でも、やっぱりスマホはスマホでしかないし、タブレットではPCの代わりにはなれないと思う(何故ならiOSやAndroidなどのスマホOSベースだとサンドボックス感が強すぎる)ので、結局のところPC OSは無くならないと思います。

役割は確実に減るでしょうけど。

ただ、私にとっては普及しているかどうかなんてあまり関係無くて、作りたいモノを作っていられれば幸せです。最近、スマホゲームを作る熱がすっかり冷め切ってしまい、新作を全然作っていませんが、OSXでゲームを作れる足場は固まったから、OSX向けゲームでも作ってみたい欲求が結構ありました。だから、実験を兼ねて東方VGSをポーティングしてみた感じです。

次は、Invader Block for Mac OS Xでも作ってみるかー。
新しいプラットフォームに対応したら、先ずはInvader Block 2を作ってみるのはSUZUKI PLANの伝統行事になりつつある。

ちなみに、Invader Block 2の現時点のバリエーションは、
・Invader Block初代(Windows + DirectDraw)
・Invader Block for ファミコン
・Invader Block 2(初代VGS)
 - Windows
 - Android
 - iOS
・Invader Block 3(VGS mk-II)
 - Windows
 - Android
 - iOS
・Invader Block for HTML5(JS初見の状態から2日で作ってみた版)
※ファミコン版とHTML5版は非公開

対応プラットフォーム別に見てみると、
・Windows
・Android
・iOS
・ファミコン
・ブラウザ
という感じか。
まだまだ少ないな。
増やさなきゃ。

2015年10月3日土曜日

東方BGM on VGSができるまで

東方VGSの収録曲数が100曲を超えてしまった。

いや、こんなに続くとは思ってなかったです。

記念に何かやろうと思ったけど、特に思いつかなかったので、どういう経緯で東方VGSが誕生したのか書いてみようと思います。

書き終わってみると、既視感みたいな感じのものをもの凄く感じたので、既に似たような記事を書いたことがあるのかもしれませんが、細かいことは気にせず...

時は2011年末、

Windowsでシェアウェアのゲームを出すも、1本も売れず、当時流行し始めたスマホでゲームを出せば売れるんじゃないかと考え、スマホでどうやってゲームを作るのかを調べてみることにしました。

iPhoneならObjective-c

ふむふむ。

Mac経験が無い私は、Objective-cなんて1ミリも知らなかった(Next Step開発時に作られたということなら知っていた)けど、Cの名を冠するものなら当然Cでも書けるだろうということで、悪くない。

まぁ、言語は別にどうでも良かったのですが、しかし、Mac必須というのがアレだったので、いつか対応しようと思いつつ、とりあえずAndroidで作ってみることにしました。

AndroidならJava

・・・クソだな。

まぁ、言語は別にどうでも良かったのですが、Javaでゲーム開発とかねーから!! ということで、ガワだけJavaで作り、メイン部分をC言語で作れるゲームエンジンを作ることにしました。
ガワ・ネイティブならぬ、中身・ネイティブです。
どうでも良いことですが、AndroidのJavaで作られたアプリのことを「ネイティブアプリ」って呼ぶのが未だに慣れない。「Javaで作ってるならネイティブじゃないじゃん!」と突っ込みたくなる。

その時書いた設計図が下記。
ゲームエンジンの設計図
(ガワ部分の設計は含んでいない)

VGE ; Video Game Engine です。

この落書きみたいな設計図で、現在のVGSの原型となるゲームエンジン(VGE)を作り、そこで動くゲーム第一弾として、以前DirectXで作ったEeePC専用ゲーム「Invader Block」の続編を開発。(あっさり完成)

ヒャッハー!
これで、スマホアプリがC言語で作れる!
まぁ、言語は別にどうでも良かったのですが(ry
初めてAndroidで動いた時の映像
(色がバグってるしアス比も狂ってる)
完成したInvader Block 2のリンクを貼っておきます。
宣伝は基本。
Android版(SUZUKI PLANのスマホ対応アプリ第一弾)
iPhone版(iPhone対応アプリ第一弾として1年後にリリース)

この時点のVGSには、音楽を再生する機能がありませんでした。

スマホって容量がちっさいし、回線もおっそい。
だから、AACとかOGGとかで音楽を鳴らすのはありえない。
いや、他のベンダーさんは皆そうやって音楽を鳴らしているんでしょうけど。

でも、他所は他所、ウチはウチ。

という訳で、小さな容量で音楽を鳴らす仕組みを作る必要があると考え、ソフトウェアシンセサイザー方式でチープな音源機能を実装して、そのプロトタイプを開発してみました。
独自音源のプロトタイプ
(ウインドウタイトルを気にしてはならない)
音を鳴らす仕組みはこれで完成。
  • サンプリング周波数: 22050Hz
  • ビットレート: 16bit
  • モノラル
  • 波形メモリ音源方式
  • 波形は三角波、ノコギリ波、矩形波(「たんけいは」ではなく「くけいは」ですが、プロト開発時は「たんけいは」と呼んでいたらしい。恥ずかしいw)の3つ
波形については、最終的にノイズを加えて4つになりましたが、その他の仕様はプロト開発時のものが現在でも使われています。

あとは、これに対応した逐次的に音を鳴らすための仕組み(サウンドドライバ)を実装すれば、音源システムが完成します。

サウンドドライバの開発知識は無かったので、MXDRVのソースを眺めて仕組みを読み取り、 サラの状態から綺麗に再設計するリバースエンジニアリング→リエンジニアリングという手法で設計。

最後に、このサウンドドライバに喰わせる音楽データを作るツールが必要です。

音楽データには、独自規格のMMLを採用。

最初はMIDIとか色々考えたけど、汎用規格ってなんかカッコ悪い。

全部独自設計するなら当然規格も自分で作るよね?

などと、意味のわからないことを考えながらMMLの仕様を、ジックリ小一時間ぐらい掛けて書いて、1週間ぐらい掛けてコンパイラを開発。
初期の頃に書いたMMLの仕様書
(サンプルMMLのヘッダにコメントで記述)
※完成後の仕様とは大分異なる

この、頭の天辺から爪先まで全て独自仕様で固められた謎の音源システムの名称を、私は Video Game Sound system(略してVGS)と呼ぶことにしました。そして、VGSはVGEと合体して「Video Game System」という名称になりました。

なお、AtariのVCS(Video Console System)をオマージュした名前のように聞こえるかもしれませんが、それは単なる偶然です。ゲームエンジンとして目標にしていたのは、どちらかといえばVCSではなくPCエンジンです。私はPCエンジンで育った人間です。PCエンジンの凄いところはデザインです。デザインとは見た目のことではなく、コア思想という設計思想のことで(中略)

そんな訳で、本当は VGエンジン という名称にしたかったのですが、VGエンジンという名称の製品(※車のエンジン)が既に世に存在していたからVGSにした感じです。(カテゴリが違うから商標上の問題は無かったと思うけど、念のため)

若干話しが逸れましたが、完成したMMLコンパイラのテストを兼ねて、数曲作曲。そして、それらを鳴らすサンプルアプリを作成しました。
音楽再生用のサンプルアプリ

おわかりいただけただろうか

これが東方VGSの原型です。
実はこれ、VGS Chiptune Music という名称で、Android Marketで公開していました。

まぁ、評価はアレです。

「音楽はクソだな!星5だ!」(フランス語で)

などと、罵られました。

これは、「お前の作曲の 腕が残念だけど、仕組みは面白い」的な意味だったのだろうか?フランス語はあんまりよく分かんないです...

なぜか、インドネシアで好評でした。
なお、日本では殆どダウンロードされていません。
ちなみに、非公開にしてあるので、もう手に入らない幻のアプリです。
(私の端末には普通に入っているけど)

その後、この音源機能が追加された新生VGSを使って NOKOGI Rider を開発。
NOKOGI Rider(開発中の映像)
そして、VGSをiOSへ移植して、iOS版のInvader BlockとNOKOGI Riderをリリース。

結果的にInvader BlockもNOKOGI Riderもそんなに沢山売れなかったものの、VGSの音源システムについては面白いという自信があったので、VGSを使って音楽を配信するアプリを作ってみることにしました。

そうです。

それが、WTC1 on VGSです。
VGSで作った音楽配信アプリ
(現在も公開中)

ついでに、音楽が好きだった東方Projectの楽曲も二次創作という 体でお借りして、東方BGM on VGSも作ってみた感じです。

最初は紅魔郷の全曲が揃ったら辞めるつもりでした。

何故なら、物凄く大変なので。

物凄く大変ではありますが、とりあえず、「1週間で1曲づつ追加していく」というマゾマゾしいルールを設け、本業の仕事もしながら、まるで連載作家のようなマゾマゾしい生活を実践することにしました。

そして、いよいよ紅魔郷が全曲揃って東方VGSを辞めれる!となった時は、本当に嬉しかったです。これでようやく人間らしい生活に戻れると。しかし、辞めてみて湧いてきたのは、達成感とか充実感ではなく、この マゾ・ライフが終わることの空虚感 でした。

私はアンチ嫌儲な人間です。タダ働きなんてまっぴら御免です。そういう性格の人間なので、収益化をした上で成功していれば、達成感や充実感があったかもしれませんが、東方VGSについては、収益化を一切せずに続けていたので、それらの満足感を得られることが無いことはある程度想定済みでした。

では、この空虚感は一体何なのか。

じゃぁ、妖々夢と永夜抄も全曲揃えて確かめよう

そんな悪魔の囁きに唆され、続ける事を辞める事に失敗。

どういう訳かアプリもすごく人気があったことも、辞め時を逃した大きな要因のひとつです。未だによく分からないのですが、VGSの音源はゲームのオマケとして作った「鳴れば良い」というレベルのチープなモノなのに、そのシンプルな音色は多くの人を惹きつけました。

一体どいうことなのか。

私に音楽の才能があるとは思えません。
音楽ではなく、効果音に対する拘りは結構あるのですが、それは恐らく普通の人の感覚と大分違います。同僚などに、私のゲーム効果音に対する見解を熱弁すると、大抵の人は「何言ってんだコイツ?」みたいな顔をします。私の見解は、まず「ゲームとは効果音である」という所から解説が始まります(中略)

要するに、一般ウケできるようなモノではないだろうと思っています。

それはさておき、いよいよ妖々夢と永夜抄も全曲揃ってしまった時は、流石にもう人間らしい生活に戻ろうと決めて、最終バージョン(1.00)をリリース。

マゾ・ライフが終わることの空虚感」の正体は結局謎ですが。しかし、恐らくこれはクリエイターが本質的に求めているモノなのだろうと考えることにしました。何故なら、クリエイターさんは皆、苦しみながらソレを楽しんでいるように見えるので・・・釈然としない思いはあるものの、これ以上の追求は身を滅ぼすだろうという危機感が強かったので、後ろ髪を引かれつつも、一旦身を引くことに成功。

しかし、最終バージョンをリリースしてから半年ぐらい経った頃、iOS8で(OS側のバグが原因で)東方BGM on VGSが起動できなくなってしまう不具合が発生しました。そして、この不具合を対策するついでに曲も追加してアップデートしたことを契機に、再び曲追加を復活させて、現在に至ります。

不具合対策だけすれば良かったのに、敢えて曲追加をする茨の道を復活させた理由は、新しい方向性が見つからずに迷っていたためです。だから、今は 次の一手を模索する間の繋ぎ という位置付けで、東方VGSを続けています。

なお、スマホで新たなゲームを出すのは(今は)得策ではない と思っています。
だから、今は新作をつくっていません。

というのも、パズドラとかモンストとかの登場で、スマホゲーム市場が望ましくない方向に成熟してしまったので。別にパズドラやモンストが面白くないと言っている訳ではありません。カスタマにそれらが受け入れられているなら、それで良いじゃない?と他人事のように思っています。

それでは何故、パズドラやモンストみたいなのが出てくるとマズイのかというと、娯楽産業というのは結局のところ可処分時間の奪い会いで、パズドラとかモンストみたいな感じの運営モデルのゲームには終わりが無いから、結果的にカスタマー流動性に淀みが生じることが良いない事だと思っています。

運営モデルは当たればデカイので、運営モデルで新たなモノを出す価値ならあると思いますが、当然ながらリターンがデカイが故に、リスクも更に大きいです。少なくとも、企業レベルの体力が無いと入り込む余地がありません。一番厄介なのはプロモーションで、これはスマホ黎明期の頃のような小手先の手段ではもうどうにもなりません。

だから、そのような状況下で、私のような個人が新作を出すのは自殺行為同然だから、新作を作れないということになります。

SUZUKI PLANが当初広告モデルを頑なに拒んでいた理由は、広告モデルはそういった悪い方向への加速を促す側面があると感じていたためです。広告モデルでマネタイズする感じの会社は、最初の内はそこそこ儲かるかもしれないけど、次第に儲からなくなってすぐに倒産するだろうと思っていて、事実今はそんな感じになり、死屍累々としている頃合いだろうと思います。(仮に今、真剣に個人でゲームを作って公開するなら、Steamとかでやった方が良いハズ。Steamはスマホアプリ市場と違って、運営型ではなくパッケージ型のモデルが今の所主流なので、未来がありそうな気がします。スマホアプリ市場と同じ道を辿る可能性も五分じゃないかとも思っていますが)

プロモーションはマーケティング上そこそこ重要な位置付けのものなので、広告モデルそのものを否定するつもりはありませんが、少なくとも運営型のライバル企業にカスタマを流し、小銭を貰っていくスタイルのアプリ広告はダメなパターンです(パッケージを売るための広告ならアリだと思うけど)。その点は敢えて割り切り、稼げる時に稼ごうとする人がウジャウジャ出てくることも、ミスディレクションを進める大きな要因のひとつだったと思っています。

東方VGSは、そんな厳しい環境の中で割と上手く立ち回っていると思います。
東方VGSの戦略はシンプルにニッチ戦略です。

具体的には、
  1. 運営型モデルのゲームと共存できるプロダクトにする
  2. iTunes(やApple Music)には無いコンテンツだけを供給する
  3. リーダーが真似できない特異性を保っている
といったことを意識して、WTC1 on VGSを作りました。

東方BGM on VGSは、戦略とかそういったものは一切考えず趣味に走って作ったものですが、WTC1 on VGSのシステムをそのまま使っている関係で、自動的にその戦略も引き継がれている感じです。(引き継がれているというより、意図せずに進化している感じなのかも)

未来の話しについて

唐突ですが、ここで東方VGSの未来の話しについて。
とりあえず、続けていくのが物凄くツライです。
しかし、続けていきたいと思っています。
そこで、ツラくならないようにする為の策を考えます。
だからといって、ガイドライン的にダメなことは絶対にやりませんが。

2015年8月15日土曜日

ソフトシンセの作り方(7) - VGS-SAL

VGSのソフトシンセ(波形メモリ音源)の開発で得られた知見を元に、PCやスマートフォンで動くソフトシンセの作り方を解説していきます。一冊の本が書ける程度の分量なので、幾つかのパートに区切って解説していきます。このシリーズを一通り読めば、サウンドプログラミングについて全くの素人でも、PCやスマホなどのプラットフォームで動くオリジナルのソフトシンセが作れる程度になります(たぶん)

なお、このシリーズで扱うプログラミングの例題のビルドには、パソコンが必要です。OSは私が使っているMac OS X向けに解説を記述しますが、Linux(※ALSAに対応しているもの)やWindowsでも問題ありません。

今回は、VGS-SALについて解説します。

VGS-SAL

前回の記事で紹介した低レベルAPIのひとつひとつを解説すると、それだけで膨大な量の解説が必要になってしまいます。そこで、低レベルを直接叩くのではなく、VGSSALSound Abstraction Layout)を利用することにします。
VGS-SALは、WindowsDirectSound)、LinuxALSA)、MaciOSAndroidの低レベルAPIを抽象化したものです。これを用いることで、全OS共通実装で「波形直書き」の実装ができます。

sal-sample

vgs2リポジトリの sample/sal-sample ディレクトリにVGS-SALを用いたサンプルプログラムが格納されています。
このサンプルプログラムでは、VGS-SALを用いて440Hzのサイン波を鳴らし続けます。
サンプルプログラムは、ターミナルで以下のコマンドを実行すれば、ビルドできます。
$ cd ~/vgs2/sample/sal-sample/ && make
sample/sal-sample ディレクトリに格納されている makefile と saltest.c を見てみましょう

(1)makefile

  • saltest.cをビルドする手続きが書かれています

    (2)初期化: init_sound_cli

    • SALの初期化をします
    • cliとは Command Line Interface(コマンド) の略です
    • Windowsの場合、GUI用の初期化処理が別にありますが、その点についての解説は省略します
    • UNIXOSの場合、CLI用とGUI用の間に違いはありません

    (3)終了: term_sound

    • SALが用いているシステムリソースを解放します
    • かならずプログラムの最後で呼び出すようにしてください

    (4)バッファリング: sndbuf

    • 一定間隔毎にSALからコールバックされるバッファリング処理です
    • C++で実装する場合は、必ず extern "C" で宣言するようにしてください
    • 引数 buf : 波形情報を格納するバッファです
    • 引数 size : 波形情報を格納すべきサイズです
    • buf の内容を変更する処理は、必ず lock()  unlock() で囲まなければなりません
    • 上記サンプルでは、440Hzのサイン音 が鳴り続けることになります

    (5)バッファリング処理の内容

    sndbuf  lock()  unlock() で囲まれた範囲(バッファリング処理)の実装内容をもう少しブレイクダウンして見ていきましょう。
    1行目: for(i=0; i < size16; i++, ptr++) {
    2行目:    *ptr = (short)(sin(r) * 16384);
    3行目:    r += PI2 / (22050 / 440); /* 440Hz */
    4行目: }
    1行目
    • size16  引数buf (8bit array)  16bit array とした時の長さです
    • そして、i = 0  size16-1 の間、ptr をインクリメントしながらループすることになります
    • ptr  引数buf  16bit array にしたものです
    • ptr のインクリメントとは、__サンプリング周期のインクリメント(+1Hz)と等価ですね
    2行目
    • sin(r)  16384 にした数値を ptr に代入しています
    • sin関数 の戻り値は -1.0  1.0 の範囲の実数です
    • なので、ptr に代入している値は -16384  16384 の範囲の値です
    • つまり、この 16384 というマジックナンバーは 鳴らす音の大きさ を意味しています
    • 16bit -32768  32767 の範囲の数値なので、限界音量の 50% がこのプログラムで鳴らす音の最大音量となります
    3行目

    • r  2π ÷ ( 22050 ÷ 440 ) で加算しています
    • r  スタティック変数 なので、関数が return しても値が維持され続けます
    • そのため、sndbuf が呼び出され続けると 440Hz のサイン波 が発音され続けることになります

    追記
    umm...
    ここから先はコードベースの解説が多くなるのですが、bloggerだと結構辛いので、GitBook辺りを使ってイチから書き直すか。

    合理的ではないものを作りたい

    ここ最近、実機版の東方VGSの開発が忙しくて、東方VGSの曲追加が滞っています。 東方VGS(実機版)のデザインを作りながら検討中。基本レトロUIベースですがシークバーはモダンに倣おうかな…とか pic.twitter.com/YOYprlDsYD — SUZUKI PLAN (...